東京都世田谷区の約半分という小さな面積に、世界最大級のカジノ街と世界遺産の歴史地区が同居する特別行政区、マカオ。香港からフェリー1時間、日本から直行便週14便で行ける身近な海外で、2024年は日本から12.6万人が訪れました。街歩きの体感治安は日本とほぼ変わらず、夜も人通りが絶えません。
ただ、観光客とカジノ客が集中するぶん、犯罪のかたちは少し独特です。2024年の総犯罪14,298件のうち増えているのは詐欺2,800件と高利貸し265件、つまり「街で襲われる」より「カジノ界隈で巻き込まれる」が主戦場。街中でぐいぐい盗まれる東南アジア型とは毛色が違います。
さらにマカオには日本の大使館も総領事館もありません。領事業務は在香港日本国総領事館が兼轄しているので、パスポートを失くすと一度香港まで出る必要があります。この構造も含めて、渡航前に知っておきたいポイントを外務省と在香港日本国総領事館の一次ソースから整理しました。
Travel Alert 01
海外の無料WiFiには危険が潜んでいる
あなたのアクセス、丸見えです
マカオの危険レベルとテロ・誘拐情勢
外務省の危険情報・感染症危険情報ともに、現在マカオには発出されていません。
テロ・誘拐情勢のページは短くこう書いてます。
マカオにおいては、テロ組織、反政府組織や国際的なテロ組織の関連組織の活動は確認されていません。
誘拐についても「マカオにおける誘拐事件の認知は少なく、近年、外国人を標的とした誘拐事件は確認されていません」「現在のところ、マカオにおいて、テロ・誘拐による日本人の被害は確認されていません」と同ページが記録しています。この分野のリスクは現時点では低いと見てよさそうです。
犯罪の中身:詐欺と高利貸しが増えている
外務省「安全対策基礎データ」の治安概況。
マカオの治安状況は安定しており、各種犯罪発生率も低く抑えられています。2024年の犯罪発生件数は14,298件で、2023年と比べて811件(6.0%)増加しました。犯罪発生件数の増加率は低いものの、詐欺(2,800件、前年比304件増加)、高利貸し(265件、前年比139件増加)等の犯罪は前年より増加しています。恐喝事件(170件、前年比64件減少)は前年より大幅に減少しています。
数字を並べると構造がわかりやすい。総件数は微増、内訳では詐欺と高利貸しが伸びて、恐喝は下がってる。カジノ文化がある街ならではの犯罪分布です。アジア圏での治安水準の比較はGPI 2025の解説で確認できます。
カジノの置き引きが「多発」
外務省が名指しで警告してるのがこれ。
マカオのカジノ、飲食店等で旅券(パスポート)、財布などの盗難事件が発生しています。特に、カジノに夢中になっている隙に、横に置いた鞄を持ち去られる置き引き被害が多発していますので、特に注意が必要です。
台の横にバッグを置いたまま夢中になる瞬間を狙われる典型パターン。カジノフロアは視線の盲点だらけで、監視カメラがあっても盗られた瞬間に気づけない構造です。詳しい手口と対処はマカオのカジノ置き引き・フェリーターミナル盗難にまとめてます。
違法タクシーの高額請求
タクシーを利用後、不当に高額な金額を請求される場合があります。マカオ警察は、このような事案について取締りを行っていますので、料金に疑問を持った際は、運転手の氏名や車両番号を控えた上で、領収書をもらい、その後、警察に相談するようにしてください。
正規タクシーでも、観光客相手に回り道や定額請求を仕掛けてくる個体がいる。外務省の手順は「降車後に揉める」じゃなくて「運転手名・車両番号をメモ→領収書→警察」です。この3点セットは覚えておこう。
詐欺と高利貸しはカジノ負け客を狙う
詐欺2,800件、高利貸し265件の急増は、カジノで負けた客に「お金貸しますよ」と声をかける構造とセットで語られがちです。旅行者でも、勝ち負けの情報が顔に出ていると声をかけられる可能性はある。現金の貸し借りやブランド模造品の勧誘を含め、マカオの違法タクシー・詐欺・高利貸しで分解しました。
Travel Alert 02
海外の決済で3.5%も搾取されている現実
あなたは知っていますか?
マナー・法律:知らないと揉める5つ
身分証明書(IDカード/パスポート)の常時携帯
身分を証明する書類を常時携帯することが義務づけられています。居住者の場合はマカオ特別行政区政府発行の身分証明書(IDカード)、旅行者の場合はパスポートを必ず携帯する必要があります。
これはマカオの法律。ホテルのセーフティボックスに入れっぱなしは原則NGで、警察の職務質問で提示できないと面倒になります。パスポートのコピーだけでは不十分、と覚えておこう。
出入境ゲート・カジノ内の撮影禁止
出入境ゲート及びカジノ内の写真・動画撮影は禁止されています。
カジノの豪華な内装をSNSに上げたい気持ちはわかるけど、ここは禁止区域。出入境ゲートも同様で、「ちょっと記念に」はトラブルの入口です。
電子タバコの持ち込み禁止
2022年12月5日から、マカオへの電子タバコの輸入等は禁止されています。
免税範囲のタバコ(タバコ19本、葉巻1本、タバコの葉25グラムのいずれか)を超える持ち込みは申告と関税が必要、かつ電子タバコは輸入そのものが禁止。加熱式含めてマカオには持ち込まない方針で。
ブランド模造品の購入・持ち込みは違法
時計、ハンドバッグなどのブランド品の模造品の購入、持込みは違法となっており、取締りが厳しく実施されています。勧誘に安易に乗って商品を購入することがないよう注意が必要です。
街中で「本物そっくりだよ」と声をかけてくるルートは普通にあるけど、購入そのものが違法。苦情窓口としてマカオ消費者委員会(853-8988-9315)も外務省が案内しています。
スタンガン・催涙スプレーは「武器」扱い
スタンガン、催涙スプレー、ナックル、警棒、ナイフは「武器」として取り扱われ、その所持は法律で禁止されています。違反者には禁錮2年~8年が科される可能性があります。近年、マカオへの旅行者が、これを所持していたことにより、マカオ国際空港で逮捕されるケースが増えていることから注意が必要です。
これは知らないと一発アウト。日本で合法の防犯グッズでも、マカオ空港で発覚すれば禁錮刑の対象です。スーツケースの底から催涙スプレーが出てきて終わる、が現実に起きてる。
現金12万パタカ以上は申告義務
12万パタカ以上の現金及び無記名で第三者へ譲渡可能な有価証券類の持ち込みの申告が義務化されており、12万パタカ以上をマカオから持ち出す場合には、マカオ税関職員から質問に応じる義務があります。違反した場合には1,000パタカ~50万パタカの罰金が科せられます。
カジノ文化の街らしい規制。旅行者がここに引っかかるケースは稀ですが、まとまった現金を持ち歩く予定があるなら頭に入れておきたい。
対日感情と歴史記念日
マカオにおける対日感情は一般的には極めて良好ですが、過去の歴史に関わる以下の「記念日」及び8月15日(1945年)の終戦記念日については、念のため慎重な言動・態度が望まれます。
対象の記念日は7/7(盧溝橋事件)、9/3(抗日戦争勝利記念日)、9/18(満州事変)、12/13(南京事件)、そして8/15。外務省は該当日に「集会その他大勢の人が集まる場に遭遇した場合は決して不用意に近づかない。その様子をスマートフォン等で撮影したり、個人のSNSで発信する等の行為も不用意に行わない」と具体的に指示しています。普段は気にせず旅行できる街ですが、これらの日付の近辺だけは少し注意。
Travel Alert 03
無料クレカの"海外旅行保険の限界"は?
補償額をふやすウラ技も
医療費と感染症
マカオの医療施設は整っていますが、診療費、入院費は高額です。
海外旅行保険医加入していなかったために、病気やケガに伴う治療や緊急移送などで多額の出費を余儀なくされたケースが少なくありません。
マカオには外務省「世界の医療事情」の単独ページがなく、B1-medicalに相当する情報が存在しません。つまり実費水準を具体的に書いた日本語の一次ソースがない街、ということ。隣の香港の医療費事例では敗血症性ショックで2,617万円という支払事例がSBI損保から公表されています(詳細はマカオの医療費と海外旅行保険へ)。
蚊媒介感染症も外務省が注意喚起してます。
蚊が媒介する感染症として、日本脳炎、デング熱、チクングニヤ熱、ジカウイルス感染症等に注意する必要があります。
通信手段:現地SIMよりeSIMが早い
マカオは短期旅行がメインで、空港やホテルで現地SIMを探す時間も惜しいのが実情。日本で事前にeSIMを入れておけば、着陸してWi-Fiを繋いだ瞬間から使えます。マカオはアジア共通プラン(香港・中国本土とセット)でカバーされてることが多いので、eSIM比較で対応エリアを確認しておこう。
Travel Alert 04
知らずに大損している海外ATMの罠
DCCって知ってますか?
緊急時の連絡先
- 警察・救急車・消防署:TEL 999、110、112
- 在香港日本国総領事館(マカオ兼轄):(852) 2522-1184(24時間対応)
マカオに日本の大使館・総領事館はなく、在香港日本国総領事館が領事管轄を兼務しています。夜間・祝祭日の緊急時には (852) 2522-1184 にかけて案内が流れ始めたら「9」を押すと緊急コールセンターにつながります。うまく転送されない場合の代替番号は (852) 3008-2092。窓口時間は月〜金 9:15〜12:00、13:30〜16:45。
領事出張サービスは年4回マカオで実施されていますが、パスポート紛失などの緊急対応はマカオ内では完結せず、一度香港まで出国して総領事館に来館する必要があります。フローの詳細はマカオのカジノ置き引き・フェリーターミナル盗難に書きました。
Travel Alert 05
空港であなたを待ちうける5つの罠
準備はできていますか?
海外旅行保険の備え
マカオの医療費は外務省が「高額です」と明記している水準。近隣の香港では2,617万円の支払事例が出ているレベルで、クレカ付帯保険の枠(多くが100〜300万円)では足りない場面が普通にあり得ます。治療費・救援者費用・携行品損害をセットで固めるなら東アジアの海外旅行保険を先に眺めてから渡航スタイルを決めるのが無難です。