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東ティモールの治安 格闘技集団の抗争と刃物襲撃が散発【2026】

東ティモールの治安や危険エリア、トラブル、医療費を、外務省と在東ティモール日本国大使館の情報からわかりやすくまとめました。

UPDATED · 2026.04.23 KAIGAI-RISK

東ティモール民主共和国(Timor-Leste)は、インドネシア・バリ島の東隣、ティモール島の東半分を国土とする2002年独立のまだ若い国。人口約130万人、首都ディリ(約28万人)、公用語はテトゥン語とポルトガル語、通貨は米ドル。観光で訪れる日本人は年間数千人規模と少なく、「ASEAN加盟を目指す最後のフロンティア」として一部のバックパッカーとダイバーの間で知られる存在です。

外務省の危険情報は全土レベル1(十分注意してください)。2006年の騒擾事件、2008年の大統領等襲撃事件以降、大規模な政治騒擾は起きていません。ただ「安全な国」とは言い切れない現実があって、在東ティモール日本国大使館の「安全の手引き」はマーシャル・アーツ・グループ(複数の一般格闘技集団)の抗争夜間の刃物事案を繰り返し注意喚起しています。

この記事は「それでも行く必要がある人」向けに、東ティモール渡航前に押さえておきたい話を外務省と在東ティモール日本国大使館のデータからまとめます。

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危険レベルと治安の全体像

外務省「危険情報」(2025年時点)は東ティモール全土にレベル1を発出。個別のスポット情報は出ておらず、広域情報としてデング熱・狂犬病・違法薬物密輸・特殊詐欺などが全地域共通で表示されます。世界全体での位置づけはGPI 2025の解説も参考に。

治安の全体像は外務省がこう書いてます。

東ティモールにおいては、2006年の騒じょう事件、2008年の武装グループによる大統領等襲撃事件以降、こうした大規模騒じょう事案は発生していません。(中略)しかしながら、格闘技集団(マーシャル・アーツ・グループ)による抗争(投石行為、刃物や凶器を使用した乱闘事件)が散発しているほか、依然として殺人、強盗等の凶悪犯罪が発生していますので、最新の治安情報を入手するなど十分注意する必要があります。

大使館「安全の手引き」(2024年2月版)の補足もほぼ同じ方向。

犯罪面では、社会的格差の拡大、そして未就労の若者が増加する中で、若者達のグループやマーシャル・アーツ・グループ(複数の一般格闘技集団)の対立・抗争事件が散発している他、暴行、窃盗、空き巣等の一般犯罪は一定の頻度で発生しています。

若年人口の増加と若年失業が底流にあって、そこから出てくる暴力事案が治安上の最大の火種、という構造です。

マーシャルアーツ・グループ抗争(東ティモール固有の最重要論点)

東ティモールを語るうえで外せないのがこの話。大使館は2023年以降、この件名で複数回の注意喚起PDFを出してます。

ディリ市内においてマーシャルアーツ・グループ間の暴力事件が、以前から引き続き発生しています。

「マーシャルアーツ」とは武道・格闘技のこと。東ティモールではこれが組織化された若者集団の名称になっていて、グループ間の縄張り争いが投石・刃物・凶器を使った乱闘に発展します。2023年5月には、大使館が「ディリ市内で発生している暴力事件について」というタイトルで死者を伴う抗争事案の注意喚起を出してます。

2023年にディリ市内を中心に、マーシャルアーツ・グループ(複数の一般格闘技集団)の対立・抗争事件が散発しており、投石行為や刃物・凶器を使用した乱闘が発生。外国人も被害に遭っている事例がある。

外国人も被害に遭っているというのがポイント。大使館は夜間に不審者や群衆を見かけたら速やかにその場を離れるよう繰り返し書いています。詳細な対処はディリ市記事とディリのスリ・窃盗・車上荒らしに。

犯罪の主なパターン(邦人被害の実例あり)

外務省「安全対策基礎データ」が挙げる邦人関連の犯罪パターンは5つ。

(1)オートバイに乗った者によるゆすり、たかり行為 オートバイに乗った二人組が、運転中の車両を停車させ、接触したなどと言いがかりをつけ、修理費用を要求する事案が発生しています。……オートバイに乗った者による刃物を使用した事件が夜間に頻発していますので、夜間の外出にあたっては特に注意してください。

「接触した」と言いがかりをつけて修理費用を要求する、典型的なたかり行為が夜間に刃物事件とセットで起きている。車両を停めさせられた時点でかなり不利な状況なので、安易に降車しない・明るい場所まで移動してから対応が外務省の指針です。

(2)子供による猥褻行為 ビーチロード沿いなどにおいて、地元の子供たちから猥褻行為を受けることがあります。相手が子供だからと安心せず、毅然とした態度をとることが肝要です。また、露出の多い服装や単独行動、路地や裏通り等暗く見通しの悪い場所の通行は極力避けてください。

ビーチロード(Avenida de Portugal)はディリの海沿いの代表的観光ロード。相手が子供でも毅然と対応という書き方が珍しい論点です。

(3)車上荒らし レストランでの食事や町中での買い物、海辺でのマリンレジャーの目的で路上駐車をした際、車上荒らしや車両へのいたずら等の被害例が報告されています。

(4)ホテル客室内での貴重品の盗難被害 ホテル客室内での盗難被害が発生しています。鍵のかかるホテルの客室内であっても安心せず、金品や貴重品はセーフティーボックスに保管するなどの注意が必要です。

(5)外国人宅を狙った窃盗目的の家宅侵入被害 夜間、就寝中に何者かに侵入されると、生命に関わる事件へと発展しかねません。

車上荒らし・ホテル室内盗難・家宅侵入の3パターンが、観光客と在留邦人の両方を対象にして発生している。詳しい手口と対策はディリのスリ・窃盗・車上荒らしにまとめています。

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通貨は米ドル、旧札は使えない

意外な落とし穴が通貨事情。

東ティモールの使用通貨は米ドルです。日本円から米ドルへの換金は現地では行えないため、入国前にあらかじめ米ドル現金を用意しておく必要があります。なお、旧米ドル紙幣(白黒の10ドル、20ドル、50ドル)及び2006年以前発行の100ドル札は使用できないため、注意が必要です。クレジットカードによる支払いは一般的ではなく、一部のホテルのみで使用可能です。

日本円から米ドルへの換金が現地でできない、というのが第一のハードル。日本出国前に米ドル現金を準備しておかないと詰みます。加えて旧札は受け取ってもらえない(白黒の10/20/50ドル、2006年以前発行の100ドル)。銀行で両替するときも新しい紙幣を指定して受け取ったほうが安全です。

クレジットカードはホテルの一部でしか使えず、基本的に現金経済。大使館も補強してます。

一部の新しいホテルではクレジットカードが使用できるようになりましたが、未だ現金での支払いが一般的です。クレジットカードは停電や通信状況により使用できない場合がありますので、現金でも支払えるよう準備しておくことが必要です。

加えて外貨規制。5,000米ドル相当額以上の外貨持込は税関申告、持出上限も5,000米ドル相当額まで。

ビザ・入国(到着ビザ30米ドル)

短期滞在目的の場合は、空港到着時に査証(Visa On Arrival)を取得することが可能です(手数料は30米ドル)。滞在期間は入国審査の際に入国審査官から付与される期間(最大30日まで)です。 なお、入国の際、旅券の有効残存期間は6か月以上ある必要があります。

到着ビザ30米ドル・最大30日が標準ルート。パスポート残存期間6か月以上は事前に要確認。ビザ料の30米ドルは現地通貨で払えないので、米ドル現金を小額面で準備しておくのが必須です(100ドル札しかないとお釣りが出ない可能性)。

医療事情(現地で完結しない、バリ/シンガポール/ダーウィン搬送前提)

東ティモール渡航で最もお金のリスクが大きいのはここ。外務省「世界の医療事情」(令和6年10月1日)から。

現地の医療機関は十分な設備が整っていません。また医薬品が不足している上に医療レベルも低く、邦人が安心して受診できるレベルにはありません。憲法の規定により、東ティモール人の医療費は民間医療機関におけるものを除いて無料ですが、外国人の医療費は原則すべて自費負担です。医療水準が低いため、検査や治療のために日本またはシンガポール、インドネシア(バリ島デンパサール)、オーストラリア(ダーウィン)等、国外へ行く必要が生じることもまれではありません。国外への移送費や医療費は高額となるため、渡航にあたっては高額の移送費用や医療費をカバーしている海外旅行保険に加入することを強くお勧めします。

重い症状が出たら現地では完結しない、というのが外務省の前提。搬送先はバリ島デンパサール・シンガポール・ダーウィン(豪)が定番で、これらはすべて航空便での国外搬送になります。搬送先のバリ自体の医療・治安事情はバリ島の治安と危険情報に。

加えてダイバー向けの重要論点。

スキューバダイビングでの事故にも注意が必要です。当地には減圧症の治療を行う施設(高気圧酸素治療施設)はありません。減圧症の場合、気圧が低くなる航空機での国外搬送もできません。

減圧症(ベンズ)は航空機搬送が使えない。東ティモールは世界屈指のダイビングスポット(アタウロ島・ジャコ島)として知られていますが、いちばん怖い事故は国外搬送という逃げ道も使えないのが現実です。ダイビング保険だけでなく、ダイブプロファイルの安全側運用(深度・時間・浮上速度)が何より優先。

参考金額(近隣インドネシアの借用)

東ティモール単独の高額治療事例は、各保険会社の公開データ上(2026年4月時点)で確認できませんでした。日本人渡航数が少ないためです。ただ同地域の参考として、外務省が搬送先として明記しているインドネシア(バリ島)の事例を損保ジャパン off!の公開データから引用します。

  • インドネシア(バリ島): ダイビング送迎車が横転で骨折、プライベートジェット緊急移送で689万円
  • インドネシア(バリ島): バイク事故で頭部外傷、医師付添で国際医療搬送

出典:損保ジャパン off! アジア支払事例

東ティモールの場合、最初から国外搬送(バリ・シンガポール・ダーウィン)が選択肢に入る国なので、搬送費+現地治療費+搬送先の治療費が重なります。国外緊急移送費を含む医療補償1億円クラスの保険は、ここでは「余裕で入る」ではなく「入らないと詰む」水準の話です。

デング熱・感染症(年間通じて流行地)

外務省「世界の医療事情」から。

東ティモールはデング熱等の蚊が媒介する感染症の流行地であり、年間を通じて罹患の危険性が伴うため、防蚊対策が必要です。また、様々な経口感染症があり、飲み物や食事には十分注意が必要です。

大使館も2023年5月に注意喚起PDFを出してます。

東ティモールにおいてデング熱が国内で流行しており在留邦人も罹患しております。

デング熱は年間を通じて危険、特に雨季(1〜3月)に患者数のピークが来ます。ワクチンも特効薬もないので防蚊対策(DEET入り虫除け・長袖長ズボン・蚊帳)が唯一の予防策。マラリアは2018年以降少数で推移していますが、ゼロではありません。

ワクチンを含む医薬品の入手が困難なため、渡航前にA型肝炎・B型肝炎・破傷風・日本脳炎・狂犬病・腸チフスの予防接種を済ませておくのが基本です。詳細はディリの感染症・医療トラブルに。

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交通事情(運転マナー劣悪、現地保険なし)

東ティモールは運転マナーが悪く、無理な追い越し、割り込み、急停車、脇見運転、信号無視等が頻繁にみられます。また、近年、ディリ市内を走る自動車、オートバイが増加しており、交通規則を遵守しない運転手による危険運転・交通事故が多発しているので注意が必要です。現地人の多くは保険に加入しておらず、補償は期待できません。

現地人の多くが無保険、というのが東ティモール特有のリスク。事故の相手方から賠償を得られる前提で行動できません。レンタカー・バイクで事故を起こした場合も、示談交渉が複雑になりがち。移動は料金メーター付き青タクシーが現実解で、流しの黄色タクシーは料金トラブル・夜間強盗の報告があります。詳細はディリのタクシー・交通トラブルに。

デモ・集会(政府機関・大使館周辺)

デモや、その他の大規模集会は暴徒化する可能性があり、治安上何らかの異常に気づいた場合には、即座にその場を離れることが重要です。デモ、集会は政府関係庁舎、各国大使館付近、タシトル地域付近等で見られることがあります。

タシトル地域(ディリ市内西部)は政府機関と大使館が集中するエリア。デモ・集会は暴徒化リスクがあるので、群衆を見たら即座に離れるのが原則です。

テロ・誘拐情勢

東ティモール国内では、イスラム過激派をはじめ国内外のテロ組織の存在及び動向は確認されておらず、また、明確に外国人をターゲットにした誘拐事件も発生していません。しかし、2021年10月には、首都ディリにおいて子供の誘拐未遂事件が発生しており当国でも誘拐事件発生の可能性があり、日常生活の中で十分な安全対策が必要です。

外国人標的のテロ・誘拐は現時点で発生なし。ただし2021年に子供の誘拐未遂事件が発生しているので、家族連れ渡航時は子供から目を離さないのが基本です。

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東ティモールの都市別情報

東ティモールで観光・駐在の中心となっているのは首都ディリ。アタウロ島・ジャコ島などのダイビングスポットへのアクセスもディリ経由が一般的です。

緊急時の連絡先

  • 警察(PNTL):112(オペレーションセンター)
  • 消防・救急:115(繋がらないことが多い)
  • 在東ティモール日本国大使館(ディリ市):+670-332-3131(代表)/ +670-7723-1127(夜間・休日)

公的救急(115)は繋がらないことが多いため、事前に在住邦人コミュニティの民間救急情報を確認しておくのが現実的です。国外搬送は保険会社のアシスタンスデスク経由が定番ルート。

通信

東ティモールは大手事業者(Telkomcel、Timor Telecom)のLTEがディリ周辺で繋がります。ただ山間部や離島(アタウロ等)では途切れることも多く、到着直後から使える海外eSIMの併用が現実的です。選び方は海外eSIM比較に。

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海外旅行保険の備え

東ティモールは重症なら国外搬送が前提、しかも搬送先がバリ・シンガポール・ダーウィンと距離が長い国。クレカ付帯の疾病治療費だけでは搬送費で溶ける可能性があります。渡航前に東南アジアの海外旅行保険比較で補償内容(特に国外緊急移送費)をチェックしておくのがおすすめです。

主要都市の治安情報

出典