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ヨルダンの治安 密造酒死亡・祝砲流れ弾・部族抗争【2026】

ヨルダンの治安や危険エリア、トラブル、医療費を、外務省と在ヨルダン日本国大使館の情報からわかりやすくまとめました。

UPDATED · 2026.04.27 KAIGAI-RISK

ヨルダンはペトラ遺跡、死海、ワディラム砂漠、アカバの紅海ダイビングと、中東でも屈指の観光資源が集中する国。サウジやUAEとは違って観光ビザで気軽に入れて、外国人女性のヒジャブ義務もなく、酒類も正規ルートでは飲める。「中東地域の中では治安が比較的安定している国」と外務省も書いている。

ただし2026年2月以降、米軍基地の所在するマフラク県とザルカ県はレベル3(渡航中止勧告)に引き上げられた。観光ハブのアンマン・ペトラ・死海・ワディラム・アカバはレベル2継続だが、「比較的安定」の中身は他の中東国とは違う固有リスクを抱えている。タウジーヒ(大学進学資格試験)結果発表後の祝砲流れ弾、密造酒のメタノール混入死亡事件、部族間の武装抗争、マッチングアプリ経由のぼったくり --- 出発前に頭に入れておきたい話を整理する。

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危険レベル

外務省はヨルダンに以下の危険情報を出しています(2026年2月時点)。

  • マフラク県、ザルカ県: レベル3(渡航は止めてください) --- 米軍基地が所在し、攻撃被害リスクが高い
  • 上記以外の地域すべて: レベル2(不要不急の渡航は止めてください) --- 観光ハブ含む全土

引上げの背景はこう説明されています。

2月28日(現地時間)、イスラエル及び米国はイランに対して攻撃を開始し、同日、イランはヨルダンに所在する米軍基地等を標的とする攻撃を行いました。

シリア・イラク国境地帯(ヨルダン北東部)は治安情勢が依然として不安定で、近付かないよう外務省が明記している。観光地や都市部のショッピングモール・レストランも「外国人が多く集まる」標的になりうるとされ、航空便のキャンセル・遅延も発生中。

犯罪の全体像 --- 件数は増加傾向

ヨルダン公安総局によれば、2024年の犯罪総件数は23,982件で前年比+1,198件(+5.26%)増加。経済情勢の悪化が背景にあり、銀行・店舗を狙った強盗や、観光地での強盗による日本人被害(2017年路上強盗、2018年観光地強盗)も大使館の手引きで報告されている。

日本人が遭った被害として記録されているのは、空き巣・暴行・痴漢・投石・ジョギング中や観光地での強盗、タクシー運転手からの嫌がらせ。アンマン市内ではスウェイフィーヤ/シュメイサーニ/アブドゥーン/ウンム・ウゼイナといった「ビジネス街・高級住宅街」で、ひったくり・車上狙い・空き巣が起きている点に注意。「治安の良いエリアだから安全」ではなく、むしろ富裕層エリアが狙われる構造になっている。

具体的な手口と都市別の対策は アンマンの治安と注意点 からトラブル別記事へ。

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銃器が広く出回っている --- タウジーヒの祝砲事故

中東の中でもヨルダン固有なのが、無許可銃器の流通量と「祝砲」の流れ弾事故。

ヨルダンでは、銃器の所有は許可制となっていますが、実際には無許可で保有されている銃器が広く出回っています。銃器による発砲事件は、2024年中に1,730件発生しています。

特に毎年夏のタウジーヒ(大学進学資格試験)結果発表後は、合格を祝った市民が空に向けて銃を乱射する文化があり、流れ弾で住民が負傷したり住居が破損する被害が出る。2018年には日本人宅の窓ガラスに祝砲の流れ弾が命中する事案も発生している。タウジーヒの結果発表時期(例年7〜8月)は、人混み・繁華街・夜間外出を避けるよう大使館が注意喚起している。

選挙後の祝賀会・抗議集会でも空に向けて銃を撃つ行為が確認されていて、強盗等の被害に遭った際は「相手は銃を所持している可能性がある」前提で絶対に抵抗しないのが鉄則。

デモ・部族間抗争 --- 金曜礼拝後に注意

2023年10月以降のパレスチナ・イスラエル情勢を受けて、イスラエル・米国に対する抗議デモが各地で続いている。

金曜日の昼の礼拝後(午後1時頃)に行われる抗議活動は、アンマン市内ダウンタウンをはじめヨルダン国内各地において、大規模に行われることが多いため、十分注意してください。

ヨルダンならではのリスクとして部族間の武装抗争もある。「異なる部族出身の個人や家族単位の口論やトラブルが互いに武器を所持した部族間の争いに発展し、死傷者をともなう騒じょう事案になる」と外務省が明記している。観光客が直接巻き込まれる確率は低いものの、地方で目撃したらその場を離れる。

サッカーW杯予選など大規模イベント時はアンマン国際競技場周辺の混雑・暴力的行為のリスクも喚起されている。

テロ・誘拐情勢

2025年9月、イスラエル・ヨルダン国境のアレンビー橋でガザ支援トラックを運転していたヨルダン人ドライバーがイスラエル兵2名を射殺する事件が発生。観光客向けに直近で覚えておくべきテロ事例は次のあたり。

  • 2016年12月: カラク県で警察署・カラク城が銃撃され、外国人観光客1名を含む10名死亡(ISIL犯行声明)
  • 2019年11月: ジェラシュのローマ遺跡で刃物襲撃、外国人観光客4名を含む8名負傷
  • 2024年1月: ヨルダン北東部の米軍基地に親イラン武装組織による攻撃、米兵3名死亡
  • 2024年11月: アンマン市内アル・ラービエ地区(イスラエル大使館付近)で警察官3名が銃撃される

2024年12月のシリア・アサド政権崩壊以降、北部国境地域のテロ組織活動の活発化が懸念されている。観光ガイドが「ジェラシュは安全」と言ったとしても、過去にローマ遺跡で襲撃事件があったことは頭の片隅に。

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国境越えに関する注意

イスラエルとの陸路国境(キングフセイン橋/シェイクフセイン橋/ワディアラバ)の通行可能時間は流動的で、土曜日は基本閉鎖。2026年2月以降はイスラエル全土がレベル3-4、シリア・イラク国境地帯は治安が不安定なので、陸路移動は事前に大使館の最新情報を確認すること。

法律とマナー --- 中東の中では穏やかだが踏むと重い

ヨルダンはイスラム教徒が93%(大半がスンニ派)の国。サウジほど厳しくないけれど、外国人だから許される、ということはない。

王室批判は懲役1〜3年

王室に対する不敬には刑罰が科されます。外国人であっても、公衆の面前での王室批判や、王室関係者の肖像画が入った紙幣やポスター、写真等へ落書き等をした場合は1年から3年の懲役刑が科されます。

紙幣に落書きしただけで懲役、はSNS時代の旅行者には特に怖い。アブドッラー2世国王の肖像が入った紙幣を破ったり書き込んだりするのは絶対NG。

服装・飲酒・ラマダン

中東地域の中では飲酒に寛容で、ホテルやレストランでアルコールが提供される。ただし公共の場で酩酊して大声を出す行為は取り締まりの対象。ラマダン(断食月)期間中は、通常時にアルコールを提供しているホテルやレストランでも販売を控える傾向。日中の公共の場での飲食・喫煙は避けたほうが無難。

服装は「過度に肌を露出した服装は避けた方が良い」レベルで、サウジのような厳格規定はない。ただし宗教施設訪問時はノースリーブ・ショートパンツは避ける。中東圏全体で踏みやすい禁忌は致命的禁忌マップにまとめている。

麻薬は厳罰、ポルノも持込み禁止

麻薬・覚醒剤等の持込み、所持及び使用には厳罰が科されます。

通関は厳しく、麻薬・銃器・ポルノは持込み禁止。「セミヌード写真が掲載されている程度の週刊誌等であっても持込みできません」とまで書かれている。書籍・雑誌の選別は出発前に。

滞在届と滞在超過

2025年10月から、2週間以上滞在する外国人は到着から13日以内に最寄りの警察署に滞在場所を届け出る義務が新設された。怠ると200JD(約4万円)の罰金。観光ビザ滞在超過は1日あたり3JD、1か月で90JDの罰金が出国時に課される。

撮影禁止区域

軍関係施設・米国大使館などは撮影厳禁。「撮影するつもりがなくても、カメラを向けた方向にたまたま軍事施設等があった場合には、カメラを没収されたり、映像を消去されたりすることがあります」。立入禁止地区の看板はアラビア語表記が多いので、軍服の人がいるエリアではカメラを下げておく。

医療事情と医療費

アンマンの医療水準は高く、私立病院の設備は近代的。「ヨルダン政府も、内外に向けてヨルダンを医療ツーリズムの中心地としてアピールしています」(外務省 世界の医療事情)と書かれているくらい。ただし日本の病院のような丁寧な看護・介助は期待できず、言語と風習の違いで戸惑うことが多い。

旅行者が知っておきたいのは次の3つ。

  • 食中毒: 6〜8月を中心に多発。2023年は212人がアメーバ性/細菌性赤痢に感染。生水・生卵は避けてボトルウォーター
  • 皮膚リーシュマニア症: サシチョウバエに刺されて感染。2010〜2016年で年平均177例。ペトラ・ワディラムなど地方では長袖長ズボン
  • 狂犬病: 年0〜数例だが死亡率ほぼ100%。野犬・野良猫に絶対近づかない。咬まれたら公立Al Bashir Hospitalで暴露後接種

外務省も「医療費が高額になる事に備え、十分な補償の可能な海外旅行傷害保険に加入しておくことを推奨します」と明記。ヨルダン固有の高額支払事例は保険会社データに見当たらないが、中東地域の参考事例として、サウジアラビアやUAEでは交通事故ICUで桁が跳ねるケースが報告されている(ジェイアイ)。アカバでスキューバダイビング中の減圧症などは王立Prince Hashem bin Abdullah Military Hospitalで高気圧酸素治療が必要で、これも高額になりがち。保険の詳細は 中東旅行の保険ガイド へ。

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通信手段

ペトラ、死海、ワディラム、アカバと観光地が国土に分散していて、移動中の地図・配車アプリ・翻訳が必須。Wi-Fiはホテル・カフェ以外では限定的なので、出発前にeSIMを準備しておくのが楽。eSIM比較はこちら

都市別の治安情報

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緊急時の連絡先

連絡先電話番号
警察・救急・消防・交通事故(共通/英語可)911
在ヨルダン日本国大使館(市外局番06)593-2005
Al Khalidi Medical Center(私立病院・アンマン)(06) 464-4281
Arab Medical Center(私立病院・アンマン)(06) 592-1199
Jordan Hospital(私立病院・アンマン)(06) 560-8080

緊急時の現地連絡用語(アラビア語): 助けて=サーイドゥニイ/警察=シュルタ(ポリース)/医者=ドクトール/救急車=イスアーフ。

主要都市の治安情報

出典