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ベラルーシの治安 全土渡航中止勧告、撮影で当局拘束も【2026】

ベラルーシの治安や危険エリア、トラブル、医療費を、外務省と在ベラルーシ日本国大使館の情報からわかりやすくまとめました。

UPDATED · 2026.05.03 KAIGAI-RISK

ベラルーシは2026年4月時点で外務省により全土レベル3(渡航中止勧告)ウクライナ国境周辺はレベル4(退避勧告)が継続中です。2022年2月のロシアによるウクライナ侵略以降、ベラルーシも欧米各国の制裁対象となり、欧州との直行便は禁止、入出国は事実上ロシア(モスクワ)経由のみ、しかもベラルーシ・ロシア間の陸路移動は査証の有無を問わず禁止という、一般渡航者の前提から外れる状況が続いています。

このページは観光のための記事ではありません。真にやむを得ない事情でベラルーシに渡航・滞在する人、駐在員、その家族、隣国情勢を踏まえて備えを確認したい在留邦人向けに、外務省と在ベラルーシ日本国大使館の一次情報から渡航・滞在の現実を整理しています。

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観光目的では行かないでください — 全土レベル3+国境レベル4

外務省の危険情報(継続)はベラルーシをこう指定しています。

●ウクライナとの国境周辺地域 レベル4:退避してください。渡航は止めてください。(退避勧告)(継続) ●ウクライナとの国境周辺地域以外のベラルーシ全土 レベル3:渡航は止めてください。(渡航中止勧告)(継続)

レベル4の理由はそのまま引用します。

2022年2月24日に開始されたロシアによるウクライナ侵略について、依然としてウクライナとの国境周辺地域では軍事衝突による大きな被害が発生する可能性もあり、極めて危険な情勢です。このため、ウクライナとの国境周辺地域の危険情報レベル4(退避勧告)を継続します。この地域への渡航は、どのような目的であれ止めてください。

外務省の安全対策基礎データの冒頭にもこう書かれています。

どのような目的であれベラルーシへの渡航はやめてください。以下の情報は、既に滞在中の方、また、真にやむを得ない事情で渡航・滞在をされる方のための参考情報です。

「観光ベースの旅行先」としての前提は完全に外れている、とまず押さえておいてください。

出入国は事実上モスクワ経由 — 欧州フライトは禁止

ベラルーシへの空路ルートは2021年以降、欧州各国がフライトを禁止していて、現実的な選択肢はロシア経由しかありません。外務省はこう書いています。

欧米各国と同様、日本もベラルーシに対し、ロシアによるウクライナ侵略に関与したとして制裁を科しており、日本人であることを理由に危険が生じる可能性が懸念されます。また、2021年以降、欧州各国はベラルーシとのフライトを禁止しています。また、国境検問所も部分的に業務を停止しており、今後国境が全面的に閉鎖され出国が困難となる可能性もあります。

ここで詰むポイントが2つあります。

  • モスクワ経由でベラルーシに入る場合、ロシア通過査証が必須。査証なしでは「ロシアからベラルーシ行きの航空機」への搭乗を許可されない事例が出ています
  • ベラルーシ・ロシア間の陸路移動は査証の有無にかかわらず禁止。ロシアからの陸路移動を計画してはいけない

つまり「日本→モスクワ→ミンスク」は航空機限定、しかもロシア査証付き。ロシア査証取得自体が観光目的では困難なため、業務渡航以外で実現するルートはほぼないと考えて差し支えありません。出国時も同じルートを逆走することになるため、ロシア側で何かが詰まると出国できなくなるリスクが常にあります。

写真・動画撮影で当局に拘束 — 地下鉄・駅・空港すべて

ベラルーシ滞在で観光客がやらかしやすい最大のリスクが撮影です。日本では普通の駅・空港でのスナップ撮影が、ベラルーシでは拘束対象になります。

ベラルーシでは、政府関連施設や地下鉄、電車、駅、線路を含む鉄道関連施設を含む多くの施設等で写真・動画を撮影した場合、当局に拘束される可能性があります。外出時において写真・動画を撮影することは極力控えてください。

外務省が具体的に挙げている撮影リスクのある施設はこちらです。

  • 政府関連施設および特別政府関連施設(何が該当するかは公表されていない
  • 裁判所、軍事関連施設、パイプラインなど国家安全保障に関わる施設
  • 検問所を含む国境付近
  • 地下鉄、電車、駅、線路を含む鉄道関連施設
  • 空港、航空機内
  • 大使館、領事館
  • 美術館、図書館等の公共施設
  • コンサート会場、クラブ、カジノ等の遊興施設

「特別政府関連施設」は何が該当するかが公表されていないため、街中で目に入った建物を撮ったらアウトだったというケースが理論上あり得ます。外出中にスマホで写真を撮る習慣そのものを止めるのが安全側の運用です。

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デモ見学・SNS政治発言で拘束リスク

写真と並ぶもう一つの大きなリスクが、政治的な集会への接近とSNS発信です。外務省はこう書いています。

治安当局によるデモや政治的な集会の取り締まりなどでは、同参加者のみならず、見学者も逮捕または拘留される可能性がありますので、取り締まりの現場などに遭遇した場合には、直ちにその場から離れ、不測の事態に巻き込まれないよう注意してください。SNS利用による政治的主張などに関連する発信にも注意が必要です。

過去の経緯として、2020年8月の大統領選挙関連の抗議活動では、首都ミンスクで20万人以上が参加した集会が報じられ、参加者と治安部隊の衝突で死傷者・多数の拘束者が出ています。現在も2020年の抗議参加者やウクライナ侵略への反対を表明した人への取り締まりが続いていると外務省は明記しています。

外国人観光客が政治集会の見物・撮影をしたら逮捕、というのは杞憂ではありません。

持込み禁止物品でトランジット拘束の事例も

ベラルーシは経由地として立ち寄るだけでも油断ができません。外務省の安全対策基礎データはこう警告しています。

※トランジットでのベラルーシ立ち寄りの際もベラルーシへの持込み禁止・制限のある物品を所持することのないよう十分ご注意ください(過去、トランジットで当地に立ち寄り、持込み禁止物品を所持していたとして、日本人が長期間ベラルーシに拘束された事例があります)。

向精神薬や一部の咳止めなど、日本では普通に薬局で買える薬が持込み制限品目に該当する可能性があります。常備薬は処方箋・英文の薬剤証明書を併せて携行し、不明なものは事前に駐日ベラルーシ大使館に確認するのが安全です。

治安一般 — 詐欺は2023年に前年比58.6%増

「観光より深刻な拘束リスクが先」という構図ながら、市中犯罪も決して軽くありません。

ベラルーシの都市部で外国人が巻き込まれる事件が発生しており、スリや強盗、車上荒らし等の被害に遭わないよう、注意が必要です。強盗や窃盗事案は近年減少傾向にありますが、2023年は詐欺による検挙が11,715件と前年比58.6%も増加しています。

ベラルーシ内務省の2020年統計(在ベラルーシ大使館「安全の手引き」より)では、犯罪総数87,696件、窃盗25,369件、詐欺4,744件、強盗84件、殺人および殺人未遂297件。詐欺はその後も増加が続いている格好です。

外務省の防犯対策はシンプルです。

  • 夜間の外出を避ける
  • 貴重品は必ず身体に装着し、現金は少量ずつ分散して携行する
  • 歩行中、セカンドバッグ等は肩掛けとせず、できるだけ体の正面に保持する
  • 自家用車の車内には貴重品を残さず、確実な施錠をし、要すれば防犯警報装置の設置も検討する
  • 通行人に声をかけられても安易に話に乗らず、ついて行ったりしない

具体的なスリ・強盗・暴行の被害事例はミンスクの治安情報で大使館に届け出された邦人事例を整理しています。

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滞在登録 — 10日超は内務省へ届出、未登録は罰金

短期滞在者でも10暦日を超えてベラルーシに滞在する場合は、内務省機関(オギーム)への滞在登録が義務です。原則ホテル宿泊なら宿側が代行しますが、アパートメント・ホステル・ゲストハウスは要確認。

外務省は具体的な失敗例を書いています。

過去、無査証制度を利用してベラルーシに入国し、滞在登録をせずにホステルに宿泊していた日本人が、国際移民局/オギームに出頭し、不法滞在に対する罰金を科されたとの事例が頻発していますので、十分ご注意ください。なお、ベラルーシの警察は、外国人に対し滞在登録が済んでいるかを検査する権限を有しています。

警察に職務質問された際、滞在登録の有無が即座に確認される前提で動く必要があります。

医療と保険の現実 — 入国時に保険加入証明が必要

ベラルーシ独自のルールとして、入国時に医療保険加入証明の提示を求められます。日本の海外旅行傷害保険の英語証書を出しても受理されない事例が頻発しているのが要注意ポイントです。

外務省「世界の医療事情」(令和6年10月1日)はこう書いています。

受理されない場合は入国審査場手前の窓口で地元の強制医療保険に加入することになり、保険料は1年間で170ユーロ。ユーロ・米ドル・ベラルーシルーブルの現金払い。

つまり現金(ユーロまたは米ドル)170ユーロを別途用意しておく必要があります。日本のクレジットカード付帯保険・海外旅行傷害保険を持っていても、ベラルーシ側に断られたらその場で現金で買い直しになる、という運用です。

医療水準の面では、医務官は駐在しておらず在ロシア日本大使館の医務官が担当。私立病院でも医師スタッフの多くはロシア語のみで英語通用は限定的、救急車は公立(103番)のみで民間救急車はない、薬局でも処方箋がないと買えない医薬品が多い、というのが現状です。

季節リスクとしては、春から夏にかけて森林・草原のマダニによるダニ媒介性脳炎(治療法なし、最悪死亡)とライム病が報告されています。ダニ脳炎ワクチンは現地クリニックで接種可能、ライム病ワクチンはありません。

放射能リスクの記述もあります。1986年のチェルノブイリ事故の影響でベラルーシ南東部の一部が強制退去区域に指定(通常立入禁止)。ミンスクは中部に位置し汚染は限定的ですが、産地不明のきのこ・いちご・酪農製品は避けるのが無難です。

ベラルーシ単独の保険支払事例は公開されていない

ベラルーシ単独の海外旅行保険支払事例は、損保ジャパン off!・ジェイアイ傷害火災ともに公開されていません。理由はウクライナと同じで、観光ベースの渡航者がほぼおらず事例数が少ないこと、業務渡航は通常の旅行保険ではない戦争危険担保特約付きの特殊保険で対応するケースが多いことです。

参考までに、近隣ヨーロッパの保険支払事例(フランス・ドイツ等)では数百万円〜1,000万円超の医療費・救援費用が記録されており、ベラルーシのような医療体制で重症化した場合は近隣先進国(ロシアまたはポーランド経由でEU圏)への医療搬送が現実的な選択肢になります。チャーター便での医療搬送は最低でも数百万円規模を見込むのが妥当です。

業務渡航で入る場合は所属企業の戦争危険担保付き保険が前提ですが、それでも個人で海外旅行傷害保険を上乗せするのが定石。詳しくは ヨーロッパの海外旅行保険 のページに。

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テロ・誘拐 — 過去事例と現在の警戒

外務省「テロ・誘拐情勢」(更新日 2025年3月11日)はこう書いています。

ベラルーシには宗教や民族の相違に起因する対立はなく、これを原因とするテロは発生していません。 ベラルーシ国内において、これまでに誘拐事件の発生は確認されていません。 現在のところ、ベラルーシにおいて、テロ・誘拐による日本人の被害は確認されていません。

ただし在ベラルーシ大使館「安全の手引き」(令和4年1月版)には、過去の爆破事件として2005年ヴィテプスク、2008年ミンスク中心部の独立記念日野外コンサート会場、2011年ミンスク中心部の地下鉄ホーム、と複数の死傷者を出した事案が記載されています。完全にテロのない国ではない、という認識で街を歩く必要があります。

緊急時連絡先

  • 在ベラルーシ日本国大使館(ミンスク・単館体制、総領事館なし)
  • 住所:Pr. Pobediteley 23/1, 8th floor, 220004, Minsk
  • 電話:+375-17-203-6233 / +375-17-203-6037(代表)
  • 緊急時領事携帯:+375-29-667-6869
  • 警察 102 / 救急車 103 / 消防 101
  • 医務官:駐在せず(在ロシア日本国大使館医務官が担当)

在留届とたびレジ — 大使館が連絡できる前提を作る

ベラルーシ滞在で最優先の手続き在留届(3か月以上滞在)またはたびレジ(短期滞在)への登録です。情勢悪化時に大使館から緊急連絡網が届くのは、登録済みのメールアドレス宛のみ。未登録だと退避情報が届かない可能性があります。

ロシアによるウクライナ侵略の長期化でベラルーシ・ロシア・ウクライナの広域情勢は週単位で動きます。出発前と滞在中、外務省 海外安全ホームページ ベラルーシ在ベラルーシ日本国大使館の最新告知を自分の目で確認し直してください。本記事は2026年5月時点のスナップショットです。

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