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中国の治安 反スパイ法と日本人を狙う襲撃事件【2026】

中国の治安や危険エリア、トラブル、医療費を、外務省と在中国日本国大使館の情報からわかりやすくまとめました。

UPDATED · 2026.04.15 KAIGAI-RISK

中国は「観光・ビジネス・語学留学」と日本人の渡航目的が広い一方で、旅行先として他の国とはリスク構造がかなり違います。スリやぼったくりみたいな一般犯罪だけじゃなく、2024年には日本人学校の児童が登校中に殺される事件、日本人母子がスクールバス停留所で切りつけられる事件が立て続けに起きて、外務省が邦人の被害事案として名指しで記録しました。

さらに中国には反スパイ法という他国にない枠があって、旅行者がスマホで軍事施設や政府庁舎を撮っただけで長期拘束されるリスクが現にあります。このページでは、中国に行く前に押さえておきたい話を外務省の安全対策基礎データと大使館の「安全の手引き」(2025年12月改訂版)を軸にまとめました。

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危険レベルと名指しされたエリア

外務省の危険情報は、新疆ウイグル自治区とチベット自治区にレベル1(十分注意してください)が出ています。北京・上海・広州といった主要都市は危険レベル指定なしですが、外務省のポイント欄には次のように書かれています。

最近、中国各地で人の集まる場所(公園・学校・地下鉄・スポーツ施設等)やその周辺、路上において刃物や車輌によって殺傷する凶悪事件が発生しており、邦人が犠牲になる事件も発生しています。

新疆ウイグル自治区については、過去に多数の死傷者を出す暴動や無差別殺傷事件が発生しており、今後も不測の事態が起きる可能性があると引き続きの注意が呼びかけられています。チベット自治区も同様に、過去に僧侶らによるデモが暴徒化した事案あり。チベット自治区に入るには旅行会社経由で「入境証」を事前取得する必要があること、また「未開放地区」という立入禁止エリアがリスト非公開のまま存在することは、大使館ハンドブックが明記しています。

日本人が名指しで狙われた凶悪事件(2024年)

外務省「中国 安全対策基礎データ」に、邦人被害事案として次の3件が並んでいます。

広東省深圳市において日本人学校児童1名が登校中に刃物を持った男に襲われ死亡(2024年9月)

江蘇省蘇州市内の日本人学校スクールバス停留所において刃物を持った男が邦人母子及び中国人1名を切りつけ、邦人母子が負傷、中国人1名が死亡(2024年6月)

江蘇省蘇州市内の飲食店前の路上において邦人男性が刃物を持った男に襲われ負傷(2024年4月)

深圳・蘇州と場所はバラバラですが、共通点は「日本人学校の関係者」「路上・停留所」「刃物」。外務省はこれを一般的な治安悪化ではなく、「人の集まる場所や路上での凶悪事件で邦人が犠牲になっている」という文脈で記録しています。中国本土は日本人だからこそ巻き込まれる個別襲撃の層が他国にない、と認識しておく必要があります。「中国は危険・大都市は安全」のような単純な二項では捉えきれない国なので、体感治安と統計のズレも合わせて読んでおくと位置づけがブレません。

大使館の安全の手引きも対日感情について明記しています。

中国においては、反日的なSNS、動画投稿が恒常的に見られる他、普段から日本人であるというだけで嫌がらせをされる事案が発生していますので、常に反日感情をもった中国人がいることを意識してください。

特に外出に注意すべき日付として、柳条湖事件(9/18)、南京事件(12/13)、廬溝橋事件(7/7)、抗日戦争勝利記念日(9/3)が挙げられています。これらの日は日本関連の行事を開催する場合も慎重検討を、と書かれています。

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反スパイ法と国家安全(中国固有の最大リスク)

中国は2014年に「反スパイ法」(反間諜法)を制定し、2023年4月に改訂、さらに2024年5月には国家秘密保護法の改正も施行されました。大使館ハンドブックの言葉を借りると、こうです。

幅広い行為が「スパイ行為」とされている上、「その他のスパイ活動」も「スパイ行為」の1つとして規定されているため、列挙されているもの以外にも様々な行動がスパイ行為とみなされる可能性があり、これらの法律の内容が当局によって不透明かつ予見不可能な形で解釈・運用される可能性もあります。

つまり「何がスパイ行為に当たるかが事前に分からない」のが本質的リスク。具体的にハンドブックが書いている注意点は以下。

  • 国家秘密・インテリジェンスに該当するとされる情報を「何らかの手段で取得、保有しただけで」スパイ行為とみなされうる
  • 「軍事禁区」「軍事管理区」と表示された場所では、許可のない立ち入りや撮影が禁止
  • GPS を使った測量、温泉掘削等の地質調査、生態調査、考古学調査で地理情報を収集しただけで国家安全当局に拘束される可能性あり。手書きの地図を所持しているだけで対象になりうる
  • 外国人による無許可の統計調査(アンケート配布含む)も違法になりうる
  • 「過去の行為(以前の中国入国時や中国以外での行為)」も調査対象になり得る

中国国家安全部が公表した摘発事例には、たとえば次のようなものが含まれています。

出会い系アプリで知り合った女性からの依頼を受け、報酬を得るため、および女性の歓心を買うため、中国軍艦の停泊地や出港の様子を撮影した。

軍用飛行場の施設、戦闘機の配置などを違法に何度も撮影し、ネット上で公開した。

罰は軽くない。刑法第110条は10年以上の懲役または無期懲役、特に重い場合は死刑。行政罰でも15日以下の拘留や5万人民元以下の罰金があり得ます。旅行者が気軽にスマホで撮った1枚で人生が詰むリスクは、ゼロではないと考えておくべきです。中国の反スパイ法はタイ王室侮辱・UAE飲酒と並ぶ「旅行者が踏み抜きやすい法律」の筆頭で、まとめは 日本人が逮捕されやすい海外の法律10選 にあります。

犯罪発生状況(中国政府統計)

中国政府(国家統計局)の2023年データを大使館ハンドブックから引用しておきます。

刑事事件立件数(全体):4,496,359件(前年比 1.7%増) 殺人:5,443件(2.8%増)/傷害:88,510件(20.9%増)/強盗:6,751件(0.7%減)/強姦:42,458件(7.0%増) 窃盗:981,771件(18.5%減)/詐欺:1,694,757件(5.9%増)

件数の絶対値は人口比で見ると日本と大きく違うわけではありませんが、傷害と詐欺が増加トレンドなのは押さえておきたいところ。特に詐欺は約169万件で、立件数が最も多いカテゴリ。電話やネットを使った振り込め詐欺型が年々巧妙化していると書かれています。

日本人旅行者が巻き込まれやすい一般犯罪は、空港・地下鉄・観光地でのスリ、タクシーの偽札すり替え、繁華街のバー・カラオケ・マッサージ店でのぼったくりが典型。都市ごとの具体的な手口は都市別ページにまとめています。

テロ・誘拐情勢

外務省のテロ情報ページは、中国のテロは主として新疆ウイグル自治区内で発生と記録しています。

1990年代以降、新疆ウイグル自治区では、主に漢族を標的とした無差別殺傷事件、地元の政府・共産党要人の暗殺、行政府庁舎への襲撃等の事件が頻発するようになったとされています。

2014年にはウルムチ市等で多数の市民が犠牲。2017年には皮山県で暴徒3名が刃物で住民を襲撃し5名死亡・5名負傷という事案が起きました。北京でも2013年10月に天安門前で車両突入・炎上事案があり、日本人も負傷しています。

誘拐については、2023年の全国立件数は1,705件(女性・子供の誘拐、前年比40.9%減)。外国人を狙った誘拐は多くないものの、過去には日本人を被害者とする誘拐事件も発生しています。

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医療費の実態(日本と桁が違う)

中国で病気や事故に遭うと、医療費は日本の常識を超えます。大使館ハンドブックの冒頭はこう始まります。

中国で医療機関にかかると、高額な医療費が必要な場合があり、日本への緊急移送が必要な場合には数百万円、医療チャーター便の場合は数千万円の費用が必要になります。

SBI損保と損保ジャパンの公開事例(いずれも中国本土)を並べます。

状況診断入院保険金
ホテルのドアにぶつかり転倒大腿骨頚部骨折・くも膜下出血36日入院・手術、チャーター機で医療搬送1,736万円
窓から落ち骨折(19歳男性)腰椎骨折、現地2度の手術30日入院1,076万円
昼食中に右半身に力が入らなくなる脳梗塞・肺炎26日入院819万円
ホテル浴室で転倒大腿骨頚部骨折33日入院・手術871万円
バスに搭乗中に事故(ラサ)脛骨・腓骨複雑骨折、下肢裂傷17日後チャーター機で帰国666万円
発熱・咳・頭痛ウィルス性脳炎18日入院645万円
空港で高熱肺炎17日入院、家族駆けつけ、医療搬送324万円

(出典:SBI損保「海外旅行での高額医療費事例」、損保ジャパン off!、ソニー損保 海外旅行保険)

都市部では外資系クリニックがあって日本語対応もできる一方、地方都市では英語や日本語が通じる医療機関は限られます。北京の外資系医療機関では、感冒や胃腸炎でも1,000元(およそ20,000円)以上かかるのが普通、と医療事情ページにあります。クレジットカード付帯の海外旅行保険だけでは足りないケースが多いので、医療補償が1億円クラスのネット保険を別途用意しておくのが現実的です。

通信と決済の現実

中国は電子決済(Alipay / WeChat Pay)が圧倒的に普及していて、現金を使う機会はほぼありません。ただし電子決済アプリは原則中国国内の銀行口座が必要で、短期滞在の外国人にはハードルがあります。近年は海外発行クレカを紐付けて使えるルートも拡大していますが、国境エリアや地方都市だと断られることもあります。

通信もグレートファイアウォール(金盾)でGoogle・LINE・Instagram・Xなどが普通にはつながりません。日本のSIMを国際ローミングで使う、またはVPN前提のeSIMを事前に用意するのが現実解です。中国で使えるeSIMの選び方は海外eSIM比較に、金盾を越えるための回線はVPN比較にまとめています。

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緊急時の連絡先

大使館ハンドブックより。

  • 警察:110
  • 消防:119
  • 交通事故:122
  • 救急車:120 または 999
  • 在中国日本国大使館(北京):(010)8531-9800(代表)/(010)6532-5964(邦人援護)
  • 在上海日本国総領事館:(021)5257-4766
  • 在広州日本国総領事館:(020)8334-3009
  • 在重慶日本国総領事館:(023)6373-3585
  • 在瀋陽日本国総領事館:(024)2322-7490
  • 在青島日本国総領事館:(0532)8090-0001
  • 在大連領事事務所:(0411)8370-4077

日本人の被害トラブルが起きた場合、言葉の壁もあり、まず自分のホテルや宿泊施設の警備部門・外事部門に通報してもらった上で公安に届け出るのが広州総領事館の推奨手順です。

中国主要都市の治安情報

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中国で数百万〜数千万円の医療費が出た事例は、短期旅行者にも普通に起きています。クレジットカード付帯保険だけだと補償上限に足りないケースがあるので、渡航前に東アジアの海外旅行保険比較で現状を確認しておくのをおすすめします。

主要都市の治安情報

出典