マルタは地中海のど真ん中、シチリア島の南に浮かぶ面積316km²(東京23区の半分)の島国です。EU・シェンゲン・英連邦に加盟、公用語は英語とマルタ語。外務省の危険情報・スポット情報・感染症危険情報はすべて「現在発出なし」で、ヨーロッパでもトップクラスの低リスク帯にあります。
ただ「危険情報ゼロ」と「現地で気をつけることもゼロ」は違います。在マルタ日本国大使館(在伊大使館の兼轄、Sliemaに兼勤駐在官事務所)と外務省安全対策基礎データを並べて読むと、夜のパーチャビル地区・メーターを倒さないタクシー・空港の430ユーロ申告ルール・水道水は硬水といった、実際にハマりやすい落とし穴がはっきり書かれています。「治安が良い国でも、知っていれば避けられる4つ」を頭に入れて出発するのがマルタの歩き方です。
Travel Alert 01
海外の無料WiFiには危険が潜んでいる
あなたのアクセス、丸見えです
危険レベル --- 危険・スポット・感染症すべて「発出なし」
外務省の海外安全ホームページを2026年5月時点で開くと、マルタは以下の状態です。
- 危険情報: 現在、危険情報は出ておりません
- スポット情報: 現在、スポット情報は出ておりません
- 感染症危険情報: 現在、感染症危険情報は出ておりません
広域情報(中東情勢のテロ注意喚起、欧米テロ警戒、はしか・MERS・狂犬病注意喚起など)はマルタ向けにも掲載されていますが、これらはヨーロッパ全域に共通する一般的な注意喚起です。マルタ固有のリスク情報は出ていません。
テロ・誘拐情勢(更新日 2025年6月27日)も、概況は次のとおりです。
マルタでは、反政府組織の活動や国際テロ組織の活動は確認されていません。ただし、その地理的位置から、マグレブ諸国又は中東諸国のテロリストが同国を中継地として利用する可能性があるといわれています。
2024年中、マルタにおいて誘拐事件は報告されませんでした。
現在のところ、マルタにおいて、テロ・誘拐による日本人の被害は確認されていません。
レベル感としては「ヨーロッパで一番安全な国の1つ」と思って大丈夫な国です。ただしその下に、観光客が日常的にハマる落とし穴がいくつかあります。
治安が良い国でも気をつけたい4つ
1. パーチャビル(Paceville)地区の夜 --- 傷害事件と違法薬物
外務省「マルタ 安全対策基礎データ」の「2 犯罪被害危険地域」は、マルタで唯一名指しで警告されているエリアです。
パーチャビル(Paceville)地区はナイトクラブ等の娯楽施設が集中している繁華街で、傷害事件が発生することがあるほか、違法薬物が流通しているとの情報もありますので、夜間は注意を要します。
セントジュリアン地区にあるパーチャビルは、マルタのナイトライフが集中する繁華街です。夜になると地元の若者と観光客で大混雑するエリアで、傷害事件と違法薬物の2つが具体的にリスクとして挙げられています。
マルタで違法薬物に手を出すリスクは、A2基礎データに別項で明記されています。
麻薬等の持込みについては特に厳しく、少量であっても刑に処せられます。
「ヨーロッパだから大麻くらい」という感覚で街中で誘われても、マルタでは少量所持で逮捕されます。パーチャビルで知らない人から「キメない?」と話しかけられたら、その場を離れるのが正解です。
2. タクシーのメーター --- 「ついているのに倒さない」が普通にある
A2基礎データの「7 タクシー」が短いけれど重要な記述です。
タクシーには、料金メーターがついていますが、これを使用せず、法外な料金を要求される場合もありますので、乗車に際し、料金メーターの作動を確認したり、あらかじめ料金の交渉を行う等の注意が必要です。
「メーターがついている=メーターで走る」ではない、という前提で乗るのがマルタ。空港から市内のホテル、夜のパーチャビルからの帰路など、観光客が乗りやすいシーンほど発生しやすい構図です。乗る前に料金交渉をするか、Bolt等の配車アプリで事前確定するのが現実的です。
3. スリ・窃盗・車上荒らし --- 凶悪犯罪は希でも軽犯罪はある
A2基礎データの「1 犯罪発生状況」は、マルタの治安をひと言で表しています。
一般に治安は良好で、凶悪な犯罪が発生することは希ですが、スリ、窃盗、車上荒らし等の被害も発生しています。
イタリアの安全対策基礎データに準じた対策を講じてください。
外務省自身が「イタリアに準じた対策を」と書いているのが象徴的で、地中海の観光地としてのスリ・置き引き対策は同じレベルで必要です。レンタカーで観光する人は、車内に貴重品を残さないのが鉄則。イタリアの治安 や スペインの治安 で書いた対策がそのまま効きます。
4. 大雨と排水 --- 標高の低いエリアの水害
地中海性気候で「冬は温暖で雨が多く、夏は暑く乾燥」(外務省 世界の医療事情、令和6年10月1日)するマルタですが、A2基礎データに気になる一文があります。
道路の排水設備が十分でなく、大雨が続くと標高の低い地域に水がたまり、水害が起こることがあります。当局の発表や報道に注意してください。
冬季(11月〜3月頃)の大雨時は、低地のレストランや道路が冠水することがあります。レンタカーで低地を走るとき、当局の発表や現地ニュースに目を通すクセをつけておくのがおすすめです。
Travel Alert 02
海外の決済で3.5%も搾取されている現実
あなたは知っていますか?
入国・出国で引っかかりやすい5つ
シェンゲン90日ルール
マルタはシェンゲン協定加盟国です。日本旅券所持者は90日以内の観光・知人訪問は査証免除ですが、A2基礎データの記述は正確に読む必要があります。
滞在期間は「あらゆる180日の期間内で最大90日間を超えない」範囲でのみ認めると規定されています。
「180日の中で90日」という上限なので、ヨーロッパ複数国を周遊する人は、シェンゲン圏全体での滞在日数を合算する必要があります。
パスポート残存有効期間
残存有効期間がシェンゲン領域からの出発予定日から3ヶ月以上あるパスポートを所持する必要があります。
出発時点で有効期限が3か月を切っていると、航空会社が搭乗を断ることがあります。
通関430ユーロ・10,000ユーロのライン
A2基礎データから2つの数字を覚えておきます。
10,000ユーロ相当額以上の通貨や小切手、その他の有価証券の持込み・持出しには申告が必要です。
1人あたりの価値相当額の合計が430ユーロ(陸路の場合は300ユーロ)を超える物品を持ち込む場合は、税関に申告が必要です。これを怠っていたことが発覚した場合は、当該物品を没収され、関税の支払の他に多額の罰金が科せられます。没収された物品を取り戻すためには、関税と罰金に加え、当該物品の価値相当額を支払わなければなりません。特にパソコン、ビデオカメラ等の電子機器の持ち込みは厳しく取り扱われるので、注意が必要です。
仕事用のノートPCや一眼レフカメラを持ち込むと、それだけで430ユーロを軽く超えます。「個人使用で持ち帰る」のが明確なら申告不要ですが、税関で質問されたとき答えられるように、用途と価格は把握しておくのが安心です。
出入国審査
シェンゲン領域国を経由してのマルタ入国に際しては、入国審査はありませんが、シェンゲン領域国を経由せず到着する場合は、入国審査を受けることとなります。
ローマやパリ経由でマルタに入る場合、入国審査は最初の空港(ローマ・パリ)で完結します。直行便(ロンドン直行など)の場合だけ、マルタの空港で審査を受けます。
撮影制限
空港内の入管、税関エリア等、一般的に撮影が禁止されている場所以外は、特に撮影の制限はありません。
世界遺産バレッタの旧市街、海、島の風景は基本的に自由に撮影できます。空港や軍施設、教会内(聖ヨハネ准司教座聖堂など)は個別ルールに従いましょう。
健康と医療 --- 西欧水準・ただし日本語は通じない
外務省「世界の医療事情(マルタ)」(令和6年10月1日)は、マルタの医療水準を高く評価しています。
マルタには英国から絶えず先進医療技術が導入されており、他の西欧先進国同様の高い医療レベルです。
多くの医師が英国の卒後専門医資格を保持しており、医療スタッフのほとんどが母語レベルの英語(およびマルタ語)を話します。病院内の標記も全て英語で、迷うことはありません。日本語の通じる医療機関はありません。
国立大学病院のレベルは非常に高く、一般医療機関や私立の医療機関の質も良好で、公的医療機関については、国民は無料で受診することができます。
公立の救急搬送サービスも質が高く、マルタ島内のどこからでも概ね30分以内に大きな病院に搬送することが可能です。
旅行者にとって覚えておきたいポイント:
- 緊急電話112(警察・救急・消防共通)。話せない状況のSMS通報は79-770-112
- Mater Dei Hospital(マター・デイ病院): マルタ唯一の公立急性期病院、Msida MSD 2090、代表電話25450000、入院病床1,238床、ICU20床、最新MRI/CT完備、日本語電話通訳サービスあり(事前予約推奨)
- Saint James Hospital - Sliema: 私立医療機関最高レベル、George Borg Olivier Street、代表電話23291903、救急車23291112、24時間対応の初期救急外来
- DaVinci Health(Birkirkara、電話21491200): 私立外来中心、結核迅速検査も可
英語が通じるので、日本人にとって医療コミュニケーションのハードルは低い国です。一方で、日本語の通じる医療機関はないので、Mater Deiの日本語電話通訳サービスは旅行前にメモしておきたい情報です。
水道水は飲めるが硬水
A2基礎データと B1医療事情の両方が指摘しているのが水。
水道水を飲むことはできますが、住人の多くが水道水ではなく、ボトル入りウォーターを飲みます。水道水はカルシウムなどの濃度が高い硬水なので、特に、下痢をしやすい方や乳幼児には、ミネラル分の少ないボトル入りウォーターを勧めます。
マルタの水道水は海水を脱塩して作られているため、硬水(カルシウム高濃度)。お腹が弱い人や赤ちゃん連れはボトル入りウォーター推奨です。スーパーで1.5Lボトルが0.4〜0.7ユーロ程度で買えます。
狂犬病・コウモリ
狂犬病が報告されたことはありませんが、コウモリから感染する狂犬病類似のリッサウイルス感染症が存在する可能性があるので、コウモリには注意しましょう。
街中で見かけることはほぼないですが、ゴゾ島の自然エリアや古い建物でコウモリに遭遇したときは触らないこと。
Travel Alert 03
無料クレカの"海外旅行保険の限界"は?
補償額をふやすウラ技も
治療費の現実 --- 近隣の参考事例
マルタは公的医療機関について「国民は無料」と書かれていますが、これはマルタ国民・EU域内住民の話で、観光客は基本的に有料です。私立病院(Saint James、DaVinci)はそもそも有料で、欧州の私立医療水準に準じた料金。
マルタ単独の保険金支払い事例は損保各社のデータベースに掲載が確認できなかったため、地中海・欧州近隣国の事例を参考に貼っておきます。
イタリアやギリシャの地中海観光地では、ホテルでの転倒や階段事故、レンタカーでの追突事故、海・プールでの飛び込みによる頸椎損傷で、入院・帰国搬送込みで数百万円〜1,000万円超になる事例が損保ジャパンoff!・SBI損保・ソニー損保などの欧州事例ページに掲載されています。マルタのMater Dei Hospitalまで30分以内に搬送される救急搬送サービスの質は高い一方、重症の場合はイタリア本土への医療搬送になることがあり、その距離が請求額に乗ってきます。
詳しい近隣の参考事例は イタリアの治安 ・ギリシャの治安 ページを参照してください。海外旅行保険は、Mater Deiの日本語電話通訳と並んで、マルタ旅行で持っておきたい安心装備の1つです。
文化・滞在のミニ知識
カトリック国としての作法
国民のほとんどがカトリック教徒です。日常生活の中にも宗教が浸透していますので、キリスト教に関するジョーク等はタブーです。
バレッタの聖ヨハネ准司教座聖堂、ムディーナの大聖堂、ゴゾ島のチタデルなど、観光ルートの中心に教会があります。肩・膝が出る服装での入場は断られることがあるので、夏でも薄手のストールやシャツを1枚持っておくのが無難。教会内では帽子を取り、写真撮影禁止のサインに従いましょう。
交通 --- 日本と同じ左側通行・ただし運転は荒い
車は日本と同様、右ハンドルで左側通行です。ただし、日本と比較すると運転が荒いため、注意が必要です。
旧英領なので、日本人にとっては運転しやすい国です。ゴゾ島の自然観光やマルタ南部の青の洞門など、レンタカーが便利なスポットも多い。ただし車線を守らない/車間を詰めるドライバーが多いので、日本の感覚で「譲ってくれるはず」と思わない方が安全です。
たびレジ・在留届
3か月未満の旅行者は たびレジ に登録すると、マルタの最新治安情報や緊急時の安否確認に使えます。3か月以上の長期滞在者は在留届を在マルタ日本国大使館に提出します。
Travel Alert 04
知らずに大損している海外ATMの罠
DCCって知ってますか?
緊急時連絡先(保存推奨)
外務省 A2基礎データから:
- 警察・救急・消防(共通): 112
- 救急(旧番号): 196
- 通話できない状態のSMS通報: 79-770-112
- 在マルタ日本国大使館(兼勤駐在官事務所): 35-37, Tigne Place Building, Tigne Street, Sliema SLM、+356-27324491
- 在イタリア日本国大使館(マルタを兼轄): +39-06-487-991(イタリアの市外局番冒頭の「0」は国際電話では除く)
まとめ --- 「危険情報ゼロ」を上手に使うために
マルタはヨーロッパで最も平和な国の1つで、危険情報・スポット情報・感染症危険情報すべて発出なし、テロ・誘拐の日本人被害もゼロ。基本的には「リラックスして地中海と世界遺産を楽しめる」国です。
その上で、出発前に頭に入れておきたいのは次の4つだけ:
- パーチャビルの夜は薬物と傷害事件のリスクがある(誘われても乗らない)
- タクシーはメーターを使わないことがある(事前交渉か配車アプリ)
- 空港税関430ユーロ・10,000ユーロのラインを覚えておく
- 水道水は硬水、Mater Deiの日本語通訳サービスを保険でメモ
「危険情報ゼロの国でこそ、油断しない人ほど旅を楽しめる」というのがマルタの本質です。
Travel Alert 05
空港であなたを待ちうける5つの罠
準備はできていますか?
バレッタの詳細はこちら
首都バレッタ(人口約5,000人だがマルタ島全域の観光拠点)と、隣接するスリーマ・セントジュリアン・パーチャビルの実用情報は、別記事にまとめています。
- バレッタの治安 --- 観光ルートでのスリ・パーチャビル夜間・タクシー手口を都市別に詳述