「北欧は治安がいい」というイメージが強いデンマークですが、外務省と在デンマーク日本国大使館のソースを読むとそのイメージはかなり修正が必要です。2024年の刑法犯認知件数は33万9,464件、2023年のスリは16,044件(前年比+3.5%)で日々40件以上発生しているペース。さらに2024年10月にはコペンハーゲン市内のイスラエル大使館付近で爆発事件、2025年9月にはコペンハーゲン空港が正体不明のドローンで約4時間閉鎖してフライトが大量にキャンセルされる事案も起きています。テロ脅威レベルはデンマーク政府が5段階中の4段階目「深刻」と評価。「比較的安全」と「多数発生」が同居している国、というのが現実です。
Travel Alert 01
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危険レベル
外務省の危険情報・感染症危険情報は2026年4月時点で全土に発出なし。ただし「レベルなし=安全」ではなく、スリ・置き引き、ギャング団抗争、テロ脅威、そして近年顕著なドローン・空港閉鎖事案がメインリスクです。
犯罪の全体像 --- スリ16,044件・詐欺59,194件
在デンマーク大使館「安全の手引き」(令和6年12月版)が引用するデンマーク統計局の2023年データはこうなっています。
| 犯罪種別 | 件数 | 前年比 |
|---|---|---|
| 刑法犯認知件数(合計) | 348,211件 | +10.3% |
| 殺人 | 48件 | -12.7% |
| 強盗 | 1,326件 | -5.7% |
| 強制性交等 | 1,732件 | -10.0% |
| スリ | 16,044件 | +3.5% |
| 居住建物への侵入盗 | 14,844件 | -0.8% |
| 薬物関連事犯 | 26,121件 | -6.3% |
| 詐欺 | 59,194件 | +2.4% |
スリと詐欺が前年比で増えているのがポイント。外務省の2024年集計では刑法犯認知件数は339,464件と若干減ったものの、観光客が遭いやすいスリ・置き引きと、近年急増したインターネット詐欺は高止まりしたままです。
デンマークは、ヨーロッパ諸国の中でも比較的安全な国というイメージをもたれていますが、強盗、窃盗、詐欺等の犯罪が多数発生しています。
外務省の安全対策基礎データの冒頭にある一文。「比較的安全」のあとに「多数発生」と続くのがデンマークです。
スリの典型エリア --- 空港・中央駅・ニューハウン・人魚姫像
外務省も大使館も、スリ・置き引きの多発エリアとして同じ場所を名指ししています。コペンハーゲン市内の空港、中央駅、ホテル、レストラン、観光地(ニューハウン、アマリエンボー宮殿、人魚姫像付近)。要するに観光客が必ず通る場所すべてです。
特にアジア系の観光客は多額の現金を持っているとして、ターゲットになりやすい傾向がありますので注意してください。
外務省はわざわざこの一文を入れています。日本人旅行者は標的にされやすい前提で動いた方がいい。
※実際の被害報告をもとに再構成した事例です(出典:外務省 安全対策基礎データ(デンマーク) 過去の被害事例より)
大使館「安全の手引き」が挙げる巧妙な手口は3パターン。
- 一人が話しかけるなど注意を引き、その隙に他の者が抜き取る
- 多人数で取り囲み、被害者を動けないようにして抜き取る
- 日本語で親しげに話しかけてきて、自然に抱きついてきながらその隙に抜き取る
3つ目は他のヨーロッパ諸国の手引きでもめったに書かれていない、デンマーク固有のパターン。日本語で話しかけられても警戒した方がいい。
コペンハーゲンの具体的な手口・エリアはコペンハーゲンの治安で詳しく扱います。
偽警官と偽政府機関電話 --- ヨーロッパ共通の詐欺手口
デンマークでもフランス・スペイン・ドイツと同じ偽警察官の手口が報告されています。
繁華街で警察官を名乗る者から職務質問を受けて所持品検査に応じたところ、財布から現金が抜かれていた。(類似事案:同様の手口で巧みにクレジットカードの暗証番号を聞き出され、多額の現金を引き出された)
暗証番号を聞き出されてATMで根こそぎ引き出されるパターンまである。本物の警察が路上で財布の中身を検査することはない。怪しいと思ったらその場を離れましょう。
電話・メール経由の詐欺も大使館が注意喚起しています。
デンマーク警察など政府機関の職員や欧州刑事警察機構(Europol)職員等を騙った不審な電話やメールが届く事案が発生しています。これらの不審な電話やメールでは「あなたの口座がマネーロンダリングに使われた疑いがある。」などと言って、氏名、IDカード番号、口座番号、MitIDの情報等を聞き出そうとするケース、或いは、自動音声のメッセージが流れて、プッシュボタン形式で応答を求めるケースなどがあります。
MitIDはデンマークの国民ID。日本人観光客が直接巻き込まれる頻度は低いものの、長期滞在者・留学生は要警戒。さらに2025年5月には大使館が住居の賃貸借契約詐欺でも注意喚起を出しており、留学・長期滞在の物件契約は信頼できる業者経由でないとデポジットを持ち逃げされる事例があります。
Travel Alert 02
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ノアブロ・クリスチャニア --- ギャング抗争と武装売人の発砲
外務省と大使館がいちばん危険な地区として名指ししているのがノアブロ(Nørrebro)地区とクリスチャニア地区。観光ガイドでは「自由都市クリスチャニア」「ヒップなノアブロ」と紹介されることが多いですが、ソースの書きぶりは違います。
コペンハーゲン市内のクラブ、街頭等で大麻等の違法薬物の密売が行われている場所もあり、警察による取締りに対して武装した売人が銃を発砲した事例もあります。
コペンハーゲン市内のノアブロ(Nørrebro)地区、クリスチャニア地区等では、ギャング団の抗争と見られる発砲事件や刺傷事件が発生しました。
銃器や刃物を使用した強盗事件も発生しています。特にコペンハーゲン中央駅周辺、NØRREBRO地区などは、治安が悪く強盗の多い地区ですので、特に注意を払いましょう。
クリスチャニアは2024年に大麻の路上販売「プッシャーストリート」が住民投票を経て自主閉鎖されましたが、密売そのものが消えたわけではなく、街頭・クラブに分散しただけ。興味本位で訪れて巻き込まれるのがいちばん危ない。
大麻は違法 --- 「自由」のイメージは観光客向けではない
クリスチャニアの大麻文化が有名ですが、デンマーク全土で大麻は違法です。
デンマークでは、大麻を吸うことは違法です。
薬物犯罪対策のため、当局では捜査員の増強、麻薬専用警察犬の導入等により取締りを強化しています。販売、製造、密輸等の罪は10年以下の懲役、加重すべき事情がある場合は15年以下の懲役となります。
中東・東南アジアからの旅行者は抜き打ちで荷物検査を受けるケースもある。所持はもちろん、購入の現場に居合わせるだけでも面倒に巻き込まれる可能性があります。
テロ脅威レベル4「深刻」 --- 2024年・2025年の連続事案
デンマーク政府はテロ脅威レベルを5段階中の4段階目「深刻」と評価しています。これはフランス・ドイツ・ベルギーと同程度の水準。
直近の事案を時系列で整理するとこうです。
- 2015年2月: コペンハーゲン市内で表現の自由討論会会場とユダヤ教礼拝施設を狙った銃撃テロ
- 2019年8月: コペンハーゲン市内の国税庁舎が爆破される事件
- 2022年7月: コペンハーゲン市郊外のショッピングセンターで男が銃を乱射、多数の死傷者
- 2023年7月〜: 極右活動家によるコーラン焼却事案が多発、イスラム過激派がデンマークへのテロを呼びかけ
- 2023年12月: テロ攻撃準備容疑で複数名逮捕
- 2024年5月: ユダヤ人女性宅で発生した放火事件でテロ法による起訴
- 2024年10月2日: コペンハーゲン市内のイスラエル大使館付近(Hellerup地区)で手榴弾を使用した爆破事件、2箇所で発生
- 2025年6月: ガザ関連の大規模デモ集会、コペンハーゲン国会広場
- 2025年10月: イスラエル権益・ユダヤ人を標的としたテロ事案で警戒強化要請
特に2024年10月のイスラエル大使館付近爆破は実際に手榴弾が使われた事案。負傷者は出なかったものの、観光地である中心部から地下鉄で15分ほどのHellerup地区が現場でした。シナゴーグ、イスラエル関連施設、ユダヤ系レストランにはなるべく近寄らない、デモの現場には遭遇したらすぐ離れる、というのが大使館からの基本注意。
ユダヤ教の祭日前後(スッコート、ハヌカー、過越祭)は標的にされやすい時期として大使館が名指ししています。
ドローン事案 --- コペンハーゲン空港が4時間閉鎖
2025年9月、北欧(隣のスウェーデン・ノルウェーでも警戒態勢)で発生中の正体不明ドローン事案がデンマークを直撃しました。大使館の注意喚起によると:
9月22日夜間から23日にかけて複数の正体不明のドローンがコペンハーゲン空港を飛行したことにより空港が約4時間閉鎖され、多くの航空便が迂回又はキャンセルとなった事案が発生しました。また、24日夜間から25日にかけても正体不明のドローンがユトランド半島内の4つの空港(オールボー空港・エスビャウ空港・スキュドストロップ空港・ソナボー空港)を飛行したことにより、オールボー空港では空港が一時閉鎖となった事案が発生しました。
デンマーク政府は「重要インフラに対する深刻な攻撃」と表現していて、警戒態勢を維持中。デンマーク行きのフライトを予約する際は、空港閉鎖や遅延の可能性を踏まえて、海外旅行保険の航空機遅延費用特約の有無を確認しておくと安心です。フライトトラブル全般の備えは海外旅行のフライトトラブル対策も参考に。
Travel Alert 03
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自転車レーンの罠 --- バス降車時に轢かれる
コペンハーゲンは世界一の自転車都市と呼ばれていて、市民の半数以上が自転車通勤しています。観光客が事故に遭いやすいのがバスやタクシーから降りるときの自転車専用レーン横断。
多くの道路では、自転車専用レーンが歩道と車道の間に設けられていることから、バスやタクシーから降車する際には、安全のため、自転車の有無をよく確認する必要があります。
歩道と車道のあいだに自転車レーンがあるという構造は日本人にはなじみがなく、降車してそのまま歩道に向かおうとして自転車に轢かれる事故が発生しています。バスを降りたら一度立ち止まる、これだけで事故率は大きく変わります。
2023年の交通人身事故は重傷1,680人、軽症936人、死亡162人。負傷者は減少傾向ですが、人身事故の件数は増えています。
医療制度 --- ホームドクター制と緊急番号「1813」
デンマークの医療制度は日本とかなり違うので、観光客でも基本構造を知っておく必要があります。
医療費は原則として税金で賄われ、住民にとっては無料。ただし観光客は対象外で全額自己負担です。さらに住民でも「ホームドクター制」が原則で、緊急時以外はあらかじめ登録した家庭医(GP)を最初に受診し、必要に応じて専門医・病院に紹介状を書いてもらう仕組みです。
観光客が知っておくべき緊急番号はこれ。
| 番号 | 用途 |
|---|---|
| 112 | 警察・救急・消防(24時間) |
| 1813 | 首都圏地域の緊急医療診察科(24時間) |
| 7015-0700 | シェラン地域 |
| 7015-0300 | 北ユトランド地域 |
| 7011-3131 | 南ユトランド地域 |
| 7011-0707 | 南デンマーク地域 |
| 6075-4070 | Private Doctor(8:00〜24:00・有料) |
倒れた・大ケガした場合は112で救急車。それ以外で病院にかかりたい首都圏在住者は1813にまず電話して看護師の判断を仰ぐ流れ。コペンハーゲンの急患窓口は事前電話なしでは受け付けてもらえないことがあるので、観光客もまず1813に連絡するのが無難です。
家庭用医薬品の一部を除き、医薬分業で医師の処方箋がないと薬を買えません。風邪薬・頭痛薬・胃腸薬の常備薬は日本から持参するのがおすすめ。さらにEU以外からの医薬品輸入は事前許可が必要なので、家族に郵送してもらおうとしても届かないケースがあります。
医療費の実態 --- 同地域(西欧)の参考
デンマーク独立の保険会社支払事例は限られますが、近隣の西欧諸国で実際に起きた高額ケースを参考までに紹介します。これはソニー損保とSBI損保が公表しているフランス・ドイツの事例(北欧と医療費水準が近い)。
| 内容 | 国 | 金額 |
|---|---|---|
| バス乗車時に段差を踏みはずし大腿骨頚部骨折、医師看護師付添い医療搬送 | フランス | 1,746万円 |
| 腹痛・呼吸困難、腹膜炎・敗血症性ショック、医師付添い医療搬送 | フランス | 1,610万円 |
| 胸の痛み・吐き気、急性心筋梗塞、医師看護師付添い医療搬送 | フランス | 854万円 |
| ホテルバスルームで転倒、大腿骨頚部骨折、看護師付添い医療搬送 | フランス | 860万円 |
| ホテル浴室で転倒、橈骨神経・橈骨動脈断裂、看護師付添い医療搬送 | ドイツ | 639万円 |
| 発熱・腹痛、憩室炎、看護師付添い医療搬送 | ドイツ | 540万円 |
出典: ソニー損保 / SBI損保 海外旅行保険事故データ(ジェイアイ傷害火災データ)。「同地域(西欧)の参考」としてご覧ください。デンマークの医療水準・物価はフランス・ドイツと同等以上で、家族の駆けつけ費用や医療搬送が加わると数百万円〜千数百万円のオーダーになります。
クレジットカード付帯保険の治療・救援費用上限では足りない可能性が高いので、出発前に必ず補償内容を確認しましょう。
EES(出入国システム)が2025年10月から段階導入
2025年10月12日から、シェンゲン圏への入国時に顔写真と指紋の電子登録が段階的に導入されています。デンマークもシェンゲン加盟国(29カ国)の一つ。入国審査に時間がかかる可能性があるので、空港での乗り継ぎ時間には余裕を持っておきましょう。
Travel Alert 04
知らずに大損している海外ATMの罠
DCCって知ってますか?
安全対策まとめ --- 出発前にやっておくこと
- 荷物は体の前に。空港・中央駅・列車内ではリュックは前抱え、ショルダーバッグは体の前
- ホテル朝食でも貴重品から離れない。「2〜3秒目を離した間にバッグが消える」事例が外務省のリストに載っている
- 「警察」を名乗る人物に財布を渡さない。本物は路上で所持品検査をしない
- 日本語で親しげに話しかけてくる人物を警戒。デンマーク固有の手口として大使館が明記
- ノアブロ・クリスチャニア地区は深夜に立ち入らない。ギャング抗争・武装売人の発砲事例あり
- イスラエル/ユダヤ系施設・デモ現場には近寄らない。2024年10月の爆破事案以降、警戒継続
- 空港閉鎖・フライト遅延に備える。2025年9月のドローン事案以降、いつ再発してもおかしくない
- 海外旅行保険に加入。EU外からの医薬品輸入は事前許可制で、自分で薬を取り寄せられない
通信手段の確保
コペンハーゲン市内の交通アプリ、地図、緊急通報、すべてスマホ前提です。出発前に現地SIMかeSIMを準備しておくのが安心。選び方は海外eSIM比較を参照。
緊急時の連絡先
| 機関 | 電話番号 |
|---|---|
| 警察・救急・消防 | 112 |
| 首都圏緊急医療(24時間) | 1813 |
| 在デンマーク日本国大使館 | +45-3311-3344 |
在デンマーク日本国大使館の住所は Havneholmen 25, 9F, 1561 Copenhagen V。コペンハーゲン中央駅から徒歩圏内。来館時はパスポートを持参してください。
Travel Alert 05
空港であなたを待ちうける5つの罠
準備はできていますか?
海外旅行保険の備え
デンマークは医療費がEU諸国の中でも高水準で、近隣のフランスでは大腿骨頚部骨折で1,746万円、腹膜炎で1,610万円という事例があります。クレジットカード付帯保険の治療・救援費用上限ではまず足りないので、出発前に必ず補償内容を確認しましょう。詳しくはヨーロッパの海外旅行保険ガイドへ。
主要都市の治安情報
出典
- 外務省 海外安全ホームページ「デンマーク 危険・スポット・広域情報」
- 外務省 安全対策基礎データ(デンマーク)
- 外務省 テロ・誘拐情勢(デンマーク)
- 在デンマーク日本国大使館「安全の手引き(デンマーク)」令和6年12月版
- 在デンマーク日本国大使館「デンマークの医療制度」
- 在デンマーク日本国大使館「デンマーク国内の空港におけるドローン飛行事案」令和7年9月26日
- 在デンマーク日本国大使館「イスラエル大使館付近における爆発事案の発生」令和6年10月2日
- 在デンマーク日本国大使館「イスラエル権益・ユダヤ人を標的としたテロ事案発生」令和7年10月3日
- ソニー損保 海外旅行保険 高額医療費事例(フランス・ドイツ)
- SBI損保 海外旅行保険 高額医療費事例(フランス・ドイツ)