東京から4時間半、夜景とグルメと中華×英国の街並みが詰め込まれた特別行政区、香港。街歩きそのものの体感治安は日本とほとんど変わらず、「比較的安全な旅行先」のリストに必ず入ってくる都市です。
ただし数字を追うと話はもう少し複雑です。2024年の犯罪総数は94,747件で前年比+5.0%、そのうち詐欺だけで44,480件(前年比+11.7%)と跳ね上がっていて、殺人・強盗・窃盗のほうは軒並み減少。つまり「街で殴られる・盗まれる」リスクは下がる一方、「だまされて金を送る」リスクがどんどん伸びているのが今の香港です。
そこに2020年の国家安全維持法(国安法)、2024年の国安条例が重なり、SNSへの書き込みや軍事施設付近の撮影でも逮捕対象になりうる国にもなっています。渡航前に知っておきたい治安・法律・医療費の実態を、外務省と在香港日本国総領事館の一次ソースから整理しました。
Travel Alert 01
海外の無料WiFiには危険が潜んでいる
あなたのアクセス、丸見えです
香港の危険レベルとテロ・誘拐情勢
外務省の危険情報では、香港全土はレベル1:十分注意してください(2021年8月27日発出)。感染症危険情報は出ていません。
テロ・誘拐については外務省「テロ・誘拐情勢」がはっきり言ってます。
香港においては、テロ組織、反政府組織や国際的なテロ組織の関連組織の活動は確認されていません。
誘拐も対外国人の事件は基本確認されていないものの、2024年7月には将軍澳のショッピングモールで3歳男児が身代金目的で誘拐され約12時間後に保護された事件、2021年にも香港島・九龍で誘拐事件があったと外務省が記録しています。件数は散発的ですが、ゼロではないということだけ頭の隅に。
犯罪の中身:詐欺が突出してる
在香港日本国総領事館「香港安全の手引き」の治安概況はこう書かれています。
香港は多くの観光客やビジネスマンで賑わう都市です。香港の犯罪発生率はそれほど高くなく、安全な都市であると考えられます。
手引きに載っている2024年の内訳を見ると輪郭が掴みやすい。総数94,747件のうち詐欺が44,480件、つまり犯罪の半分近くが詐欺という構成です。殺人19件、強盗90件(銃器使用ゼロ)、窃盗22,433件のうちスリは476件、ひったくりは64件。街中の身体犯は実はかなり少ない部類に入ります。
詐欺の中身
外務省の安全対策基礎データに詳しい数字が載ってます。
増加している主な犯罪は詐欺事件(44,480件)であり、前年と比較して4,656件(11.7%)増加しています。このうち約62%がインターネット関連の詐欺事件であり、被害総額は約1,800億円に上ります。
被害総額1,800億円、ネット関連が6割超。そして2024年の新手口がこれ。
様々な種類の詐欺が発生しており、中でも2024年初めから「カスタマーサービスの職員になりすます」という新しい手口が発生し、2024年中、この手口による詐欺事件が5,575件発生しています。
配送業者や通販サイトの職員を名乗って接触してくるやつです。旅行者でも通販追跡の偽メッセージから誘導される可能性があるので他人事ではない。詳しい手口と対策は香港の詐欺被害にまとめてます。
クレジットカードは世界3位の狙われやすさ
これは渡航前に知っておきたい数字。
報道によると、ダーク・ウェブ上で不正に売買されているクレジットカード情報のうち、香港で発行されたものは約40万件に上るとされています。これは、被害件数としては米国及び豪州に次ぎ世界で三番目に多いとされるほか、人口との比率で見ると最も高いこととなるため、特に注意が必要です。
人口比では世界最多。POS端末のハッキングやフィッシングでカード情報が抜かれるリスクが高いということ。利用明細を日単位で確認する、通知機能をオンにしておく、くらいはやっておきたい。アジア圏でもトップ水準の安全度ですが、世界ランキング上の位置づけはGPI 2025の解説で確認できます。
スリは減ってるけど機内盗難が増えてる
手口の主軸がシフトしているのも押さえておきたい。
2024年の窃盗件数は22,433件で、2023年と比較して3.0%減少しています。スリ事案は前年比29.3%減少、ひったくり事案も前年比21.0%減少していますが、これらの犯罪は誰もが被害に遭う可能性があり、また、2024年は香港行きの航空機内で手荷物として持ち込んだ金品が盗まれる事案が多数発生したとの報道もありますので、こうした事案について、決して他人事と思わず、被害に遭わないようご注意ください。
街中のスリは減ったのに、香港行きの航空機内で荷物が抜かれる事案が新しく増えてる。油断の隙(頭上の荷物棚)を狙う手口で、知らないと対処しようがない。詳細は香港のスリ・置き引き・機内荷物盗難へ。
金地金の運び屋に仕立てられる
香港と日本を往復する旅行者が知っておきたい盲点。
金地金(金塊に加えて一部加工された金製品を含む)の日本への密輸事件が増加しており、2024年の摘発件数は493件(前年比約2.3倍)、押収量は約1,218キログラム(前年比約4倍)でした。密輸仕出地別でみると摘発件数のうち281件が香港からであり、金の密輸入の多くは、暴力団などの犯罪組織が旅行者等に日本までの運搬を依頼する手口によるものです。
摘発493件のうち281件が香港仕出し。犯罪組織が旅行者に運搬を頼む手口です。総領事館の安全の手引きも「帰国の際は、安易に他人からの運搬依頼を受けないように注意しましょう」と名指しで書いてあります。「日本で受け取るだけで◯万円」みたいな依頼は例外なく断る案件。
Travel Alert 02
海外の決済で3.5%も搾取されている現実
あなたは知っていますか?
国安法・国安条例:旅行者でも引っかかりうる
2024年以降の香港を語るうえで避けて通れないのがこれ。
2020年6月に香港国家安全維持法(以下「香港国安法」)が成立・施行され、さらに2024年3月には国家安全維持条例(以下「国安条例」)が成立・施行されました。国家安全に危害を及ぼす行為への対策が強化されており、注意する必要があります。
最高刑は終身刑、しかも香港域外で行われた行為も対象になりうると書かれています。具体例として挙がってるのは以下。
国家安全に危害を与えるような抗議活動への参加、扇動的意図や国家秘密を含む内容のインターネット上への投稿、扇動的意図を持つ出版物の発行・所持・輸入、禁止地域(防衛施設、軍事制限区域等)への合理的な理由のない立入りやその撮影その他の違法な活動を行ったと当局がみなした場合、香港域外で行われたものも含め、逮捕や刑罰の対象となるおそれがあります。
旅行者としての実務は、軍事施設・重要インフラ・政府庁舎付近の撮影は避ける、SNSに政治的な発信をする用がある人は香港滞在中は止めておく、あたりが現実解。日本人の逮捕事案は今のところ把握されていないものの、今後の運用は注視が必要と外務省も書いてます。
デモと歴史記念日
2019年のような大規模デモはもう見られないけれど、突発的な抗議活動は起こりうる、というのが現在地。
抗議活動が突発的に発生する可能性はあります。こうした活動に巻き込まれると、身に危険が及ぶおそれがあるほか、抗議者と間違われて逮捕される可能性もありますので、抗議活動には近づかないようにするとともに、無用な誤解を招くような言動は行わないように注意してください。
特に気をつけたい日付が外務省・総領事館の両方に載ってます。7月7日(盧溝橋事件)、9月3日(抗日戦争勝利記念日)、9月18日(満州事変)、12月13日(南京事件)、8月15日(終戦記念日)、12月25日(香港陥落の日)。これらの日は外出前に報道を確認しておくといい。
法律・取り締まり:日本の感覚で引っかかりやすいやつ
総領事館の手引きが名指しで注意喚起してるのがこれ。
スタンガン・警棒・催涙スプレー・ナックルの所持 ── これらは「武器」と見なされるため、香港渡航(トランジットを含む)の際には所持しない!
トランジットでも所持してたら逮捕されると明記されてます。防犯グッズのつもりでカバンに入れてたら空港で止められるパターン。外務省側の罰則は「最大10万香港ドルの罰金と禁錮14年」。
他にも知らないと引っかかる規定:建物内・公共交通機関内は全面禁煙(違反1,500香港ドル)、ゴミのポイ捨て・つば吐きで3,000香港ドル、タクシー後部座席もシートベルト義務(違反最高5,000香港ドル+禁錮3月)、大麻・CBD・エトミデート(スペースオイルドラッグ)は所持のみで最大500万香港ドルの罰金+終身刑。香港の定額罰金は他国比較で 海外の罰金マップ にまとめてあります。
Travel Alert 03
無料クレカの"海外旅行保険の限界"は?
補償額をふやすウラ技も
医療費:桁違いに高い
外務省「世界の医療事情 香港」の記述がわかりやすい。
私立病院は、日本語対応をしているところもありますが、医療費が高額で、入院1日3万~10万香港ドル程度が必要です。救急車の電話番号は999です。救急車を利用すると政府系の指定病院へ搬送されます。
1日3万〜10万香港ドル=約58万〜200万円/日のレンジ。さらに外務省の安全対策基礎データには「入院等に際しては一定額(病院により額は異なる)の前払い金(デポジット)を納める必要があります」とも書かれてる。
実際に香港で発生した高額事例として、SBI損保の支払事例に「敗血症性ショックで19日間入院、医師付添い医療搬送で2,617万円」というケースがあります。風邪の症状から急変したパターン。詳細は香港の病気・医療費にまとめました。
こうなると海外旅行保険は「入っとくと安心」じゃなくて「入ってないと詰む」レベル。クレカ付帯で済ませてる人も、香港行きは補償額を一度チェックしておくのをおすすめします。→ 東アジアの海外旅行保険ガイド
通信環境
香港は都市部のWi-Fiは豊富ですが、共用Wi-Fi経由のカード情報盗み見リスクや国安法下での通信環境を踏まえると、自前の回線は欲しいところ。eSIMなら現地SIMの差し替え不要で着地後すぐ使えます。→ eSIM比較
Travel Alert 04
知らずに大損している海外ATMの罠
DCCって知ってますか?
緊急時の連絡先
- 警察・消防・救急車:999(24時間)
- 詐欺相談ホットライン(ADCC):18222(24時間、英語・広東語・普通語)
- 在香港日本国総領事館:(852) 2522-1184(24時間対応、閉館時は自動応答→緊急時はコールセンターに転送。転送されない場合は (852) 3008-2092)
総領事館の住所は中環の交易広場(Exchange Square)46-47階。パスポート紛失・逮捕・事件事故のときはここに連絡します。
都市別の詳細
- 香港(都市ページ) — エリア別の注意点、台風シグナル対応、緊急連絡先
Travel Alert 05
空港であなたを待ちうける5つの罠
準備はできていますか?
海外旅行保険
香港は私立病院1日3万〜10万HKDの医療費、機内盗難の増加、詐欺・クレカ詐取リスクと、保険が効く場面がはっきりある渡航先です。 → 東アジアの海外旅行保険ガイド