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オーストリアの治安 窃盗が急増、ダニ脳炎で邦人死亡例【2026】

オーストリアの治安や危険エリア、トラブル、医療費を、外務省と在オーストリア日本国大使館の情報からわかりやすくまとめました。

UPDATED · 2026.04.24 KAIGAI-RISK

オーストリアは「ヨーロッパの中では安全」とよく言われます。でも2024年の犯罪認知件数は53万4,193件、前年比+1.2%。窃盗は6万4,122件で+8.9%、強盗も2,450件で+10.9%と、じわじわ増えています。ウィーンの地下鉄でカバンを刃物で切られて財布を抜かれる、ホテルの朝食会場で席を立った隙にバッグごと消える――こういう被害が日常的に起きている国です。さらにザルツブルク近郊ではダニ脳炎で日本人が死亡した事例もあります。

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危険レベル

外務省の危険情報は2026年4月時点で全土に発出なし。感染症危険情報もなし。ただし「レベルなし=安全」ではなく、スリ・置き引きと偽警官トリック、そしてテロ脅威が主なリスクです。

広域情報としてはテロ注意喚起(2026年2月・2025年11月)が出ています。

犯罪の全体像 --- 窃盗と強盗がじわじわ増加中

在オーストリア日本国大使館の「海外安全対策情報(2025年)」によると、2024年の主要数字はこうなっています。

犯罪種別件数前年比
犯罪認知件数534,193件+1.2%
暴力犯罪86,205件+1.0%
窃盗64,122件+8.9%
強盗2,450件+10.9%
住居侵入盗6,930件-10.3%
ネット犯罪62,328件-5.4%

窃盗と強盗が前年比で目立って増えているのがポイント。住居侵入盗は減ったけれど、旅行者が遭いやすいスリ・置き引き系の窃盗はむしろ増えています。

オーストリアはヨーロッパ諸国の中でも比較的安全な治安状況にあると言われていますが、強盗、窃盗、車上狙い、空き巣及び詐欺等の犯罪が多数発生しています。

安全の手引きのこの一文が、オーストリアの現状をよく表しています。「比較的安全」と「多数発生」が同居している国。日本の感覚のまま行動すると、荷物は消えます。

ウィーンのスリ・置き引き --- 朝食会場から地下鉄まで

外務省も大使館も口を揃えて注意しているのがスリと置き引き。場所は観光地、地下鉄・トラム、駅、レストラン、ホテルの朝食会場と、旅行者が必ず通る場所ばかりです。

ビュッフェ式の朝食会場で被害が多いのがオーストリアの特徴。席にバッグを置いて料理を取りに行った数分の間に、バッグごと消えます。「ホテルだから安心」は通用しません。

シュテファン寺院などの観光地では、写真撮影中にバッグのファスナーを開けられて貴重品を抜かれるパターン。背中に背負ったリュックやショルダーバッグは特に狙われやすい。

地下鉄・トラムの乗降時が最も危険なタイミング。数名のグループに囲まれて時間を聞かれている間にカバンから財布を抜く手口、後ろから押しながらズボンのポケットから財布を盗む手口があります。鋭利な刃物でカバンを切って中身を抜くケースも報告されています。

長距離列車・夜行列車も要注意。国際列車を含む長距離列車内での邦人の荷物盗難が発生しています。網棚や足元に置いたカバンが知らない間に消える、個室で寝ている間に貴重品を盗られる、といったパターンです。

TESTIMONY · 旅行者A
レストランで足元にバッグを置いていたら、食事中に持ち去られていました。見知らぬ人が話しかけてきて気を取られている隙だったようです。

※実際の被害報告をもとに再構成した事例です(出典:外務省 安全対策基礎データ(オーストリア)

グループ犯行が多いのも覚えておきたいところ。1人が声をかけて注意をそらし、別の1人が盗む。この「役割分担」が基本構造です。

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偽警官とケチャップ強盗 --- 「所持品検査」と「服の汚れ」に注意

オーストリアで特徴的な詐欺手口が2つあります。

偽警察官トリックイタリアスペインでも横行しているヨーロッパ共通の手口。まず外国人観光客を装った共犯者(サクラ役)が道を尋ねてくる。その直後に「警察官」と名乗る人物が現れ、「麻薬捜査」「偽札事件の捜査」と称して所持品検査を求めます。サクラ役がパスポートや財布を出して見せ、「あなたも」と促してくる。財布を渡すと、調べるふりをして現金やクレジットカードを抜き取られます。

クレジットカードについてはカードを盗むと同時に暗証番号を聞いてくる例が増加している。

暗証番号まで渡してしまうと、ATMで根こそぎ引き出されます。本物の警察が路上で財布の中身を検査することはない。怪しいと思ったらその場を離れましょう。

ケチャップ強盗。すれ違いざまにケチャップ、アイスクリーム、ファンデーションなどを服にかけてくる。「汚れてますよ」と心配する役が近寄ってきて、拭いてくれている間に別の共犯が財布を盗む。複数名の連携プレーです。「コートが汚れている」と声をかけられたら、立ち止まらずに無視してその場を離れるのが正解。

路上設置のATMではスキミングも発生しています。特殊な装置を仕掛けてカード情報と暗証番号を盗む手口。ATMは銀行の建物内にあるものを使うのが無難です。

ダニ脳炎で邦人死亡 --- 治療法なし、ワクチンだけが頼り

オーストリアで見落とされがちだけど深刻なのがダニ媒介性脳炎(FSME)。春先から秋にかけて、森林地帯でマダニに咬まれることで感染する脳炎で、治療法がありません

過去に同国内のザルツブルグ近郊の農村地帯で、日本人旅行者がダニに刺され脳炎を発症し死亡した例があります。

日本脳炎に似た症状で、死亡したり麻痺などの後遺症が残るケースが毎年報告されています。オーストリア政府は国民に予防接種を推奨しているほど身近なリスク。標高1,000メートル以下の山道、湿地帯、森や公園を歩く予定がある人は渡航前に予防接種を受けておくのが唯一の予防策です。ウィーン市内の公園でも感染リスクはあります。同じ中欧のハンガリークロアチアチェコスロベニアも流行地で、ウィーンと組み合わせて回るならワクチン1回で複数国カバー。北欧のフィンランドも森・湖畔エリアでダニ脳炎リスクが警告されている。

医療費の実態 --- 救急車1回790ユーロ、入院1日2,500ユーロ超

オーストリアの医療水準は高く、英語での受診も可能。ただし旅行者はオーストリアの国民健康保険に入っていないので、費用は全額自己負担です。

  • 救急車: ウィーン市内で1回790ユーロ(約13万円、2024年10月料金)
  • 入院費: 1日2,500ユーロ以上(約42万円)
  • 入院時デポジット: 3,000〜8,000ユーロ前後

保険会社の支払い事例を見ると、オーストリアで実際に起きた高額ケースはこうなっています。

内容入院日数金額
地下鉄エスカレーターで裾を巻き込み転倒、頭部外傷・骨盤骨折、チャーター機で医療搬送24日1,582万円
ホテル浴室で倒れ頭蓋骨骨折・脳内出血、医師看護師付添い医療搬送16日993万円
コンサート中に貧血嘔吐、肺炎で入院、医師看護師付添い医療搬送11日840万円
段差につまずき転倒、大腿骨転子部骨折、手術11日683万円
咳・鼻水で受診、肺炎で入院、看護師付添い医療搬送14日623万円

最高額は1,582万円。地下鉄のエスカレーターで服の裾を巻き込んで転倒しただけ。チャーター機での医療搬送が加わると一気に跳ね上がります。クレジットカード付帯保険の治療・救援費用上限では全く足りない水準です。

ウィーンには日本語対応の医師もいるので(Dr.矢本クリニック、Zentrum NOSOMI等)、万一のときのために把握しておくと心強い。

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テロ情勢 --- 2020年ウィーン銃撃テロ以降も警戒レベル「高」

2020年11月2日、ウィーン旧市街の路上で銃撃テロが発生。4人が死亡、23人が負傷しました。単独犯による犯行です。

2023年10月には中東情勢を受けて、オーストリア国内のテロ警戒レベルが5段階中上から2番目の「レベル4(高)」に引き上げられました。シリア・イラクのテロ組織に参加した「外国人戦闘員」の帰還者が国内に百数十名いるとされ、インターネットを通じて自己過激化したローンオフェンダー型テロの脅威も現実のものになっています。

テロ攻撃計画によってコンサートが中止された事案や、刃物による殺傷事件も発生しています。観光施設、イベント会場、駅、ショッピングモールは標的になりうる場所として意識しておきましょう。テロ脅威はフランスドイツでも同様に高い状態です。

EES(出入国システム)が2026年4月に全面運用開始

2026年4月10日から、シェンゲン圏への入国時に顔写真と指紋の電子登録が義務化されました。入国審査に従来より時間がかかる可能性があるので、空港での乗り継ぎ時間には余裕を持っておきましょう。

安全対策まとめ --- 出発前にやっておくこと

  1. バッグは体の前に。リュックは前掛け、ショルダーバッグはファスナーを体側に。レストランでは膝の上か視界の範囲内に
  2. 朝食会場でも荷物から離れない。ビュッフェを取りに行くときは貴重品を身につけたまま
  3. 「警察」を名乗る人物に財布を渡さない。路上での所持品検査は偽警官。怪しければその場を離れる
  4. 「コートが汚れている」は無視。立ち止まった瞬間に財布が消えるケチャップ強盗の手口
  5. ダニ脳炎の予防接種。森・公園を歩く予定があるなら渡航前に接種を。治療法はない
  6. 海外旅行保険に加入。救急車1回13万円、入院1日42万円超。クレカ付帯だけでは不足する可能性が高い

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通信手段の確保

ウィーンでもザルツブルクでも、スマホが使えないと地図も翻訳も緊急通報もできません。現地SIMかeSIMを出発前に準備しておこう。選び方は海外eSIM比較を参照。

緊急時の連絡先

機関電話番号
警察133
救急144
消防122
EU共通緊急番号112
在オーストリア日本国大使館+43-(0)1-531920

大使館の領事部は平日9:00〜12:00、13:30〜16:30(事前予約制)。所在地はウィーン市1区 Heßgasse 6。来館時はパスポートを持参してください。

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海外旅行保険の備え

オーストリアで最高額の医療費事例は1,582万円。623万円〜993万円のケースも複数あり、転倒だけでこの金額です。クレジットカード付帯保険の治療・救援費用上限では足りない可能性が高いので、出発前に必ず補償内容を確認しましょう。詳しくはヨーロッパの海外旅行保険ガイドへ。

主要都市の治安情報

出典