タイはバックパッカーの定番で、物価も安く、ごはんもうまくて観光地も多い。だからこそ「日本と同じ感覚で歩ける」と油断しがちです。ところが外務省の統計を見ると、2025年だけで邦人のスリ・置き引き被害が128件、旅券紛失・盗難は353件。トラブルのほとんどは「観光客だとバレた瞬間」に起きてる、というのが実情です。タイは在外公館の援護件数も毎年トップで、GW・連休に渡航者が集中する時期の傾向はGW海外旅行で起きやすいトラブルにまとめています。
このページではタイ旅行の前に最低限知っておきたい話を、治安の全体像→絶対NGな法律→代表的なトラブル→医療費、の順でまとめます。一個でも知らないまま現地に行くとキツイ項目があるので、ざっと目を通してから出発してほしいです。
Travel Alert 01
海外の無料WiFiには危険が潜んでいる
あなたのアクセス、丸見えです
タイの治安の全体像
危険レベル
外務省によれば、タイの大部分は危険情報の指定がありません。一方で、以下の地域には危険レベルが出されています(2025年7月26日時点)。
- カンボジアとの国境付近(シーサケート県・スリン県・ブリラム県・ウボンラチャタニ県・サケーオ県・チャンタブリ県・トラート県のカンボジア国境から50km以内):レベル3(渡航中止勧告)
- 2025年7月、タイ・カンボジア両国軍の軍事衝突が発生したことを受けた措置です。
- タイ深南部(ナラティワート県・ヤラー県・パッタニー県、ソンクラー県のジャナ郡・テーパー郡・サバヨーイ郡):レベル3
- 分離主義武装勢力による襲撃・爆発事件が継続的に発生しています。
- ソンクラー県の上記以外の地域:レベル2(不要不急の渡航中止)
バンコクをはじめとする主要観光地(チェンマイ、プーケット、パタヤ、サムイ島など)には危険レベルの指定はありません。ただし「指定がない=安全」ではない点には注意が必要です。
犯罪統計
タイ警察の2024年統計によれば、
- 殺人事件(未遂含む):4,692件
- 強制性交等事件:1,895件
- 盗難事件等:35,382件
- 銃器・爆発物関連事案:24,457人検挙
- 薬物犯罪事案:254,629人検挙
タイにおける凶悪事件の発生率は、日本と比べて非常に高い水準で推移しています。薬物・銃器の氾濫が背景にあると指摘されています。世界の中での相対位置はGPI 2025の解説、観光地と国全体の体感差は体感治安と統計のズレも合わせて読むと位置づけしやすいです。
マナー・法律・NG行動 ★旅行前に必ず確認
1. 王室への不敬罪(最も注意すべき法律)
タイ国民の国王・王族に対する尊敬の念は深く、刑法上「国王、王妃、皇太子、摂政に対する罪」として、いわゆる不敬罪が定められています。王室を侮辱した場合、3年以上15年以下の禁錮に処せられるおそれがあるほか、社会的にも厳しい批判を受けます。SNS投稿や発言、紙幣(王室の肖像入り)の扱いにも注意が必要です。王室侮辱は日本人が一番踏み抜きやすい法律の筆頭格で、他の要注意法律とあわせて 日本人が逮捕されやすい海外の法律10選 にまとめてあります。条文の射程・SNS投稿の扱い・仏像/僧侶タブーまで掘り下げたタイの不敬罪と王室・仏教タブーも出発前に。
2. 違法薬物(最高刑は死刑)
タイでは違法薬物の所持・持込み・持出しが厳しく取り締まられており、最高刑は死刑です。ゲストハウスやナイトクラブでは警察によるおとり捜査も行われており、所持・使用で逮捕されタイ国内の刑務所で長期服役中の日本人もいます。
なお、2022年6月に大麻が規制薬物リストから除外され、医療目的や厳格な成分制限を設けた製品は流通しています。しかし娯楽目的での使用は引き続き禁止されており、公共の場での吸引も禁止されています。日本に大麻を持ち込めば日本の大麻取締法による処罰対象となります。
3. 電子タバコ(持込・所持・吸引すべて禁止)
タイでは電子タバコ(加熱式タバコを含む)の持込み・所持・吸引がすべて禁止されています。違反した場合、最高で10年の懲役または50万バーツの罰金が科されます。日本から普段使っている加熱式タバコを持ち込むこと自体が違法ですので、出発前に必ずスーツケースから取り除いてください。空港没収・罰金ゾーンの各国比較は 海外の罰金マップ にまとめてあります。
4. 仏教関係のタブー
- 仏像は倒壊したものであっても神聖なものとされ、国外への持出しは禁止(無断持出しは罰せられる)
- 僧侶(男性)は女性に触れたり触れられたりすることが禁じられています
- 寺院や儀式を侮辱・妨害する行為は厳しく罰せられます
5. 身体的タブー
- 頭部は精霊が宿る場所として神聖視されています。子供であっても頭をなでるとトラブルになります
- 足は不浄とされており、足裏を他人に向けて座る・足で人を指す仕草は避ける
6. 持込み禁制品・通関
米・植物・果物などの持込みは規制されています。持出しでは、象牙などのワシントン条約規制品や仏像は輸出証明が必要です。チャトチャック市場などで購入した昆虫・は虫類・小動物の国外持出しは森林動物保護法違反となるおそれがあります。
Travel Alert 02
海外の決済で3.5%も搾取されている現実
あなたは知っていますか?
主な犯罪・トラブル
外務省によれば、バンコクを中心に日本人の被害は窃盗・詐欺が多数を占めています。詳細な手口・対策は各都市・トラブル別ページにまとめています。
- スリ・置き引き・声かけによる現金抜取り — 「お金を見せてほしい」と声をかけられ、やりとりの間に現金やクレジットカードを抜き取られる被害が継続発生
- タクシー・トゥクトゥクの詐欺 — 運転手から声をかけられ、安易に話に乗ったことによる詐欺被害が多発
- カラオケ店等のぼったくり — 夜の繁華街で発生
- 男女トラブル — 「タイ人に宝石をプレゼント後に連絡が取れない」「結婚を前提に家・土地・車購入の資金を渡し逃げられた」事例
- ジェットスキー等のレンタル料金トラブル — 返却時に「船体を傷付けた」と高額な修理代金を請求される事例
テロ・誘拐情勢
外務省「タイ テロ・誘拐情勢」(2024年12月31日更新)によれば、タイには次のような脅威があります。
1. 深南部の分離主義武装勢力
タイ深南部(ナラティワート県・ヤラー県・パッタニー県・ソンクラー県東部)は、イスラム教徒が住民の多数を占めており、イスラム独立国家の建設を標榜する分離主義武装勢力等が、警察や国軍関連施設等を標的とする襲撃や爆弾テロ事件を繰り返しています。タイ政府は2013年以降、武装勢力との和平交渉に取り組んでいますが、2024年中も多くの銃撃事件・爆弾テロ事件が発生しています。
2. バンコク・主要観光地での過去のテロ事案
首都バンコクや主要観光地でも、過去にこういう事件が起きています。
- 2015年8月:首都バンコクにおいて爆発事件が発生し、20人が死亡、日本人1人を含む多数が負傷
- 2016年8月:観光地であるプーケットやフアヒン等中南部7県で連続爆発事件が発生
- 2019年8月:首都バンコクで連続爆発・放火事件が発生し、タイ人2人が負傷
タイ政府は、2015年8月のバンコク爆発事件について、ウイグル人を主体とする組織犯罪集団による報復目的の犯行とみています。また、2024年11月には、イスラエル国家安全保障会議が東南アジア、特にタイにおけるイスラエル権益を狙ったテロ活動の脅威の高まりについて注意を促す勧告を行っています。
3. ミャンマー国境付近の犯罪組織による拘束事案
さらに2024年12月にはこんな事案も起きてます。
日本在住の高校生がタイでの仕事を持ちかけられ、タイに渡航したところ、ミャンマー国境付近の少数民族武装勢力支配地域内にある中国系犯罪組織の拠点に連れられ、特殊詐欺のかけ子をさせられるという事案が発生しています。
外務省は、観光施設周辺・イベント会場・レストラン・ホテル・ショッピングモール・公共交通機関・宗教関連施設等は、テロの標的となりやすく常に注意が必要としています。
Travel Alert 03
無料クレカの"海外旅行保険の限界"は?
補償額をふやすウラ技も
医療費の実態
外務省は「海外旅行保険に加入していなかったために、病気やケガに伴う治療や緊急移送などで多額の出費を余儀なくされたケースが多くある」と明記し、十分な補償内容の海外旅行保険への加入を推奨しています。
バンコクの医療水準と費用構造
外務省「世界の医療事情(タイ)」によれば、バンコクの代表的な私立病院(Bangkok Hospital、BNH Hospital、Bumrungrad International Hospital、Samitivej Sukhumvit Hospitalなど)の医療水準は高く、日本の病院と比較して遜色はないとされています。日本人医師や日本語通訳が常駐し、日本人専用の窓口を設けている病院も複数あります。一方で私立病院はすべて自由診療で、診察料・治療費・入院費・手術費用が高額になることが多く、保証金が必要となるケースもあります。
タイでの実際の高額医療事故事例
実際の事例として、損保ジャパン off! の公開データにはタイで次のような保険金支払いケースがあります。
- パラセイリング着地失敗で顎骨折・肺損傷(13日間入院) — 治療費 US$17,321、移送費 US$8,260
- 階段の踏外しで大腿骨骨折(15日間入院) — 治療費 US$3,078、移送費 US$9,328
さらに、ソニー損保の公開する「タイでの高額医療費用事故」(出典:ジェイアイ傷害火災保険株式会社 海外旅行保険事故データ 2015年度〜2017年度)には、次のような事例が掲載されています。
海外で実際に支払われた医療費の事例
出典:ソニー損保「タイでの高額医療費用事故」(ジェイアイ傷害火災保険 2015〜2017年度)
- 939万円
オートバイ事故で頭部外傷
頭蓋骨骨折・硬膜外血腫・鎖骨骨折/28日間入院・手術/家族駆けつけ・医療搬送
- 796万円
空港で胸の痛み、大動脈解離
10日間入院・手術/家族駆けつけ・医療搬送
- 672万円
スピードボート乗船中の腰部強打
腰椎圧迫骨折/7日間入院・手術/家族駆けつけ
- 491万円
車両のタイヤパンクで衝突事故
前頭骨陥没骨折・硬膜外血腫・橈骨尺骨骨折/22日間入院・手術/家族駆けつけ・医療搬送
- 401万円
飛行機内で眩暈、脳梗塞
6日間入院/医療搬送
- 393万円
頭痛が数ヶ月続き受診、髄膜腫
10日間入院・手術
- 327万円
スピードボートで転倒、腰部強打
大腿骨頸部骨折/8日間入院・手術/医療搬送
- 309万円
腰痛・足の痺れ、腰椎すべり症
8日間入院・手術/家族駆けつけ
- 300万円
喉の痛みで受診、甲状腺癌・食道癌
18日間入院・手術
数日〜数十日の入院でも300万円〜900万円規模になり得るのが、タイでの実際の医療費の姿です。特にオートバイ事故・スピードボートでの腰椎損傷など、観光中のアクティビティで発生する事故は、家族の駆けつけ費用+医師・看護師付き添いの医療搬送で総額が大きく膨らみます。
海外旅行保険の備え
タイで実際に発生している事故・盗難の事例を踏まえると、治療費+救援者費用+携行品損害の3点をカバーする保険は最低限必要です。
年会費無料〜実質無料のクレジットカード付帯保険を2枚合算するだけでも、疾病治療570万円までカバーできます。具体的な補償額の組み合わせと「どこまで足りるのか」のライン引きは、東南アジア旅行の保険ガイドにまとめています。
Travel Alert 04
知らずに大損している海外ATMの罠
DCCって知ってますか?
通信手段の確保
緊急時に大使館や家族に連絡が取れるよう、現地で使える通信手段を出発前に用意しておくことが重要です。SIMカードを差し替えるよりも、出発前にスマートフォン上で開通できるeSIMが手間が少なく、当日の空港トラブルを避けられます。
各社eSIMの料金・対応国・速度の比較は海外eSIM比較ガイドにまとめています。
eSIMで自前の回線を持っていても、ホテルやカフェの無料Wi-Fiを使う場面はあります。公共Wi-Fiは同じネットワーク内から通信を覗かれるリスクがあるので、VPNを挟んでおくと安心です。選び方は海外VPN比較にまとめています。
都市別の治安情報
タイ国内の主要都市の治安情報は、それぞれの都市ページにまとめています。
Travel Alert 05
空港であなたを待ちうける5つの罠
準備はできていますか?
緊急時の連絡先
外務省「タイ 安全対策基礎データ」および在タイ日本国大使館の公開情報に基づきます。
警察・救急
- 警察:191(救急車要請も可能)
- 観光警察:1155(英語可)
- 消防署:199
在外公館
在タイ日本国大使館
- 住所:177 Witthayu Road, Lumphini, Pathum Wan, Bangkok 10330 Thailand
- 電話:02-696-3000(代表)/02-207-8500
- 領事部(邦人援護):02-207-8502 / 02-696-3002
- ホームページ:https://www.th.emb-japan.go.jp/itpr_ja/index.html
在チェンマイ日本国総領事館
- 住所:Airport Business Park 90 Mahidol Road, T. Haiya, A. Muang, Chiang Mai 50100 Thailand
- 電話:052-012500
土曜日・日曜日は休館です。在タイ日本国大使館・在チェンマイ日本国総領事館は、邦人向けに「安全の手引き」(令和8年版)を公開しており、犯罪事例・交通事情・緊急時対処マニュアルがまとめられています。出発前に一読しておくと、現地での判断スピードが上がります。
主要都市の治安情報
出典
- 外務省「タイ 危険・スポット・広域情報」(2025年7月26日更新)
- 外務省「タイ 安全対策基礎データ」(2025年5月14日更新)
- 外務省「タイ テロ・誘拐情勢」(2024年12月31日更新)
- 外務省「違法薬物(大麻等)の密輸に関する注意喚起」(2025年4月30日)
- 外務省「特殊詐欺事件に関する注意喚起(その3)」(2025年2月20日)
- 外務省「世界の医療事情(タイ)」(令和7年8月21日更新)
- 在タイ日本国大使館
- 在タイ日本国大使館・在チェンマイ日本国総領事館「安全の手引き」(令和8年版)
- 損保ジャパン off! アジア事故事例
- ソニー損保「タイでの高額医療費用事故」(ジェイアイ傷害火災 2015〜2017年度データ)