ビクトリアの滝とサファリで知られるザンビア。観光地のリビングストンや首都ルサカは比較的落ち着いて見えますが、在ザンビア日本国大使館「滞在安全の手引き」(2025年9月改訂)を開くと現実は違います。ルサカ州の人口100万人当たり窃盗件数は2,098件で日本(649件)の3倍超、殺人も30件で日本の4倍。2018年〜2025年3月の邦人被害61件のうち住居侵入が22件(36%)、スリ・置き引きが26件(43%)と、住居・路上の両方で犯罪が日常化しています。
特に2024年以降、ウクライナ情勢と干ばつによる物価高騰で貧富の差が拡大。「ジャンキーズ」と呼ばれる若年貧困層が安価な違法薬物を摂取して徒党を組み、夜間に強盗・誘拐・窃盗を繰り返しています。アジア人は「裕福な印象」から特にターゲットにされやすく、2025年には金銭目的の誘拐事件が6件発生しました。
外務省は大半の地域をレベル1(十分注意)、コンゴ民主共和国・アンゴラとの国境地帯のみレベル2(不要不急の渡航中止)に指定しています(2025年1月17日継続発出)。
Travel Alert 01
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危険レベルと国境地帯
外務省「危険・スポット・広域情報」より。
【危険度】コンゴ民主共和国及びアンゴラとの国境地帯(コッパーベルト州ンドラ市を除く):レベル2:不要不急の渡航は止めてください。その他の地域:レベル1:十分注意してください。
理由はシンプルで、コンゴ民主共和国側からは武装集団による組織的強盗・人身取引・違法武器流入、アンゴラ側はアンゴラ内戦の遺棄武器密輸と地雷残存。観光で行くなら国境地帯には近づかない、サファリも国境から離れたサウスルアングア国立公園・ロウアーザンベジ国立公園を選ぶのが基本です。
100万人当たり犯罪件数 --- 日本の3倍〜4倍
大使館「安全の手引き」が公開している2024年の主要犯罪認知件数(人口100万人当たり)はこちら。
| 罪種 | ルサカ州 | コッパーベルト州 | 日本 |
|---|---|---|---|
| 殺人 | 30 | 70 | 8 |
| 強盗 | 110 | 52 | 11 |
| 窃盗 | 2,098 | 1,164 | 649 |
| 車両窃盗 | 62 | 18 | 46 |
| 傷害 | 1,845 | 893 | 742 |
大使館は「ザンビアでの殺人、強盗被害などの凶悪犯罪の発生数が顕著です。特に、邦人の居住が多いルサカ州とコッパーベルト州では殺人事件が顕著に増加」とコメント。鉄道・空港でも犯罪が報告されており、2024年は鉄道で殺人8件・強盗12件・窃盗334件・傷害331件、空港で殺人4件・車両窃盗5件・窃盗220件・傷害345件発生しています。
邦人被害61件の内訳 --- 住居侵入・スリ・車上荒らし
2018年から2025年3月までに大使館が把握している邦人被害は61件。内訳はこうです。
| 種別 | 件数 | 比率 |
|---|---|---|
| 窃盗(スリ・置き引き) | 26 | 43% |
| 住居侵入 | 22 | 36% |
| 車上荒らし | 7 | 11% |
| スキミング | 4 | 7% |
| 住居強盗 | 1 | 2% |
| 強盗 | 1 | 2% |
大使館は「住居に押し入り、邦人をトイレに押し込めて金品を強奪した事件や、邦人が保持していた携帯電話を強奪した事件も報告」と踏み込んだ記述。実例はルサカのスリ・ひったくりで詳しく整理しています。
「ジャンキーズ」 --- 若年貧困層の徒党による夜間強盗
ザンビア固有の犯罪傾向が、近年の経済悪化で増加した「ジャンキーズ」と呼ばれる徒党です。手引き2025年9月版から。
ウクライナ情勢、干ばつ等に伴う物価高騰により貧富の差が拡大し、職を求めて首都ルサカ等の大都市に移動した若年貧困層による犯罪が増加しています。彼らは「ジャンキーズ」と呼称され、組織だったものではなく、安価な違法薬物等を摂取し徒党を組み主に夜間に強盗、誘拐、窃盗などの犯罪行為を行っています。警察も一斉検挙を行うなど対処をしていますが、効果は低調です。
組織犯罪ではなく、薬物で気が大きくなった集団がその場の判断で襲ってくるタイプ。アジア人は「裕福」とみなされて狙われるため、夜間徒歩はNG、夕方以降の外出はホテル経由の配車アプリ手配が前提になります。
Travel Alert 02
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アジア人がターゲットにされる構造
当地ではアジア人は裕福である印象が強いことから、強盗殺人や窃盗等の犯罪のターゲットになるケースは珍しくなく、多額の現金を携行及び保管する際には特に注意深く行動する必要があります。
中国系・インド系コミュニティが大規模で、現地の感覚として「アジア人=現金保有者」というイメージが定着している点が背景。日本人渡航者もこの枠で見られるため、リュック・スーツケースで現金を持ち歩かない、ATMから出てきた直後の路上歩行は避ける、ホテル金庫を使うのが基本です。
ルサカ市内の危険エリア
ルサカ市内で大使館が「治安が特に悪化する」と名指ししているのは以下の地域です。
- タウン地域(Town): 中心商業地区、人混みのスリ・ひったくり多発
- カムワラ地域(Kamwala): 市場が集中、現金を狙う組織犯罪
- チボリヤ地域(Chibolya): 低所得地区、外国人立ち入りNG
- コンパウンド(Compound): 低所得者居住地域全般、群衆が車道を歩行し通行困難
- カブロンガ地域(Kabulonga): 高所得者居住区だが「徒歩中の鞄ひったくり・モール内現金強奪が増加」
カブロンガは外国人駐在員も多い住宅街でショッピングモールも集まりますが、それでも犯罪が増加している点に注意。詳しい歩き方はルサカの治安で整理しています。
デモ・暴動と総選挙
ザンビアは2026年8月に大統領選を含む総選挙が予定されており、デモ・暴動への巻き込みリスクも警告されています。
ルサカではデモが突発的に発生し、容易に暴徒化して暴力や破壊行為に発展する危険性があります。
直近の事例は2025年4月3日のコッパーベルト州チンゴラで採石規制抗議デモが暴徒化、店舗破壊・略奪で76名逮捕。2025年8月30日にはザンビア大学学生による事前通告のない祝勝デモで投石、当局が催涙弾鎮圧。2025年9月2日には野党がイスラエル大使館再開抗議デモを警察許可なく外務省(日本大使館の南)前で実施企図しました。デモ告知は SNS 経由で突発的に出るので、選挙シーズンは特に「人の集まりは避ける」が原則です。
2025年の金銭目的誘拐6件
外務省「テロ・誘拐情勢」(2026年2月18日更新)より。
2025年には、首都ルサカを中心として、金銭目的の誘拐事件が発生しています。当館で把握している2025年の誘拐事件は6件であり、身代金要求(年齢及び性別問わず)を目的とした誘拐が確認されました。
過去には2021年9月ルサカ州で12歳と9歳のインド系女児が使用人(メイド)に誘拐され、2日後にカバナナ・コンパウンドの借家で発見された事例も。逮捕されたメイドは「給料が低くもっとお金が欲しかった」と供述しています。短期渡航者でも、ホテル送迎の偽装や白タクで連れ去られるリスクは排除できません。移動手段は配車アプリかホテル手配のタクシーに限るのが原則です。
Travel Alert 03
無料クレカの"海外旅行保険の限界"は?
補償額をふやすウラ技も
医療事情 --- 重症は南ア搬送が前提
外務省「世界の医療事情」と大使館「安全の手引き」より。
重病や大きな怪我の場合、地方都市から首都ルサカ市内の病院への搬送の必要性や、首都ルサカの病院においても対応が困難で医療先進国(南アフリカ、欧州等)に移送して治療を受けることが推奨される場合が生じますが、その際には多額の費用が発生します。
主要感染症は熱帯熱マラリア(雨季多発、発症早期治療しないと死亡)、コレラ(2023年・2024年雨季にルサカ中心部でアウトブレイク)、HIV(成人罹患率約11%)、結核高蔓延、ビルハルツ住血吸虫(川・湖は遊泳禁忌)。狂犬病ワクチンは地方医療機関では在庫切れ・期限切れ多いため、地方訪問予定なら出国前の曝露前ワクチン接種が安全です。
加えて2026年1月のシノ・メタルズ・リーチ社の鉱滓ダム決壊によるカフエ川汚染事故が継続中で、外務省は「Luanshya・Kalulushi・Kitwe(コッパーベルト州)産の野菜及びカフエ川流域の魚を摂取しないよう注意喚起」しています。
医療搬送費用 --- ザンビア事例なし、近隣で505万〜1,116万円
ザンビア独立の保険会社事例公開はありませんが、SBI損保「アフリカ・中南米旅行での高額医療費事例」(出典: ジェイアイ傷害火災保険海外旅行保険事故データ2015〜2023年度)にアフリカ南部の参考事例があります。
ジンバブエ|観光中に鉄橋で滑って転倒。大腿骨骨幹部骨折と診断され現地病院からチャーター機で南アフリカまで医療搬送し15日間入院・手術。家族が駆けつける。505万円
ギニア|頭痛と高熱を訴え受診。マラリアと診断され5日間入院。その後溶血性貧血と診断され、チャーター機でパリに医療搬送し10日間入院。家族が駆けつける。1,116万円
ジンバブエ→南ア搬送が505万円、ギニアでマラリア重症化+パリ搬送が1,116万円。ザンビアで同等の事案が発生すれば桁感は同じになります。さらに「現地医療機関への受診の際、高額の前払い金(クレジットカードでの支払い可能な病院もあり)や保険会社等が発行する支払保証書等が必要となることがあります」(外務省)。クレカ付帯保険だけでは支払保証書が間に合わず搬送が遅れる可能性があるため、別建ての海外旅行保険が現実的です。詳細はアフリカ旅行の保険ガイドへ。
拘束・逮捕されやすい行為
大使館「安全の手引き」より、外国人が拘束された実例があるもの。
- 違法薬物の所持・使用: 罰金又は懲役刑
- 大統領に対する不敬罪: 外国人逮捕事案あり
- ポルノ雑誌・ビデオ等の所持: 違法、過去に邦人逮捕例
- 写真撮影禁止区域(軍事施設・大統領官邸・空港内立入制限区域・政府関係施設・各国大使館): 「米国大使館前で記念撮影中の邦人旅行者が警備担当者に拘束された例」
- サイバー犯罪法(2021年4月適用開始): SNS投稿での誹謗中傷など犯罪行為とその助長・幇助も罰則対象
- 超過滞在・査証目的違反: 観光目的で入国して商用目的で誤申告し拘束された邦人複数
ビザは2022年11月7日以降、日本旅券所持者は入国時査証免除(観光90日/商用30日)。入国時の申告内容と実際の活動が違うと出国時に拘束される事例が複数あるため、誤申告は避けるのが鉄則。現金が絡む活動(取引・契約)が一切ないことを確認してから観光ビザで入国してください。
偽札・両替・闇取引
現地通貨の偽札が出回っている可能性があります。正規の両替所で両替する場合でも、両替所側は紙幣の真贋を確認していませんので、両替所員の面前で点検することを推奨します。
「ザンビアでは日本円の両替はできません」(外務省)。あらかじめ必要な金額を米ドル等へ両替してから入国する必要があります。また外貨の闇取引は為替管理法違反で罰せられるので、空港・銀行・正規両替所での両替に限定してください。
Travel Alert 04
知らずに大損している海外ATMの罠
DCCって知ってますか?
ATM・スキミング
銀行やATMから追跡され、強奪されるケースもあります。空港やショッピングモールに設置されているATMを使用した際、クレジットカード情報を盗まれて、無断でカード決済に使用される可能性があります。
事例として、ルサカ市カブロンガのセントロモールABSA銀行ATMでスキミング被害が報告されています。ATM利用は銀行支店内・大型ホテル内のものに限定、暗証番号を盗み見られないよう手で覆うのが基本。
通信手段とeSIM
ザンビアは固定電話より携帯通信が中心。短期渡航ならeSIMが安全で、空港でSIMカード購入の列に並ぶ必要もありません。出発前にeSIM比較ガイドで対応キャリアを確認してください。
緊急時の連絡先
| 機関 | 電話番号 |
|---|---|
| 在ザンビア日本国大使館(代表) | +260-211-251-555 |
| 在ザンビア日本国大使館 領事担当官携帯 | +260-977-771205〜6 |
| 警察 | 991 |
| 緊急時対応窓口 | 999 |
| 消防 | 993 |
| The University Teaching Hospital(ザンビア大学付属教育病院) | 0955-876164 |
| Fairview Hospital | 0211-373000 |
| Care for Business Medical Center | 0211-254398 |
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Travel Alert 05
空港であなたを待ちうける5つの罠
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都市別ガイド
- ルサカの治安 --- 首都の地区別治安・モール駐車場犯罪・夜間移動・配車アプリ