ツインタワーに屋台街、ビーチリゾートにボルネオの大自然。マレーシアは東南アジアの中でも旅行しやすい国として人気です。医療レベルも比較的高く、英語が通じる場面も多い。ただ、「東南アジアの中では安全なほう」というイメージだけで油断すると痛い目を見ます。バイクによるひったくりで転倒・大怪我、偽警察官にスリに遭う、流しのタクシーで監禁――どれも実際に報告されている被害です。
治安の全体像から法律・マナー、よくあるトラブル、医療費の実態まで、渡航前に押さえておきたいポイントをまとめました。
Travel Alert 01
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マレーシアの治安の全体像
危険レベル
外務省の危険情報によれば、マレーシアの大部分は危険レベルの発出なしです。ただし、東マレーシア(ボルネオ島)のサバ州東岸は別です。
- サバ州東海岸の島嶼(バンジ島・バラムバンガン島を除く):レベル3(渡航中止勧告)
- フィリピン南部を拠点とするイスラム過激派「アブ・サヤフ・グループ(ASG)」等による外国人誘拐事件が過去に複数発生。2020年1月以降は身代金目的の誘拐は発生していないものの、マレーシア当局は現在も活動制限を付しています。
- サバ州東海岸のバンジ島・バラムバンガン島、サンダカン〜センポルナ沿岸等:レベル2(不要不急の渡航中止)
クアラルンプール、ペナン、ランカウイ、コタキナバル市街地などの主要観光地には危険レベルの発出はありません。
犯罪統計
2023年のマレーシア国内の主要犯罪(殺人・強盗・強制性交・傷害・窃盗)は52,444件。日本と人口10万人あたりの発生率で比較すると、殺人はほぼ同水準ですが、強盗は日本の約12倍と非常に高い数字です。
日本人が巻き込まれるのはひったくり・スリ・置き引き・詐欺が大多数。クアラルンプールのブキビンタン周辺やKLセントラル駅では、外国人をターゲットにした犯罪集団も確認されています。世界全体での位置づけはGPI 2025の解説で日本との比較が見られます。
Travel Alert 02
海外の決済で3.5%も搾取されている現実
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マナー・法律・NG行動
1. 麻薬=死刑(最重要)
マレーシアの麻薬規制は世界でもトップクラスの厳しさです。危険薬物法(Dangerous Drugs Act 1952)により、違法薬物の売買は死刑、所持は最高で無期懲役。ヘロイン・モルヒネ15g以上、大麻200g以上を所持していた場合は売買目的とみなされ、死刑が科される場合があります。
空港や警察署のいたるところに「DADAH DEATH(麻薬=死)」の掲示があるほどの徹底ぶり。外国人旅行者だから見逃してもらえる、なんてことは絶対にありません。知らない人から「荷物を預かってほしい」と頼まれても、絶対に断ってください。マレーシアのDangerous Drugs Actは 日本人が逮捕されやすい海外の法律10選 の筆頭項目、詳しい国別量刑は 大麻・ドラッグ法的リスク国別マップ に。
2. イスラム教の風俗・習慣
マレーシアは憲法でイスラム教を国教と定めており、人口の半数以上がムスリムです。以下のマナーは押さえておいてください。
- 酒・豚肉はタブー(ムスリムの前では配慮が必要)
- 左手は不浄 — 握手や物の受け渡しは右手で
- 人差し指で指さない — 方向を示すときは親指を使う
- 頭は神聖 — 子どもでも頭を撫でない
- 女性への接触 — こちらから握手を求めない
- 日没後1時間は訪問・電話を避ける(夕方の祈りの時間)
観光地のモスクや寺院では、露出の多い服装は入場できないことがあります。
3. 旅券(パスポート)の携帯
マレーシアには外国人への身分証明書の常時携帯義務を明記した法令はありませんが、警察官には広範な職務質問権限があり、旅券のコピーだけでは警察署への同行を求められたり、身柄を拘束されることがあります。旅券の原本を携行するのが安全です。
ただし、「旅券不所持」を理由にその場で罰金を徴収されることはないとマレーシア警察当局が確認しています。もしその場で金銭を要求されたら偽警官の可能性があるので、応じずに大使館(03-2177-2600)に連絡してください。
4. MDAC(デジタル入国カード)の偽サイトに注意
マレーシアは2023年12月から、空路での入国時にデジタル入国カード(MDAC)の事前登録が義務化されています。ところが、偽サイトがクレジットカード情報の入力を求める手口が確認されています。入国時に手数料の支払いは一切不要です。カード情報を入力すると不正利用されるので、公式サイト以外は使わないでください。
5. その他の法律・規制
- 銃器・模造銃の持ち込み禁止 — モデルガン(おもちゃの銃)を持ち込んだ日本人が「模造銃砲類所持違反」で逮捕・有罪(罰金刑と拘留)になった事例あり
- たばこは全種類課税対象(電子たばこ・加熱式たばこ含む)
- 賭博・風俗営業にも厳しい規制あり
- 不法滞在の罰金制度:1日〜30日は30RM/日、31日〜60日は1,000RM、61日〜90日は2,000RM
- 撮影禁止エリア:博物館、寺院、モスク、軍事施設等
- 旅券の残存有効期間が6か月以上ないと入国拒否
6. 「高収入バイト」の勧誘に注意
「海外で高額収入」「儲かる仕事」といった闇バイトの誘い文句に乗ってマレーシアに渡航し、コンドミニアムの一室から日本向けに詐欺電話をかける「かけ子」として逮捕された日本人が確認されています。AI(人工知能)を用いたビデオ通話システムで偽の警察手帳を表示するなど、手口は巧妙化しています。
主な犯罪・トラブル
マレーシアで日本人が巻き込まれやすいトラブルをまとめます。詳しい手口と対策は各都市・トラブル別ページで解説予定です。
- ひったくり — バイク2人乗りが歩行者のバッグを奪う手口が最多。転倒して大怪我を負うケースも。ブキビンタン周辺で多発
- スリ(集団スリ) — エスカレーター降り口やエレベーター内で複数人に取り囲まれる手口。カードだけ抜き取って財布を戻す巧妙なパターンも
- 偽警察官スリ — 「薬物検査」と言って所持品を検査するふりをして財布の中身を抜く。制服を着ている場合もあり
- 置き引き — レストランやカフェで椅子の脇に置いたバッグが消える。ジャランアロー(屋台街)でも発生
- 「お金見せて詐欺」 — 「日本円を見せてほしい」と声をかけ、財布から現金を抜き取る
- 睡眠薬強盗 — 繁華街で声をかけられ、飲食物に睡眠薬を入れられて金品を奪われる
- タクシートラブル — 流しのタクシーでメーター不使用・ぼったくりは日常茶飯事。人気のない場所に連行して強盗や性的暴行に至る事案も
クアラルンプールのブキビンタンを歩いていたら、後ろから二人乗りのバイクが来て旅券の入ったバッグをひったくられました。引きずられて転倒し、大怪我をしました。
※実際の被害報告をもとに再構成した事例です(出典:在マレーシア日本国大使館 安全の手引き 令和7年版)
KLセントラル駅の近くで「警察だ、薬物検査だ」と言われて荷物を見せたら、財布からカードと現金を抜き取られていました。相手は私服で、あとで偽警官だとわかりました。
※実際の被害報告をもとに再構成した事例です(出典:在マレーシア日本国大使館 安全の手引き 令和7年版)
都市別の詳しい情報はこちら:
Travel Alert 03
無料クレカの"海外旅行保険の限界"は?
補償額をふやすウラ技も
医療費の実態
マレーシアの医療レベルは東南アジアの中では高く、クアラルンプール市内の主な私立病院は設備も診療レベルも日本と遜色ありません。海外旅行保険があればキャッシュレスで受診できる病院も多いです。
ただし、私立病院は高額。実際の保険金支払い事例はこんな感じです。
海外で実際に支払われた医療費の事例
出典:ソニー損保 海外旅行保険 トラブル事例
- 851万円
車両同乗中の衝突事故
十二指腸完全破裂・肝臓/腎臓挫傷・後腹膜内血腫/44日間入院・手術/医療搬送
- 352万円
言語障害の症状、硬膜下血腫
23日間入院・手術/医療搬送
- 444万円
路上で車にぶつかられ受傷
甲関節開放性脱臼骨折/7日間入院・手術/医療搬送
交通事故1件で800万円超。旅行中の怪我や急病でも数百万円単位の請求になり得ます。
主な感染症リスク
- デング熱 — 都市部でも多く発生。日中に活動する蚊が媒介し、雨季に患者が増加。重症化すると出血を伴い、死亡例もあり
- 狂犬病 — サラワク州で死亡例を含む症例が報告済み。発症すると致死率ほぼ100%。野良犬や野生動物に不用意に触らない
- 急性胃腸炎 — 屋台やストリートフードでの細菌・ウイルス感染。加熱調理されたものを選ぶのが基本
- ジカウイルス感染症 — デング熱と同じ蚊が媒介。妊娠中・妊娠予定の方は特に注意
- ポリオ — サバ州で2019年に27年ぶりの感染者。渡航予定者は追加接種を検討
水道水は東南アジアの中ではきれいなほうですが、飲み水には適していません。市販のミネラルウォーターを使ってください。
通信手段の確保
緊急時に大使館や家族に連絡が取れるよう、現地で使える通信手段を出発前に用意しておいてください。SIMカードの差し替えよりも、スマホ上で開通できるeSIMのほうが手間が少なく、到着直後から使えます。
各社eSIMの料金・対応国・速度の比較は海外eSIM比較ガイドにまとめています。
ホテルやカフェの無料Wi-Fiを使う場面では、通信を覗かれるリスクがあるのでVPNを挟んでおくと安心です。選び方は海外VPN比較にまとめています。
Travel Alert 04
知らずに大損している海外ATMの罠
DCCって知ってますか?
緊急時の連絡先
- 警察・救急車(固定電話):999
- 携帯電話からの緊急通報:112
- 消防:994
- クアラルンプール警察ホットライン:03-2115-9999
- 国家詐欺対応センター(NSRC)ホットライン:997(詐欺被害は3日以内の通報が重要)
- 在マレーシア日本国大使館:03-2177-2600
- 在ペナン日本国総領事館:04-226-3030
- 在コタキナバル領事事務所:088-254-169
Travel Alert 05
空港であなたを待ちうける5つの罠
準備はできていますか?
海外旅行保険の備え
マレーシアでは交通事故1件で851万円の医療費が発生した事例があります。マレーシアの私立病院は高額なので、治療費+救援者費用+携行品損害の3点をカバーする保険は最低限必要です。
クレジットカード付帯保険の合算やネット保険との組み合わせで備えるのが一般的です。具体的な補償額の比較は東南アジア旅行の保険ガイドにまとめています。