Travel Advisoryとは?意味と外務省危険レベルとの違いを比較
最終更新: 2026-04-17
「外務省の危険情報を調べた」と「米国務省のTravel Advisoryを調べた」、この2つが同じ国で違う答えを返すことがよくあります。
たとえばタイ。外務省だと首都バンコクはレベル指定なし、国境付近だけレベル3。でも米国務省はタイ全土をLevel 2(Exercise increased caution)としています。どっちが正しい?
結論から言うとどっちも正しい。基準がそもそも違うからです。
Travel Alert 01
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結論: どっちも4段階、だが切り口が別物
| 外務省(日本) | 米国務省 | |
|---|---|---|
| 段階数 | 4段階(+レベル0) | 4段階 |
| Level 1 | 十分注意してください | Exercise normal precautions |
| Level 2 | 不要不急の渡航は止めてください | Exercise increased caution |
| Level 3 | 渡航は止めてください(渡航中止勧告) | Reconsider travel |
| Level 4 | 退避してください(退避勧告) | Do not travel |
| 想定読者 | 日本人旅行者・在留邦人 | 米国市民 |
| 粒度 | 国内を地域別に細かく区切る | 原則「国全体」で1レベル |
| 追加情報 | スポット情報・広域情報で補完 | Risk Indicator(C/T/K/H等)で理由を明示 |
段階の数は同じですが、粒度の切り方が違うのが一番の差。外務省は「タイのこの県はL3、この県はL2、それ以外はレベルなし」という県単位の運用、米は「タイ全土L2」とまとめる運用です。
外務省レベル 0〜4 の定義
外務省の海外安全ホームページでは、レベルを4段階で定義しています(レベル0=指定なしを含めれば実質5区分)。
- レベル1: 十分注意してください — 渡航・滞在にあたり危険を避けるよう注意
- レベル2: 不要不急の渡航は止めてください — 渡航の必要性を慎重に検討
- レベル3: 渡航は止めてください(渡航中止勧告)
- レベル4: 退避してください。渡航は止めてください(退避勧告)
特徴は同じ国の中で複数レベルが混在すること。タイなら「カンボジア国境付近はレベル3・深南部はレベル3・それ以外はレベルなし」という具合で、県・郡単位で色分けされます。首都バンコクを含む観光エリアが「レベルなし」でも、別のエリアはレベル3、というのが普通にあります。
Travel Alert 02
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米Travel Advisory Level 1〜4 の定義
米国務省のTravel Advisoryは、国ごとに1つのレベルを付けるのが原則。
- Level 1: Exercise normal precautions — 通常の注意を払って渡航可
- Level 2: Exercise increased caution — 注意を強めて
- Level 3: Reconsider travel — 渡航を再考して
- Level 4: Do not travel — 渡航しないで
米の特徴はRisk Indicator(リスク記号)がレベルに付くこと。同じLevel 2でも、理由がC(犯罪)だけなのか、C+T+K+U(犯罪+テロ+誘拐+市民騒乱)セットなのかで意味がまるで違います。
記号は8種類。
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| C | Crime(犯罪) |
| T | Terrorism(テロ) |
| K | Kidnapping or Hostage Taking(誘拐・人質) |
| H | Health(保健・感染症) |
| U | Civil Unrest(市民騒乱・政情不安) |
| D | Wrongful Detention(不当拘束) |
| N | Natural Disaster(自然災害) |
| O | Other |
Dの「Wrongful Detention(不当拘束)」は米特有の項目で、米国市民が政治的な理由で拘束されるリスクのこと。中国・ロシア・イラン・北朝鮮などで頻繁に付きます。
早見表: 誰向け・何基準・更新頻度
| 外務省 | 米国務省 | |
|---|---|---|
| 誰向け | 日本人旅行者・在留邦人 | 米国市民 |
| 何を基準に | 邦人被害・日本大使館の情報網 | 米国市民の被害・米政府の情報網 |
| 粒度 | 国内を県・郡単位で色分け | 国全体で1レベル(一部地域注記あり) |
| 追加情報 | スポット情報(短期)・広域情報(広域横断) | Risk Indicator(C/T/K/H/U/D/N/O) |
| 更新頻度 | 随時発出・解除 | 国別に6〜12か月サイクル+随時 |
| 推奨アクション | たびレジ登録・在外公館連絡先確認 | STEP(米版たびレジ)登録 |
Travel Alert 03
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判定が食い違う国の代表例(2026年4月時点)
ここから先は、両者で判定がズレる国をソースから確認できたものだけピックアップ。米データは米国務省Travel Advisories一覧(2026年4月取得)、外務省データは各国ページ(本サイト集計)を参照。
タイ: 日本レベル指定なし vs 米L2
- 外務省: カンボジア国境50km以内(シーサケート県等)・深南部(ナラティワート県等)がレベル3、ソンクラー県の一部がレベル2、バンコク含む主要観光地はレベル指定なし
- 米: 全土 Level 2(U=市民騒乱、2025年7月)
タイは観光客が多いバンコク・プーケット・チェンマイがレベル指定なしなので、日本人目線ではかなり安全寄り。米はタイ全土をL2にしていますが、理由はUのみ(犯罪指定なし)。これは国境紛争の影響を全土に拡張して出している判定で、バンコク単体の治安認識は両者でほぼ一致しています。
フィリピン: 地域差を両者が認めるが総論で差
- 外務省: ミンダナオ一部がレベル3、パラワン南部・ミンダナオ一部がレベル2、マニラ首都圏含むそれ以外は全域レベル1
- 米: 全土 Level 2(U+C+K+T=市民騒乱+犯罪+誘拐+テロ、2025年5月)
フィリピンは外務省もレベル1を付けている時点で「観光地でも注意」が前提。米はさらに上のL2で、理由記号がU+C+K+Tの4点盛り。誘拐(K)が入っているのが米判定の特徴で、ミンダナオ武装勢力由来の警戒が全土に波及した形です。
インド: 日本レベル指定なし vs 米L2
- 外務省: ジャンム・カシミール準州、北東部の一部、対中国境地帯にレベル1〜3。デリー・ムンバイ・ゴア・アグラ・ジャイプール・コルカタ・チェンナイ・ベンガルールはレベル指定なし
- 米: 全土 Level 2(U+C+T+O、2025年6月)
インドは観光都市の大半が外務省レベル指定なし。米はL2で、さらにテロ(T)付き。カシミール周辺の扱いは両者で一致していますが、観光地の総論評価は米のほうが厳しい。
メキシコ: 州ごとに分かれる米 vs 全体像で語る日本
- 外務省: 特定州にレベル1〜3(サイトの集計上、詳細は本記事の範囲外)
- 米: 全体 Level 2(C+K+T、2025年8月) ※実際はstate-by-stateで州ごとにL1〜L4まで分かれる運用
メキシコは米のstate-by-state advisoryが有名で、観光地のカンクン(キンタナロー州)とL4指定のタマウリパス州を同列に語らない運用。日本の外務省も州別運用ですが、米のほうが「州ごとのリスク記号」まで細かく出ます。
イスラエル・西岸・ガザ: 両者とも厳しいが粒度差
- 米: Israel, The West Bank and Gaza 全体 Level 3(U+T+O、2026年2月)
- 外務省: 地域別にレベル2〜4(ガザ地区はレベル4、イスラエル領内でも地域でレベル差あり)
米はまとめてL3、日本は地域ごとにレベル分け。ガザ地区だけ見れば両者ともトップレベル警告ですが、テルアビブ単体の扱いは外務省のほうが「一部地域レベル2」など細かい。
中国: 米L2の主因は「D=不当拘束」
- 米: Level 2(O、2024年11月)※過去版はDが付いていた
- 外務省: 新疆ウイグル自治区・チベット自治区がレベル1、主要都市は指定なし
中国は米のDが外れた最新版が出ていて、O(その他)のみで継続中。外務省は主要都市をレベル指定なしとしつつ、反スパイ法による邦人拘束を警告するスポット情報で補っているのが実情です。米はレベルで、日本はスポット情報で。表現手段が違うだけで、「拘束リスクあり」は両者一致しています。
L4相当の一致: ロシア・ウクライナ・ミャンマー・シリア・イラン等
- 米L4: Russia, Ukraine, Burma (Myanmar), Lebanon, Iran, Iraq, Haiti, North Korea ほか
- 外務省レベル4: 基本的に同じ顔ぶれ
戦争・紛争・クーデター・国家規模の機能不全が起きている国は、米と日本でほぼ完全一致。観光目的で行く国ではないというのが共通見解です。
L1一致: 欧州北部・日本・台湾・シンガポール
- 米L1: Japan, Taiwan, Singapore, Switzerland, Australia, New Zealand, Canada, Iceland, Portugal, Ireland, Argentina ほか
- 外務省: これらは基本「レベル指定なし」
米L1=日本のレベル指定なし、と考えて差し支えないカテゴリ。日本・台湾・シンガポールが米からもL1指定という事実は、アジアで出国する日本人が行き先を選ぶ目安にもなります。
どっちを信じる?(日本人は外務省優先+米でダブルチェック)
日常的な渡航判断なら外務省が主、米がサブ。理由は3つ。
- 邦人被害の実績が反映される — タイ・韓国・インドネシアなど日本人被害が多い国は、外務省のスポット情報のほうが粒度細かい
- 在外公館ネットワークとの連動 — 現地で事件に巻き込まれた時、使うのは日本大使館・総領事館。情報源と救援網が一体化している
- たびレジとの連動 — 登録した国でスポット情報が発出されるとメールで飛んでくる
とはいえ米Travel Advisoryを見る価値も大きい。
- 外務省がレベル指定していない国の解像度が上がる(米は全国に必ず何らかのレベルを付ける)
- Risk Indicatorで警告の”理由”が分かる(C/T/K/Dの違い)
- 米国民の不当拘束情報が早い(中国・ロシア・イランの判断材料)
両方見て、判定が大きく違う国は理由を個別に確認。これが実務的な使い方。
Travel Alert 04
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英FCDOとの3点照合(軽く)
もう一段深く調べるなら、英FCDO(Foreign, Commonwealth & Development Office)のgov.uk/foreign-travel-adviceを追加するのが王道です。
英FCDOは旧植民地ネットワーク経由でアフリカ・中東・南アジアの情報が厚いのが特徴。米と日本が両方「L1/レベルなし」でも、英FCDOだけ”Advise against all but essential travel”を出している地域が存在します(特にサハラ以南アフリカ・中央アジア)。
3点照合の優先度は日本 > 米 > 英。普通の観光なら日本+米で十分、ややマイナーな国・紛争周辺国なら英まで。
次の差分記事で定点観測する予定
当サイトでは各国ページで外務省レベルを集計しつつ、今後は米Travel Advisoryとの差分ウォッチ記事も出す予定。国ごとに「外務省は動かず、米だけ3月に引き上げ」みたいな動きが起きた時、そこには個別の理由があります(テロ警戒・政情悪化・事件発生)。
両者のズレを定点観測することで、片方のソースだけでは見えないリスクが拾えるようになります。
Travel Alert 05
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よくある質問
外務省と米国務省、どっちを信じたらいい?
日本人旅行者なら外務省を主・米国務省を副にするのが実務的です。外務省は在外公館と邦人支援のネットワークが前提になっているので、日本人が実際に直面する事件・邦人被害の統計が色濃く反映されます。ただし外務省は「レベル表示なし」の国が多く、そこで米Travel Advisoryを見ると情報密度が上がります(例:日本は米から見るとLevel 1)。両方チェックして、片方だけが強めの警告を出していたら、その理由(テロ・誘拐・不当拘束など)を個別に確認するのがおすすめ。
なぜ両者で同じ国でも判定が違うの?
一番大きいのは「誰の安全を想定しているか」の違いです。米Travel Advisoryは米国市民が対象で、米国籍・米軍関係者が誘拐や不当拘束のターゲットになるリスク(中国・ロシアのL2以上の主因がこれ)を強く反映します。外務省は日本人旅行者・在留邦人が対象なので、邦人被害の実績が少ない国は「レベル指定なし」になりがち。同じ中国でも、米Level 2・外務省はレベル指定なし(新疆ウイグル・チベットのみレベル1)という差が出るのはこの構造。
米Travel AdvisoryのRisk Indicator(C/T/K/H/U/D/N/O)って何?
米のAdvisoryにはレベル以外に、警告の理由を示す8つの記号が付きます。C=犯罪、T=テロ、K=誘拐、H=保健、U=市民騒乱、D=不当拘束、N=自然災害、O=その他。同じLevel 2でも、指標がC単体なのか、C+K+Tセットなのかで意味がまるで違います。たとえばタイはL2のうちU(市民騒乱)のみ、フィリピンはU+C+K+Tの4点盛り。記号まで見ると判定の解像度が上がります。
更新頻度はどう違う?
米Travel Advisoryは国ごとに個別更新で、おおむね6〜12か月サイクル。事件発生時は随時差し替えます(2026年4月時点で最新が2026年3月、古いもので2024年後半)。外務省は随時発出・解除で、大きな政治変動や事件が起きると数日〜数週間で新しい「スポット情報」や「広域情報」が出ます。速報性はどちらも近い印象ですが、外務省のほうが「特定都市・特定イベント」への粒度が細かい。
英FCDOとの3点照合までやる必要ある?
バックパッカーや紛争周辺国に行くなら、やる価値があります。英国FCDO(Foreign, Commonwealth & Development Office)は米と違って旧植民地ネットワークが強く、アフリカ・中東・南アジアの情報が厚め。米と外務省が両方「レベルなし/L1」でも、英FCDOが「Advise against all travel」を出している地域はあります。逆に英FCDOが緩くても米と外務省が厳しいケースも。中東・アフリカ・コーカサス方面なら3点照合する癖をつけてください。