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メキシコの治安 殺人・誘拐・昏睡強盗が日常化【2026】

メキシコの治安や危険エリア、トラブル、医療費を、外務省と在メキシコ日本国大使館の情報からわかりやすくまとめました。

UPDATED · 2026.04.23 KAIGAI-RISK

ピラミッド遺跡、セノーテ、カリブ海のビーチ、タコス・モーレ・テキーラ。メキシコは食と文化と歴史で世界トップクラスの観光資源を持つ国です。ただ外務省と在メキシコ日本国大使館の注意喚起を並べると、2025年の殺人件数は20,677件で日本の約19倍誘拐被害届出件数は459件(実際の発生はこの十数倍と推測)、グアナファト州とケレタロ州を結ぶ高速道路45Dで車両強盗が昼夜問わず発生首絞め強盗・ケチャップ詐欺・昏睡強盗の事例が大使館の被害届に毎年並ぶフットボール中の膝靭帯損傷で2日入院・手術356万円(SBI損保)、といった話が一次ソースにそのまま残っています。

このページではメキシコ渡航前に押さえておきたい話を、外務省と大使館のデータだけを使ってまとめます。

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危険レベルとメキシコの基本構造

外務省はメキシコ全土に州ごとに異なる危険レベルを発出しています(2026年4月8日改訂)。観光で行く可能性が高い場所は基本レベル1ですが、引き上げ・継続が複数あります。

●タマウリパス州、ハリスコ州トマトラン市とチャパラ湖等を含む南部地域 レベル2:不要不急の渡航は止めてください。《引上げ》 ●ゲレロ州チルパンシンゴ市及びその周辺地域 レベル3:渡航は止めてください。(渡航中止勧告)《継続》 ●グアナファト州セラヤ市とサラマンカ市を含む南部地域、ゲレロ州、コリマ州、サカテカス州、シナロア州、チワワ州フアレス市、バハ・カリフォルニア州ティファナ市、ミチョアカン州 レベル2:不要不急の渡航は止めてください。《継続》

メキシコ市・カンクン(キンタナ・ロー州)・オアハカ・グアナファト州の北部観光地(イラプアトを除く)はレベル1ですが、隣接州・隣接地区にレベル2・3が並ぶ国だ、というのが基本構造です。

各地で殺人、強盗、窃盗、誘拐及び強姦等各犯罪が多発しており、強盗や窃盗は日本人も度々被害に遭っています。

2025年の総犯罪件数は約202万件(中略)2025年の殺人件数は20,677件で、日本の約19倍の数値を記録しています。

「日本の約19倍」という温度を念頭に置いて読んでください。

邦人被害の実態(2025年大使館被害届45件)

在メキシコ日本国大使館+在レオン総領事館に届いた2025年の邦人犯罪被害は45件(C1-embassy-damage-2025-overview)。届出に至らない被害が大量にあることを前提とした数字です。

罪種件数
強盗(けん銃等凶器使用11件)13件
窃盗(うち車上ねらい9・置引き5・すり4)26件
暴行・傷害(発砲含む)3件
詐欺1件
脅迫・恐喝1件
殺人0件

強盗の被害全体に占める割合は約29%、しかもけん銃等凶器使用が11/13件。観光で「気をつけて歩く」レベルではなく、強盗に遭った時点で銃が出る前提で動く必要があります。

被害発生地域別ではメキシコ市12件、グアナファト州16件、キンタナ・ロー州(カンクン)6件で全体の約7割を占めています。短期渡航者(観光)の被害は12件で前年比+4と増加傾向。

強盗・首絞め強盗・自動車強盗

メキシコ大使館「安全の手引き」(2026年1月改訂)から、典型事例を3つ。

コンビニ駐車場の銃強盗

事例1:コンビニエンスストアの駐車場に車を止めて降りようとしたところ、男2、3名が近寄ってきてけん銃を突きつけて金銭を要求されたため、抵抗することなく財布や携帯電話を差し出した。

対策:強盗事件の多くは銃器が使用されており、抵抗して死傷する強盗事件が当地では少なからず発生しているため、まずは要求に応じ生命や身体を優先させることが大切です。 ・動作はゆっくりと(急な動きは、犯人の攻撃を呼び起こす) ・犯人の顔を見つめない(犯人を刺激しない) ・日頃から、強盗遭遇時に差し出しても良いようなダミーの財布(捨て財布)を準備しておく。

捨て財布」を大使館が公式に推奨している、というのがメキシコの現実度です。

首絞め強盗

事例2:比較的安全と言われている地域を歩行中、背後から衝撃を感じると同時に意識を失い、数分後に気が付くと財布や携帯電話がなくなっていた。

対策:いわゆる首絞め強盗と言われる犯罪で、背後から被害者に近づき、首を絞めたりスタンガンを使用したりして気を失わせ、その隙に金品を奪う犯罪です。

「比較的安全と言われている地域」で起きるのがポイント。観光地のメインストリートでも油断できない。

高速道路45Dの車両強盗

2025年邦人被害で目立ったのがグアナファト州とケレタロ州を結ぶ高速道路45Dの車両強盗。大使館被害概況から。

特に懸念すべき事案は、グアナファト州からケレタロ州にかかる高速道路45Dにおける車両強盗であり、昼夜、国籍等を問わず多くの被害が報告されている。

具体的には、白色バンや灰色SUVで追い上げられて銃を向けられ停車を求められる事案が複数。グアナファト州(レオン・グアナファト・サンミゲルデアジェンデ)に車で行く場合は、車種選定・走行ルート・走行時間帯を含めて事前検討が必須です。

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昏睡強盗(ドラッギング)と短時間誘拐

メキシコの「飲食店で起きる強盗」のパターン。

事例:飲食店で知り合った人と飲酒していたところ、記憶がなくなり金品がなくなっていた。

対策:初見の人と飲食を共にした際に被害に遭うケースが報告されており、睡眠薬等を混入させられ、一時的に意識を失ったことが原因と考えられます。意識が回復するまでに数時間から十数時間かかったという報告もあり、路上に放置されたり、別の場所に連れ込まれたりといった二次被害の恐れもあります。

そして短時間誘拐(エクスプレス誘拐)。これがメキシコ固有の手口。

短時間誘拐は、全国各地で発生しています。犯人は無理に被害者を車に乗せて車内に閉じ込めて凶器等で脅迫し、ATMへ連れて行き、キャッシュカードまたはクレジットカードで現金を引き出した上で所持品を奪う犯行が多く見られます。当地では、ATMでの現金の引き出し額におよそ5,000〜15,000ペソ(約285〜855米ドル)の制限があるため、二度現金を引き出させるために被害者を翌日まで拘束する場合や、残高が少ない際には家族にも金銭を要求する場合があります。

「翌日まで拘束」「家族にも金銭要求」と書かれている点が重い。クレジットカードの1日引き出し限度額を低めに設定しておくことで、被害額の天井を切る対策になります。同じ短時間誘拐はブラジルの「セクエストロ・レランパゴ」ペルーの「マルカ強盗」と各国で名前が付いており、中南米共通の手口。

詳細とメキシコシティでの具体的な動き方はメキシコシティの昏睡強盗・短時間誘拐に。

ケチャップ詐欺・スリ・置引き

観光客が遭遇しやすい財産犯の代表例。

事例1:徒歩で帰宅中、頭上から白い液体がかかり、後ろから来た女性が鳥の糞だといってティッシュペーパーで拭き取るのを手伝ってくれていたところ、すぐに別の男性2名が近寄ってきて拭き取りを手伝ってくれたが、その間にショルダーバッグのファスナーが開けられ財布が抜き取られていた。

対策:いわゆるケチャップスリと呼ばれるスリ行為で、善意の第三者を装い、汚れを拭き取る手伝いをしつつ、所持しているバッグ等から金品を抜き取る手口で、いずれも比較的安全と言われている地域で発生しています。衣服や体に汚れが付いた場合、混乱しがちですが、近寄ってくる人には丁寧にお礼をいってその場から離れることが大切です。

カンクンでは2025年2月22日にバスターミナルで「肩に掛けた鞄から財布、携帯電話機、旅券が抜き取られ、現金500ドルとクレジットカードが使用された」事案が発生しています。観光地・ターミナル・公共交通機関は全てホットスポットという想定が必要。詳細はメキシコシティのスリ・置き引きに。

タクシーは「流し(リブレ)禁止」が基本

メキシコのタクシー事情は他国とちょっと違う構造。

タクシーは、無線タクシー、空港タクシー等予約制のものを利用する。 犯罪被害に遭うリスクが高いと言われる流しのタクシー(リブレ)はできる限り利用しない。特に夜間一人での利用、見知らぬ不慣れな場所での利用は避ける。 特に、流しのタクシーを利用した際に、目的地以外の方向に走行した所で停止し、または赤信号停車中に、運転手と共謀した犯人が後部座席に乗りこんで来て金品を奪う等の強盗被害に遭うリスクがあるので、十分警戒する。

運転手と共謀した犯人が後部座席に乗り込んでくる、という具体性が外務省資料として強烈です。配車アプリ(Uber/DiDi)は比較的安全とされていますが、A2-safetyは「強盗、強姦等の被害が過去に発生しているため、呼び出した車両ナンバー、運転手の名前や顔を確実に確認」することを推奨。詳細はメキシコシティのタクシー・交通トラブルに。

麻薬と「荷物に仕掛けられる」リスク

メキシコは麻薬関連で観光客が逮捕される定番事例があります。A2-safety から。

麻薬類の持込みは禁止されています。また、日本の市販薬の中には、メキシコ国内法の禁止成分が含まれているものもあり、薬剤の持込みに関するトラブルも発生しています。

空港やバスターミナル等において犯罪グループが報奨金目当てで旅行者の荷物にこっそり違法薬物を忍ばせたうえ、警察に密告するという手口もあるので、荷物から目を離さないでください。

そして実際の日本人被害例。

日本人旅行者2人が、洋服などを購入しようと、メキシコ市テピート地区(密輸品や不正コピー商品などを安売りする市場で、治安が非常に悪い地区)を訪れて商品を見ていたところ、メキシコ人と思われる2人組の男に、良い品物があるから買わないかとつきまとわれ、新聞紙に包んだ麻薬を購入したことにより逮捕された。

「テピート地区」を観光で訪れない「空港・バスターミナルで荷物から目を離さない」「市販薬は成分確認」の3点。海外の薬物法のリスクは海外の薬物法マップ、メキシコシティでの具体的な動き方はメキシコシティの薬物トラブルに。

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警察による賄賂要求

警察官や空港職員に別室に連れて行かれ、金銭を要求される等の事案があるため、自らに非がなく、先方の言動が不審な場合は、「在メキシコ日本国大使館(または在レオン日本国総領事館)に連絡する」など伝え、毅然とした態度で拒否する。

2025年7月5日、メキシコ市ベニート・フアレス国際空港近郊を車で走行中の邦人が警察官2名に呼び止められ、「バス通行レーンを走行した」嫌疑で罰金支払いを求められた事案がありますが、「大使館に電話します」と伝えたところ警察官は立ち去ったと報告されています。これが現地推奨の対応です。

公共交通機関のリスク

外務省と大使館の記述を交通機関別にまとめると以下。

交通機関リスク
メトロブス・市営バススリ・置き引き多し、所持品は体の前で抱える
地下鉄スリ多発、ラッシュ時・夜間利用は避ける
長距離バス夜間・山間地で武装強盗による停車事例あり、昼間の一等バス直行便利用
小型乗合バス(ペセロ・ミクロ)ドアが常に開いており強盗が乗り込みやすい、利用しない
流しタクシー(リブレ)共謀犯による後部座席乗り込み強盗、利用しない
配車アプリ(Uber/DiDi)比較的安全、車両ナンバー・運転手確認が必須

2025年7月31日にはメキシコ市Bellas Artes駅でドアが開いた瞬間にトートバッグ(パソコン在中)をひったくられる事案、8月11日には邦人親子がアカプルコ→マサトラン高速バス移動中に2人組の男から銃を突きつけられ現金とパソコンを奪われる事案が発生しています。

法律・出入国・身分証

知らないと拘束につながる論点を5つ。

  • 査証: 観光・商用は180日以内まで査証免除。ただし入国時の許可日数は180日とは限らないため、旅券の入国印で必ず確認
  • 外貨申告: 1万米ドル相当以上の現金/小切手は申告必須。未申告3万米ドル超は3万ドル超分が国庫没収+身柄拘束
  • 身分証: パスポートのコピー提示で当局拘束された事例あり、原本携行必須
  • 公共飲酒・喫煙: 公共の場所では禁止、身柄拘束の場合あり
  • 市販薬: 日本の市販薬で禁止成分が含まれるものあり、トラブル事例あり

詳細は海外の罰金マップ、日本人が海外で逮捕される類型は日本人が海外で逮捕されるトップ10も参考に。

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医療事情と高額医療費

メキシコの医療水準は大都市の私立病院は高水準ですが、地方は限定的。観光で気にすべきは「重症化したら数百万〜1,000万円超」の現実です。SBI損保の支払事例から。

病名/事故支払額
フットボール中に膝を捻り、前十字靭帯損傷で2日入院・手術356万円
博物館で転倒し膝を強打、膝蓋骨骨折で6日入院・手術309万円

出典: ジェイアイ傷害火災保険「海外旅行保険事故データ アフリカ・中南米」 https://www.sbisonpo.co.jp/travel/example/015.html

中南米全域で見ると、コスタリカ脳内出血442万円、ペルー脳梗塞医療搬送1,144万円のクラスもあります。メキシコ市標高2,240mの高所適応・乾燥対策・蚊媒介感染症(デング熱等)もリスク要因。詳細はメキシコシティの健康・医療トラブルに書きました。地域別の保険相場は中南米の海外旅行保険ガイドに。

誘拐情勢

メキシコ全土では、組織的な犯罪として誘拐が横行し、身代金を目的としたビジネスとして定着しています。2025年における誘拐被害届出件数は459件であり、2024年の487件と比較すると減少しています。

2025年の国立統計地理情報院(INEGI)の発表によると、犯罪被害に対する警察または検察等への被害申告は、全体の6.8%であった

つまり実際の誘拐件数は届出ベースの十数倍という想定で考える必要があります。さらにバーチャル誘拐(ホテル客室への電話で個人情報を抜き取り、家族に身代金要求する手口)も多発。

バーチャル誘拐に関しては、基本的に見知らぬ電話には出ない、電話に出てしまっても、少しでも疑わしい内容であれば電話を切ることが重要です。

ホテル客室の電話・国際電話は出る前に発信元を確認するのが基本対応です。

メキシコの都市別情報

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メキシコは強盗で銃を向けられる確率が日本より圧倒的に高く、転倒一発で300万円超の医療費が発生する国です。クレカ付帯の合算額(疾病合算570万円・傷害500万円)では、骨折+入院+手術のクラスでギリギリ、脳/心臓系の重症化+医療搬送なら確実に不足します。中南米の海外旅行保険ガイドで治療救援1,500〜3,000万円ライン+現地警察の被害届(denuncia)の取り方を確認しておきたい。

主要都市の治安情報

出典