ウズベキスタンはサマルカンドやブハラの青いタイル建築が目当てで行く人が多い国。中央アジアの中ではテロ事件の発生もなく、治安は比較的平穏とされています。ただし2024年に窃盗発生件数が前年の約3倍(14,851件→48,375件)に跳ね上がったというのが、外務省と大使館が口を揃えて警告している現実。さらに滞在登録を入国72時間以内にしないと国外退去や高額罰金、国際免許では運転不可、外貨持出は入国時申告額が上限といった、手続きで足元をすくわれるトラブルが多めです。「観光地としては安定」と「制度の落とし穴」が同居しているのがウズベキスタン。
Travel Alert 01
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危険レベル --- タシケントはレベル1、国境地帯はレベル2
外務省の危険情報は2025年4月30日更新で、首都タシケント市を含む大部分がレベル1(十分注意してください)。一方で次の地域はレベル2(不要不急の渡航は止めてください)となっています。
- アフガニスタンとの国境付近で立ち入りが制限されている地域
- ナマンガン州、アンディジャン州、フェルガナ州のタジキスタン・キルギス国境沿い山岳地帯(キルギス領に囲まれた飛び地ソフ・シャヒーマルダンを含む)
タジキスタン・キルギス国境地帯は2025年に「近年治安が平穏」としてレベル3からレベル2に引き下げられた経緯がある場所。引き下げ=安全になったわけではなく、相変わらず観光で立ち寄る理由はないエリアです。フェルガナ盆地の飛び地は地図上タシケントから近く見えるけれど、行政上は別格扱いなので、ルートに含めないようにしましょう。
2024年に窃盗が3倍 --- 「治安は平穏」と「窃盗急増」が同居
在ウズベキスタン日本国大使館の「安全の手引き」(2025年5月版)と外務省の安全対策基礎データに、ウズベキスタンの最新犯罪統計が出ています。
| 犯罪種別 | 2023年 | 2024年 |
|---|---|---|
| 総発生件数 | 104,096件 | 132,298件 |
| 殺人(未遂含む) | 363件 | 364件 |
| 傷害 | 1,083件 | 965件 |
| 窃盗 | 14,851件 | 48,375件 |
| 強盗 | 762件 | 680件 |
| 麻薬犯罪 | 6,719件 | 9,134件 |
窃盗が前年の約3倍に増えているのが目立ちます。大使館の手引きはこの背景を「急激な物価上昇や経済格差の拡大に伴い、生活困窮者による犯罪」「アフガニスタン情勢やロシア情勢に伴う国内治安の不安定化」と分析している。コロナ禍中の2020年と比較すると、犯罪認知件数は213%増。
過去5年間において当館が把握している邦人被害に係る犯罪は以下のとおりです。2022年:窃盗1件(置き引き)、2023年:届出なし、2024年:届出なし
日本人が巻き込まれた事件はほぼ届出なしレベル。ただし「日本人が巻き込まれない=日本人が安全」ではなく、駅やバザール等の人混みでスリ・ひったくりが多発する状況自体は変わりません。油断するなと書かれている国として読む必要があります。
偽警官と滞在登録 --- パスポート提示は「正しく」応じる
ウズベキスタンでは身分証明書の携帯が義務付けられていて、警察官から路上でパスポートの提示を求められることが普通にあります。問題は本物の警察か偽警察か見分けがつきにくいこと。
外務省の安全対策基礎データはこう書いている。
ウズベキスタンでは身分証明書の携帯が義務付けられています。外出中に警察官からパスポートの提示を求められる可能性がありますので、必ず携行してください。また、旅行者の方は滞在登録証も携行するようにしてください。
携行を怠ると、本物の警察に止められた場合に罰金や手続き上の問題になる。一方で、財布やカードまで一緒に渡してしまうと偽警官に抜かれるリスクもある。パスポートと滞在登録証だけ手に持って見せ、相手に渡さないのが基本的な防衛線です。
そして滞在登録は3日(72時間)ルール。
ウズベキスタンに滞在する際は、入国から3日以内に滞在登録をする必要があります。ホテル等の施設に宿泊する場合、この手続きは宿泊先のホテルが代行して行います。複数の施設に泊まる場合も、それぞれで滞在登録をしなければいけません。
ホテルが代行してくれるので、チェックイン時に「滞在登録証(registration slip)をください」と必ず言うこと。出国まで保管が必要で、空港の出国審査で提示を求められることがあります。夜行列車で移動した日は登録がされないので、その日の切符は捨てずにパスポートと一緒に保管。知人宅に泊まる場合は家のオーナー(賃貸なら大家)が登録する義務があり、これを怠ると国外退去や高額罰金の対象です。
Travel Alert 02
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税関申告 --- 外貨と骨董品で足をすくわれない
タシケントの空港で旅行者が引っかかるのが税関申告。ルールは外務省・大使館サイトの両方に詳しく書かれています。
- 入国時: レートで1億スムを超える外貨持込、1,000米ドル相当以上の貴金属持込は申告必要(陸路は500米ドル)
- 出国時: 入国時の申告額以上の外貨持出は禁止。50年以上前の民芸品・骨董・絨毯・スザニの持出は禁止
- 2025年11月から: 税関申告書のオンライン作成・提出が可能に。空港のinfo kioskでQR発行、税関職員に提示する形
サマルカンドやブハラの市場で買った絨毯やスザニ(伝統刺繍)が「50年以上前のもの」と判定されると出国時に没収される可能性があります。気に入って買うときは販売店に「輸出可能(exportable)」と書かれた領収書を出してもらうこと。これは税関で必ず聞かれます。
ウズベキスタン税関当局では、入国者に対して無作為に税関検査を行っています。申告基準を超過していることが判明した場合、所持金品を没収されることがあるほか、悪質性が高いと判断された場合は身柄を拘束される可能性もあります。
「申告し忘れた」では済まない国です。
タクシーは流し禁止 --- 配車アプリで運転手の素性を残す
タシケントでもサマルカンドでも、タクシーは流しを拾わず配車アプリが現地大使館の推奨。Yandex Go(中央アジアで普及)、My Taxi、Maxim あたりが定番です。
タクシーを使用する際は、犯罪被害防止の観点からも、運転手の素性が明確で、安全性の高い配車アプリを使用するようにしてください。
流しのタクシー(一般車を含むいわゆる白タク含む)は、ぼったくり・遠回り・運転中に行先を変えられるといったトラブルが起きうるエリア。配車アプリなら運転手と車両ナンバーが履歴に残るので、トラブルになっても追跡できます。現金より配車アプリのカード決済にしておくと、降車時の金額交渉トラブルもなくなります。
道路事情も注意点。
道路事情が悪く、現地のドライバーは交通規則を守らないことが多いため、横断歩道の歩行中や運転の際には注意が必要です。
横断歩道の信号で停まらない車、強引な車線変更は珍しくありません。横断時は左右を必ず確認しましょう。なおジュネーブ条約非加盟国なので国際運転免許証は無効。レンタカーで自分で運転するという選択肢自体がないと思っておくのが安全です。
マナーと法律 --- イスラム圏のSNS言動
ウズベキスタンはスンニ派イスラムが多数の国で、敬虔な信者が多い土地柄。観光客が地雷を踏みやすいのは服装とSNS。
個人差はありますが、敬虔なイスラム教徒が大勢いますので、公共の場での言動、イスラム教徒を冒涜する行為などは厳に慎んでください。また、モスクへの立ち入る場合は肌を露出した服装は避けてください。
サマルカンドのレギスタン広場やブハラのモスクに入るときは、女性はスカーフ・長袖・くるぶしまで隠れるパンツorスカート、男性も短パン・タンクトップは避けるのが無難。露出の多い服装で入場拒否される事例は普通に起きます。
そしてSNS。
必要以上に華美な服装や装飾品を身につける、目立つ車に乗る、予定をSNSに書き込む、公共の場(レストラン、バー等)で、政情や宗教、一般的習慣に関する不満や批判を口にする等の行為は、目立つのみならず、トラブルに巻き込まれる原因となります。
旅程の事前投稿(「明日からサマルカンド3泊」など)は、強盗や置き引きのターゲットになる行為として大使館が名指しで警告しているレベル。投稿は帰国後にまとめてが安全です。
麻薬犯罪 --- 若者中心に5年で2.4倍
薬物事犯は2020年の3,775件から2024年の9,134件まで5年で約2.4倍に拡大しています。「若者の間で薬物犯罪の拡大が目立った」と手引きが書いている通り、ナイトクラブやイベントで誘われるリスクは想定しておくべき水準です。ウズベキスタンは中央アジアでも薬物刑法の運用が厳しい部類で、所持・使用だけで長期実刑の可能性があります。海外渡航中の薬物トラブルは外国人だからといって温情はないので、日本以上に近寄らない判断が必要。
Travel Alert 03
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テロ・誘拐 --- 2005年以降の認定事件はゼロ、ただし潜在脅威あり
外務省のテロ・誘拐情勢は次のように整理しています。
ウズベキスタンでは、近年、政府がテロと認定した事件の発生はなく、国内の治安は比較的安定しています。
最後の大きな事件は2005年のアンディジャン騒擾。2004年までは「ウズベキスタン・イスラム運動(IMU)」によるタシケント市内・ブハラ州での連続自爆テロや警察官襲撃が発生していましたが、その後は治安機関の取締強化で大規模事件は途絶えています。
ただし「カティーバ・アル・タウヒード・ワル・ジハード(KTJ)」「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)」によるウズベク人へのリクルート活動や、シリア・アフガニスタンに渡った戦闘員の存在が報告されており、潜在的脅威はゼロではありません。日本人を含む外国人が標的になった誘拐事件の発生報告はないものの、若い女性・子供の誘拐事案は国内で報じられています。
中央アジア・ロシア圏を周遊する場合は、各国の危険情報も外務省サイトで必ずチェックしておきましょう(カザフスタン・キルギス・ジョージアなどは別途A1危険情報のページが用意されています)。
医療水準は低い --- 緊急移送前提で保険を組む
ウズベキスタンで一番見落とされやすいのが医療事情。外務省の安全対策基礎データはハッキリ書いています。
ウズベキスタンの医療水準は低く、十分な治療を受けることは期待できません。持病のある方はもちろん、健康な方であっても風邪薬や胃腸薬等の医薬品を持参することをおすすめします。
そして核心はここ。
日本人が安心して治療を受けられる医療施設は少ないため、病気や事故などで緊急に高度な治療を受ける必要が生じた場合には、日本や西欧諸国に移送する必要があります。出発前に、緊急移送サービスが付帯されている、十分な補償内容の海外旅行保険に加入することをおすすめします。
「移送する必要がある」と外務省が明記している国は実はそう多くない。タシケントには日本人駐在員が利用するインターナショナルクリニックや救急医療センター(通称:第16番病院)がありますが、重症や手術が必要なケースは結局イスタンブール、ドバイ、モスクワ、東京への医療搬送になるのが実態です。
外務省「世界の医療事情」が挙げるかかりやすい病気・怪我は、下痢症、上気道炎、ウイルス性肝炎、エキノコックス症、リーシュマニア症、結核、クリミア・コンゴ熱、狂犬病、有害虫による刺咬傷、熱中症・日焼け、交通事故。結核とクリミア・コンゴ熱、狂犬病は日本人旅行者が普段意識しない感染症で、田舎部・牧畜地帯では特に注意が必要です。
医療費の参考事例 --- 中央アジア・ロシア圏
ウズベキスタン名指しの保険金支払い事例は、ソニー損保・ジェイアイ・SBI損保のいずれにも見当たりません。中央アジア独立国でD系の独立アンカーがある国はほぼなく、感覚を掴むには近隣のロシア圏・東欧の参考事例で代替する必要があります。
同地域の参考として、ロシア・東欧では1回の入院で数百万円規模の支払事例が報告されています(ジェイアイ「海外旅行保険 支払い事例」、損保ジャパン「off!」)。緊急移送が加わると一気に1,000万円超になることもあるので、補償額が「治療・救援費用 無制限」のプランを選んでおくのが基本ライン。タシケントから東京へのチャーター機医療搬送は、距離だけでも東南アジアからより重い金額になります。
入国・査証 --- 短期30日はビザ免除、延長不可
日本国籍者は、30日未満の短期滞在の場合、査証は免除されます。なお、30日未満の滞在の予定で査証を取得せずにウズベキスタンに入国した場合の滞在期間の延長はできず、ウズベキスタン国内で査証を取得することもできません。
30日を1日でも超える予定なら、必ず日本でe-Visaを取ってから入国すること。現地で延長は効きません。
Travel Alert 04
知らずに大損している海外ATMの罠
DCCって知ってますか?
通信手段の確保
タシケントでもサマルカンドでも、配車アプリ・地図・翻訳・大使館連絡にスマホは必須。電子税関申告のQR発行も空港でモバイル通信があったほうが圧倒的に楽です。中央アジアは空港のSIMカウンター待ち時間が長いので、出発前にeSIMを入れておくのが現実的。選び方は海外eSIM比較を参照。
緊急時の連絡先
| 機関 | 電話番号 |
|---|---|
| 警察 | 102 |
| 観光警察(英語可) | +998-90-010-9242 |
| 救急車 | 103 |
| 火災 | 101 |
| ガス | 104 |
| 災害レスキュー | 1050 |
| 統合通報サービス(英語可) | 112 |
| 在ウズベキスタン日本国大使館 代表 | +998-78-120-8060/8061/8062/8063 |
| 大使館 緊急携帯 | +998-91-785-0673 |
大使館はタシケントのYashnabad地区(Sadyk Azimov Str., 1-28)。観光警察は英語が通じるので、被害届を警察(102)に出す前にここに相談するとスムーズな場合があります。
主要都市の治安詳細
- タシケント --- 駅・バザールのスリ多発、偽警官、配車アプリ必須、主要医療機関リスト
Travel Alert 05
空港であなたを待ちうける5つの罠
準備はできていますか?
海外旅行保険の備え
ウズベキスタンは医療水準上、重症ケースは西欧・日本への移送前提で保険を組む必要があります。クレジットカード付帯保険の補償額(多くは200〜300万円)では、医療搬送が加わった瞬間に上限を超えます。出発前に補償内容を必ず確認し、足りないなら追加加入するのが安全です。詳しくは中央アジアの海外旅行保険ガイドへ。中央アジアの隣国の治安傾向はカザフスタン・キルギス・タジキスタンも合わせて確認するとよいでしょう。