フィリピンは日本人に人気の旅先で、セブのビーチ、マニラの夜景、語学留学と目的はさまざまだけど、一般市民でも銃を合法的に持てる国だということは出発前に知っておいてほしい。2024年の犯罪統計では強盗は日本の約3倍、殺人は約4倍。毎年のように日本人が殺人被害に遭っていて、在セブ総領事館は「フィリピンは世界中で日本人の殺人事件が最も多い国のひとつ」とはっきり書いています。
Travel Alert 01
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フィリピンの治安の全体像
危険レベル
2024年12月時点の外務省危険情報はこうなっています。
- レベル3(渡航中止勧告) — ミンダナオ地方の一部(スールー州、バシラン州、南ラナオ州など)
- レベル2(不要不急の渡航中止) — パラワン州南部、ミンダナオ地方の一部(南コタバト州、北スリガオ州の一部など)
- レベル1(十分注意) — マニラ首都圏を含むそれ以外の全域
ざっくり言うと、ミンダナオ島の南西部はレベル2〜3で一般旅行者が行くべきエリアではない。一方でマニラ・セブ・ボラカイなど主要観光地はレベル1だけど、「十分注意」がついている点は忘れずに。
2023年7月にフィリピン政府は2016年から続いた国家非常事態宣言を解除しましたが、テロや誘拐は依然として発生しているため油断はできません。
犯罪統計
フィリピン国家警察(PNP)の発表によると、2024年のフィリピン全土の犯罪発生件数は約20万件。日本と比較すると、
- 強盗 — 日本の約3倍
- 殺人 — 約4倍
- 不同意性交 — 約2倍
しかもフィリピンでは、警察への登録・許可制度に基づいて一般市民でも合法的に銃を所持・携行できる。さらに未登録の銃器や密造銃も広く出回っていて、銃器による犯罪が起きやすい環境になっています。これが日本との最大の違い。国全体の数字と観光地(マニラ・セブ等)の現実のギャップが大きい国なので、体感治安と統計のズレも合わせて読むと位置づけがブレません。
マナー・法律・NG行動
1. 違法薬物(終身刑もある)
フィリピンは国を挙げて薬物犯罪の取り締まりを強化しています。外国人も例外ではなく、警察によるおとり捜査も実施されている。興味を示した観光客が、密売人から薬物を見せられて手にした瞬間に現行犯逮捕されることもあります。
「興味本位で実物を見てみたかっただけ」等の言い訳は通用しないので留意してください。
「タバコ」「高級茶葉」と称して薬物を売りつけてくるケースもあるし、「おみやげを届けてほしい」と頼まれて運び屋にされる可能性もある。見知らぬ人の荷物は絶対に預からないこと。
売買春に絡む刑罰も厳しく、未成年者に対するわいせつ行為や売買春の勧誘・強要には最高で終身刑が科されます。
2. 特殊詐欺(闇バイト)への加担
「海外で短期間に高収入」「簡単な翻訳作業」――こうした闇バイトの謳い文句に乗って渡航した結果、詐欺犯罪の加害者にされてしまうケースがフィリピンで発生しています。最近は未成年者が加担させられるケースも。
パスポートを取り上げられて軟禁状態となり、自分自身や家族等の個人情報をもとに脅迫され、抜け出すことができないばかりか、組織内でのトラブルにより、暴行を受け重傷を負うなどのおそれがあります。
一度関わったら自分の意思では抜けられない。「ちょっとだけ」が通用しない世界なので、SNSやバイトアプリの「海外×高収入」案件には絶対に手を出さないでほしい。
3. 人前で怒らない(暴行・逮捕リスクあり)
フィリピンでは、相手が誰であっても公衆の面前で罵倒し恥をかかせる行為はタブー。従業員を他の従業員の前で叱責して暴行・脅迫を受けた例や、自分の配偶者・子どもへの叱責を他人から訴えられて警察に逮捕された例もあります。感情的になりやすい場面こそ冷静に。
4. 喫煙・飲酒の規制
フィリピン全土で指定場所以外での喫煙(電子タバコ含む)・飲酒を禁じる大統領令が施行されています。歩きタバコや路上での飲酒は警察官や自治体係員が厳格に取り締まっていて、初犯でも罰金。吸い殻のポイ捨ても通報対象です。
5. 写真撮影
空港、鉄道、軍・警察等の政府関連施設、立入禁止区域およびその周辺での撮影は禁止。何気なくスマホを向けてトラブルになることがあるので注意。
6. 違法賭博
違法賭博に関与した外国人は身柄拘束されるだけでなく、保釈後も公判期間中は出国停止。有罪なら禁固刑または国外退去です。後述する「いかさま賭博」の被害者であっても、自主的に賭博に応じたと判断されれば逆に罪に問われることがある点は覚えておこう。
Travel Alert 02
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主な犯罪・トラブル
スリ・ひったくり
マニラ首都圏では、ショッピングモール、公共交通機関(バス、ジープニー、LRT、MRT)でのスリ被害が多発。エスカレーターやエレベーター、列車内といった狭い空間での集団犯行が多いのが特徴です。
子どもの物乞い集団にも要注意。繁華街で急に子供たちに取り囲まれ、小銭をせがまれている隙にバッグから財布を抜き取られるケースが報告されています。
オートバイによるひったくりもマニラ・セブ両方で発生。ひったくられたバッグを離さなかったために転倒して怪我をした例もあるので、しがみつかないこと。命のほうが大事です。
タクシー・交通トラブル
空港での客引きタクシーは絶対に使わない。出迎えボードを掲げている人物が、実は他の出迎え者の名前を写し取った偽物というケースまであります。
大使館の注意喚起では、ニノイ・アキノ空港で「安くマニラまで送る」と声をかけてきたタクシーに乗ったところ、降車時に高額な乗車賃を脅迫され、払えないと交渉したら財布とパスポートを強奪された事例が報告されている。流しのタクシーも降車時に高額な乗車賃を脅迫されるケースがあり、流しのタクシーは絶対に利用せず配車サービス(Grab等)を使うのが基本。
夜間は車両強盗の危険が高くなるため、夜間到着便はできるだけ避ける。どうしても夜着なら、事前に出迎えを手配しておくこと。
詐欺・ぼったくり
フィリピンでは外国人とわかると法外な料金を請求する業者が商店・飲食店だけでなく弁護士や葬儀社まで多岐にわたると外務省が注意喚起しています。事前の見積もり確認と領収書チェックが基本。
いかさま賭博(セブで多発)
ショッピングモールや繁華街で親しげに声をかけてきた人物に自宅と称する場所へ連れて行かれ、家族を名乗る人物からトランプゲームに誘われて多額の掛け金を巻き上げられる手口。被害者の多くは「いかさま賭博の事例は知っていたが、まさか自分が巻き込まれているとは思わなかった」と語っています。
しかも自主的に賭博に応じたと判断されれば、被害者どころか違法賭博の罪に問われることもある。声をかけられた時点で離れるしかない。
美人局
マッチングアプリで知り合った女性とホテルに行ったら、突然「自分は未成年だ、警察を呼ぶ、嫌なら金を払え」と騒ぎだした。同時に仲間がナイフを持って部屋に入ってきて、金を払えと脅されました。
※実際の被害報告をもとに再構成した事例です(出典:在フィリピン日本国大使館「犯罪被害の傾向・注意喚起」)
投資詐欺も。複数回の渡航で親しくなったフィリピン人女性に投資話を持ちかけられ、100万円以上を騙し取られて連絡が途絶えた事例が報告されています。
睡眠薬強盗
大使館にほぼ毎月、時には毎週のように被害報告が寄せられている深刻なトラブル。手口はパターン化されています。
| ステップ | 手口 |
|---|---|
| 接触 | イントラムロスやリサール公園付近で「案内してあげる」「一緒に行かない?」と声をかけてくる |
| 信用構築 | 「日本語を教えて」「タガログ語を教える」と親切心につけ込む。半日以上一緒に行動して信用させた例も |
| 犯行 | 食事に誘い出し、「友人の車」内やレストランで睡眠薬入りの飲食物を出す |
| 窃盗 | 昏睡後に所持品を盗み取り、キャッシュカード・クレジットカードで数十万円を不正利用 |
さらに「目覚めたら『暴行された』と言いがかりをつけて慰謝料を請求する」派生パターンや、いかさま賭博に巻き込むパターンもあります。金銭被害だけでなく、睡眠薬の摂取量によっては身体に重大な影響を及ぼすおそれがあることも忘れないでほしい。
銃器犯罪
フィリピン最大の特徴がこれ。一般市民も銃を持てる環境なので、路上強盗でいきなり銃を突きつけられるケースがある。
夜にマニラの路上を歩いていたら、突然現れた犯人に手荷物を渡すよう銃を突きつけられました。咄嗟に抵抗したら発砲されて負傷しました。
※実際の被害報告をもとに再構成した事例です(出典:外務省 安全対策基礎データ(フィリピン))
大使館の注意喚起でも、夜間に歩道を歩行中に拳銃を向けられてバッグを奪われる被害が報告されている。抵抗してカバンを離さなかったために発砲を受けた事案や、拳銃のグリップで殴打された事案もある。
セブでも夜間の路地で2〜3人組に拳銃や刃物で脅され、実際に発砲を受けた日本人の例が報告されています。タクシーの運転手ごと銃で脅して車両を強奪する事件まで起きている。
日本人の殺人被害は2020年1件、2021年1件、2022年2件、2023年2件、2024年1件と毎年発生。商売上のトラブルや怨恨が多いとされますが、夜間の強盗で抵抗して射殺されるケースもあります。
金品を要求されて、応じようとポケットやバッグに手を伸ばすと反撃すると誤解され攻撃される可能性もあるので、身体を動かすことなく「ポケットに入っている」などと口頭にて説明するか、指だけで差し示して犯人に取らせるようにしてください。
これは本当に覚えておいてほしい。強盗に遭ったら絶対に抵抗しない、急に動かない。
薬物トラブル
マナー・法律セクションでも触れたとおり、フィリピンの薬物取り締まりは極めて厳しい。繁華街の路地裏には近づかない、見知らぬ人から不審なもの(「タバコ」「高級茶葉」)を購入しない・預からない。おとり捜査で手にしただけでも逮捕されます。
テロ・誘拐情勢
ミンダナオ地方を中心に、以下のテロ組織が活動しています。
- アブ・サヤフ・グループ(ASG) — 2025年にメンバーの投降が相次ぎ、バシラン州は「ASGフリー宣言」を行ったが、完全な脅威消滅には至っていない
- ダウラ・イスラミヤ(DI) — 2025年にも南ラナオ州・南マギンダナオ州で国軍との衝突が発生
- バンサモロ自由戦士(BIFF) — ミンダナオ地方で活動継続
- 新人民軍(NPA) — 2024年10月にビサヤ地方の日系企業を名指しして地元農民を扇動する動きあり
マニラ首都圏でも2017年6月にニノイ・アキノ国際空港近くのリゾートホテルでカジノ強盗事件が発生し、犯人が銃を乱射・放火して38人が死亡しています。
誘拐はフィリピン国家警察によると2024年33件、2025年28件。誘拐後に殺害される事案もあります。ただし、これらの組織が日本人を明示的に標的としているとの情報は確認されていません。
観光施設、ショッピングモール、公共交通機関、宗教関連施設はテロの標的になりやすいので、常に周囲に注意を払おう。
Travel Alert 03
無料クレカの"海外旅行保険の限界"は?
補償額をふやすウラ技も
医療費の実態
医療水準
マニラ首都圏の私立総合病院では最先端の医療を受けられますが、地方都市では医療施設の老朽化と衛生状態の悪さが目立ち、安心して医療を受けられるレベルに達していないところも多い。
医療機関の受診時には診療費の前払いや支払能力の提示を求められます。現金・クレジットカード・海外旅行保険の証書を忘れずに。保険がなく国内で治療できない場合、日本への緊急移送で数千万円単位の費用がかかることもあります。
ダバオの医療事情
ダバオ市には救急外来のある総合病院が複数あり、ミンダナオ島の中では比較的充実した医療環境。外務省の「世界の医療事情」では以下の4院が紹介されている。
- Davao Doctors Hospital — 国際認証(Accreditation Canada International)のPlatinum levelを取得。ダバオでは最もハイレベルな診療が期待できる
- Brokenshire Integrated Health Ministries — カナダの修道会が母体のカトリック系病院
- San Pedro Hospital of Davao City — ドミニコ修道会系の病院
- Davao Medical School Foundation Hospital — 医学校併設の総合病院
ただし、ダバオでも診療費の前払いや支払能力の提示を求められる点はマニラと同じ。現金・クレジットカード・海外旅行保険の証書は必ず持参しよう。
注意すべき感染症
- 狂犬病 — 毎年200人以上が死亡。発症後の死亡率はほぼ100%。犬・猫に噛まれたらすぐにワクチン接種を
- デング熱 — 年間10〜20万人の感染者。蚊対策を徹底
- 結核 — WHOが「結核高まん延国」に指定。人口10万人あたりの発症率638人は世界2位(2022年)
- HIV — 毎日約49人の新規感染者が報告されていて、保健省が公衆衛生上の危機と表明
雨期(6〜11月頃)は水害で衛生状態が悪化し、食中毒・感染性腸炎が流行しやすくなります。マニラは排気ガスによる大気汚染もひどく、呼吸器系の疾患が多い。
予防接種
ダバオの外務省医療情報では、赴任者向けに以下の予防接種を推奨している(短期旅行者も検討の価値あり)。
- A型肝炎・B型肝炎・破傷風・日本脳炎・狂犬病
- ポリオや麻疹風疹の追加接種
高額医療事故の事例
フィリピン名義の保険金支払いデータでは盗難被害の事例が中心ですが、東南アジア全体ではプライベートジェットでの緊急移送に689万円、医療搬送機での帰国に約2,700万円といった高額事例があります。フィリピンでも地方で重症を負えば同様の搬送費用が発生する可能性は十分あり得ます。
| 事故内容 | 支払保険金 |
|---|---|
| 買物中にスーツケースとカメラを盗まれた | 30万円 |
| マニラ空港でショルダーバッグを盗まれた | 30万円 |
| セブ島でホテルのポーターに荷物を盗難された | 30万円 |
海外旅行保険の備え
フィリピンでは地方で重症を負った場合、マニラや日本への医療搬送が必要になることがあります。搬送費用だけで数千万円。スリや強盗の被害も、海外旅行保険の携行品損害でカバーできる可能性があります。
年会費無料のクレジットカード付帯保険を2枚組み合わせるだけでも、それなりの補償額を確保できます。具体的な組み合わせは東南アジア旅行の保険ガイドを参考にしてください。
Travel Alert 04
知らずに大損している海外ATMの罠
DCCって知ってますか?
通信手段の確保
強盗に遭ったとき、睡眠薬強盗で目を覚ましたとき――そういうときに大使館や保険会社に連絡が取れないと詰みます。現地で使える通信手段は出発前に用意しておこう。
フィリピンの緊急番号(911)はフィリピン語か英語対応なので、自分のスマホで日本語対応の保険会社ヘルプデスクに電話できる状態にしておくのが安心です。
出発前にスマホ上で開通できるeSIMなら、空港到着後すぐに使えて手間が少ない。各社の料金・速度比較は海外eSIM比較ガイドを参考に。
ホテルやカフェのフリーWi-Fiはセキュリティが甘いことが多いので、VPNも併用しておくと安心です。選び方は海外VPN比較にまとめています。
都市別の治安情報
マニラ
首都マニラはフィリピンの政治・経済の中心地。睡眠薬強盗、スリ・ひったくり、路上での銃器強盗など犯罪の種類が幅広く、日本人の殺人被害も大半がマニラ首都圏で発生しています。2017年には空港近くのリゾートホテルで銃乱射・放火事件も。
マニラの詳しい治安情報はマニラの都市ページでまとめています。
セブ
日本人に人気のリゾートですが、「セブは安全」というイメージは危険。拳銃や刃物を用いた邦人への凶悪犯罪被害が近年毎年報告されています。いかさま賭博もセブで特に多い手口。マリンスポーツに伴う水難事故にも注意が必要です。
セブの詳しい治安情報はセブの都市ページでまとめています。
Travel Alert 05
空港であなたを待ちうける5つの罠
準備はできていますか?
緊急時の連絡先
緊急通報
- 警察・消防・救急(全国共通):911
- 診療救急(赤十字):143
在外公館
在フィリピン日本国大使館(マニラ)
- 住所:2627 Roxas Boulevard, Pasay City, Metro Manila
- 代表:02-8551-5710
- 領事班直通:02-8834-7508
- 邦人援護ホットライン:02-8551-5786(平日8:30〜17:15、人命に関わる緊急案件は24時間対応)
- メール:ryoji@ma.mofa.go.jp
在セブ日本国総領事館
- 電話:032-231-7321 / 032-231-7322
在ダバオ日本国総領事館
- 住所:4th Floor, BI Zone Building, J.P. Laurel Ave., Bajada, Davao City
- 電話:082-221-3100 / 082-221-3200
- FAX:082-221-2176
- 領事関連メール:cojd2@dv.mofa.go.jp
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