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スイスの治安 駅のスリ多発と登山救助1,000万円超【2026】

スイスの治安や危険エリア、トラブル、医療費を、外務省と在スイス日本国大使館の情報からわかりやすくまとめました。

UPDATED · 2026.04.27 KAIGAI-RISK

スイスは「世界で最も安全な国」のイメージで語られがち。でも在ベルン大使館の安全の手引き(2025年11月更新)は冒頭から 「スイスは、一般犯罪の発生率が日本に比べ高い状況です」 と書いています。2022年の犯罪件数は45万8,549件で前年比+10%、コロナ前の水準に戻り、その半数以上が窃盗・強盗・詐欺。さらにアルプスの登山・スキーで救急ヘリ(REGA)に搬送されると、自己負担で1,000万円を超えるケースもある。「治安がいい」と「医療費が世界最高水準」がセットになった国です。

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危険レベル

外務省の危険情報・感染症危険情報・スポット情報はいずれもスイス全土で発出なし(2026年4月時点)。ただし広域情報として、欧州全域に向けたテロ等注意喚起(2026C012)、中東情勢の緊迫化に伴う注意喚起(2026C019/C020/C021)、闇バイトに関する注意喚起(2025C056)が出ています。

犯罪の全体像 --- 「治安が良い」と「日本より犯罪率高い」が同居

在ベルン大使館の手引きと外務省データを合わせると、スイスの治安はこんな実像です。

指標数値・状況
2022年犯罪件数458,549件(前年比+10%、コロナ前水準に回復)
内訳半数以上が窃盗・車両盗難・強盗・詐欺・恐喝などの財産犯罪
発生率の高い州(順)チューリッヒ、ベルン、ヴォー、ジュネーブ、バーゼル・シュタット
邦人被害多発スポットチューリッヒ/ルツェルン/バーゼル/ジュネーブ/ベルンの空港・駅・列車内・ホテル

スイスは、一般犯罪の発生率が日本に比べ高い状況です。発生率の高い州からチューリッヒ州、ベルン州、ヴォー州、ジュネーブ州バーゼル・シュタット準州となっています。

ポイントは犯罪の犯行形態。スイスの駅には改札口がないので誰でもホームや列車内に入れる。犯人は列車の出発間際に盗んでドアから降りて逃げるので、被害者は走り出した列車内でやっと気づく――これがスイス独特の手口です。デジタル犯罪と電気自転車盗難も急増中。

詐欺・置き引き・スリの典型はチューリッヒの詐欺記事に整理しています。

スイスの「お手伝いスリ」--- 親切に見えて連携犯行

スイスの安全の手引きはスリの手口を5パターンに分類しています。読者が出発前に最低限覚えるべきはこの分類です。

  1. 電車等、乗車時のお手伝いスリ --- 「網棚に載せてあげる」「大きな荷物を運んであげる」と声をかけ、運ぶふりで持ち逃げ
  2. ぶつかりスリ --- 路面電車・バスで体を不自然に寄せ、降りた後に財布が消えている
  3. 押しのけスリ --- 駅ホームから窓を叩いて気を引き、車内のもう1人がバッグを抜く
  4. ご案内スリ --- 道を尋ねるふり・写真を撮ろうとする隙にバッグのファスナーを開けられる
  5. ホテルでの置き引き --- ロビー・朝食ビュッフェ・レストランでバッグや部屋の鍵を盗まれる

犯人グループには若い女性が加わっていることもあり、親切を装い、一目では犯罪者かどうか見分けがつかない場合が多いので注意が必要です。

「親切な人が話しかけてくる=身構える」が基本姿勢になります。同じ手口はフランスのスリ事情イタリアのスリ事情でも共通。

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マナー・法律 --- 違法薬物と「収入連動」罰金

スイスの法律で旅行者が引っかかりやすいのは2点。

違法薬物: スイスは麻薬政策が先進的(ヘロイン処方プログラム等)と語られますが、観光客に許される話ではありません。

違法薬物の持込みは禁止されています。最近、若者を中心として違法薬物が出回り、社会問題の一つとなっています。持込み、所持、使用した違反者は、罰金、懲役等厳しく罰せられます。

主要駅前の公園が「No-Go-Areas(麻薬・犯罪の巣窟とされる地域)」として手引きに名指しされています。深夜の都市部の裏通り・公園は近づかないこと。

収入連動罰金(Day-fine): スイスでは交通違反が悪質だと収入に応じた高額罰金を課されます。スピード違反で月収相当額が消える、というケースも。レンタカー利用時は速度規制と高速道路ビニェット(年間ステッカー)の貼付を必ず確認しましょう。

テロ情勢 --- 単独犯型がチューリッヒで再発

スイスは欧州中央という立地から、テロ脅威も無視できないレベルです。

  • 2020年9月: ヴォー州モルジュでトルコ系スイス人男性がレストラン客を刺殺
  • 2020年11月: ティチーノ州ルガーノのデパートでスイス人女性が客2人を刺傷
  • 2024年3月: チューリッヒで15歳の少年が50歳のユダヤ教徒男性を刺傷

スイス連邦情報庁によると、現在、欧州ではテロのリスクが高まっており、欧州の中央に位置するスイスにおいても、今後テロ事件等が発生する可能性を排除できませんので、引き続き注意が必要です。

外国人を標的にした誘拐事件は近年確認されていませんが、駅・観光施設・コンサート会場・ユダヤ系施設は標的になりうる場所として意識しておきましょう。テロ警戒はフランスドイツベルギーでも同レベル。

医療費の実態 --- ハイキングで1,269万円、心筋梗塞で463万円

スイスは世界最高水準の医療費。観光客は健康保険に入れないので全額自己負担+前払い要求が基本です。保険会社の支払い実績を見るとこうなっています。

内容入院日数金額
バスルームで転倒、腰椎破裂骨折、12日入院、看護師付添医療搬送12日1,269万円
歩行中に転倒、橈骨遠位端・大腿骨頚部骨折、18日入院・手術18日1,183万円
発熱・難聴で受診、大葉性肺炎・中耳炎、家族駆けつけ・医師付添医療搬送18日701万円
スキー場リフトの床が外れ3メートル落下、大腿骨骨折、ヘリ搬送10日700万円
ハイキング中に転倒しヘリ搬送、脛骨・腓骨骨折、看護師付添医療搬送13日688万円
トレッキング中に転倒、ヘリ搬送、橈骨頭・膝蓋骨骨折5日659万円
胸の痛み・吐き気で受診、心筋梗塞、医師看護師付添医療搬送8日463万円
展望台で足を滑らせ転倒、足首骨折8日413万円

最高額1,269万円はバスルームでの転倒です。アルプス登山どころか、ホテルの浴室で滑っただけでこの金額。ハイキング・スキーでヘリ搬送が加わると700万円前後がベースライン、医療搬送(チャーター機・看護師付き添い)まで行くと1,000万円超が現実的な水準です。

スイスでは、山岳事故等における行方不明者救助費用や緊急患者輸送費用は自己負担です。その金額は非常に高額であり、一千万円を優に超えるケースもあります。

外務省ははっきり「1,000万円超」と書いています。クレジットカード付帯保険の救援費用上限(多くは300〜500万円)では、ヘリ救助1回でショートする計算です。

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REGA(スイス・エアレスキュー) --- 山に行くなら必ず

スイスの山岳救助はREGAという民間の航空救助隊が担います。会員になっておけば、状況によりREGAが救助費用を肩代わりしてくれる仕組みです。

海外旅行保険に加入していなかったために、病気やケガに伴う治療や緊急移送などで多額の出費を余儀なくされたケースが少なくありません。登山による遭難や怪我・入院に備え、海外旅行保険の加入とともにREGA(スイス・エアレスキュー)に加入し、入山前には山小屋やホテルに登山ルートや緊急連絡先等を伝えておくことをお勧めします。

ハイキング・スキー・登山を予定する人は出発前にREGA会員登録(英語可)をしておこう。海外旅行保険に「登山・ハイキング中の事故が補償対象か」を必ず確認することも忘れずに。山岳特約が付かないと、救助・搬送費用が補償外になる契約もあります。

ダニ媒介脳炎(FSME)--- 標高2,000m以下なら要対策

ダニ媒介脳炎は、ウイルスを保有するマダニに刺咬されることによって感染する疾患です。中央ヨーロッパからロシアにかけて発生しており、スイスでは、毎年100~250件ほどの感染例が報告されています。感染すると発熱、頭痛、意識障害などが起こり、ごくまれですが死に至ることもあります。

流行期は春〜秋。標高2,000m以下の山道や湿地帯では長袖・長ズボン、虫除け、帰宅後の体チェックで対応。長期滞在やトレッキング派はワクチン接種も検討。同じ中欧のオーストリアでは邦人死亡例もあるリスクです。

EES/ETIAS --- 入国手続きが2026年から変わる

スイスはシェンゲン協定加盟国(29カ国)。日本パスポートは90日以内のビザ免除ですが、入国手続きが順次変わります。

  • EES(入国・出国システム): 2024年11月開始済み。指紋採取・顔写真撮影が必要、パスポートに入国スタンプは押されなくなる
  • ETIAS(事前渡航認証): 2025年導入予定。事前にオンライン申請が必要

通関では現金10,000スイスフラン以上は申告義務、医薬品は個人服用1か月分まで。

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通信手段の確保

チューリッヒ空港でも山岳地帯でも、地図・翻訳・REGA緊急通報のためにスマホは必須。スイスSIMかeSIMを出発前に入れておこう。選び方は海外eSIM比較を参照。

緊急時の連絡先

機関電話番号
警察117
消防118
救急(医療)144
REGA(スイス・エアレスキュー)1414
道路救援140
EU共通緊急番号112
在スイス日本国大使館(ベルン)+41-(0)31-300-2222
スイス鉄道交通警察0800 117 117

REGAの1414は山岳・スキーで事故った時の生命線。電波が届かない時はスマホで「REGA」アプリを入れておくと衛星対応できる。

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海外旅行保険の備え

スイスはバスルームで転倒しただけで1,269万円、ヘリ救助込みなら桁が変わる国。クレジットカード付帯保険だけで足りる確率は低いと考えたほうが安全です。詳しくはヨーロッパの海外旅行保険ガイドへ。

主要都市の治安情報

出典