ニカラグアは中米で殺人発生率がもっとも低く、「中米のなかでは比較的安全な国」と紹介されることが多い国です。ただし殺人率が低いだけで、強盗の認知件数は人口比で日本の約100倍。在ニカラグア大使館の安全の手引きが、はっきりこう書いています。出発前に読んでおいてほしい注意点を、外務省と大使館のソースだけで整理します。
Travel Alert 01
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危険レベル --- 国全体レベル1(十分注意)
外務省は国全体にレベル1(十分注意してください)を出しています。中米で隣のホンジュラス・グアテマラ・エルサルバドルがレベル2や一部レベル3を含むなか、ニカラグアの数字だけ見ると確かに穏やかです。安全の手引きはこう続けます。
中米で最貧国に位置するニカラグアは、周辺諸国と比べ治安は安定していると言われていますが、都市部では頻繁に窃盗事件や強盗致傷事件が発生していますので、滞在中は周囲の状況に十分に注意を払うことが重要です。
「中米で安全な国」は嘘ではない。ただし日本との比較では危険水準、というのが正しい認識です。
数字で見る治安 --- 殺人率は中米最低、強盗は日本の100倍
在ニカラグア大使館の手引きから、数字をそのまま引きます。
2024年の殺人発生率(人口10万人当たりの殺人件数)は6件(前年比±0件)で、他の中米諸国に比べると低いため安全だと錯覚を起こしがちですが、強盗認知件数は人口比で日本の約100倍発生しており、注意
2024年の殺人の認知件数は381件(前年比26件減)、強盗の認知件数は8,609件(前年比1,469件減)、不同意性交は1,219件(前年比77件減)
殺人と強盗で、リスク構造が真逆になっている国です。ニカラグアで観光客が直面するのは「殺される」より「強盗で奪われる」リスク。後ろから来たオートバイ二人組に拳銃を突きつけられて鞄を渡す、という典型パターンが、マナグア市内で繰り返し発生しています。
Travel Alert 02
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主要犯罪手口 --- オートバイ二人組強盗が看板手口
安全の手引きが、ニカラグアの「最近の犯罪傾向」として真っ先に挙げているのがこれ。
オートバイ二人乗りによる路上強盗、コンビニのレジを襲い店内に居る客の金品も奪う強盗、飲食店内でのもめ事が殺人に発展する事件等が多発しています。いずれの事件も、犯行の際には刃物や拳銃などの凶器が使用されています
凶器使用が一般化しているのが要点です。抵抗すれば暴行に発展する可能性がある。実際、2023年7月にマナグア市ソナ・イポス付近で、オートバイ2人組から金品を要求されて抵抗した邦人が、顔面を殴打されて現金とスマートフォンを奪われた事例があります。マナグアの首都圏に滞在するなら、抵抗せずに鞄を渡すのが現地のセオリーです。
詳しくはマナグアの睡眠強盗・オートバイ強盗で。
流しタクシーは乗合 --- 他の乗客に襲われる
ニカラグアのタクシー文化は日本と毛色が違います。流しのタクシーは乗合で、複数の見知らぬ客が同じ車に乗ります。
ニカラグアでは、流しのタクシーは通常乗り合いであり、乗客がタクシー運転手や他の乗客から襲われる強盗が時折見られますので、流しのタクシーの利用はお勧めできません
つまり、後から乗ってきた「同乗者」が強盗だった、という構造です。ホテル・空港の正規タクシーか、配車アプリ経由のタクシーを使ってください。流しを止めて乗るのは避ける、これだけでリスクが大きく下がります。詳しくはマナグアのスリ・ひったくりも合わせて。
観光地 --- マナグア・グラナダ・レオン・オメテペ島
主要観光地は3エリアあります。
- マナグア: 首都、犯罪事例が集中。観光地として滞在というより、空港乗継・各地への発着拠点として通過する人が多い
- グラナダ: マナグアから車で1時間、コロニアル都市の代表格。観光地として比較的安全だが、夜間外出は控える
- レオン: マナグアから北西に車で1時間半、火山と教会の街。観光地として整備されているが、市場・バスターミナル周辺は警戒
- オメテペ島: ニカラグア湖に浮かぶ双子火山の島、エコツーリズムの定番
グラナダ・レオン・オメテペ島の3エリアは観光客の主な目的地。マナグアは経由地で、観光より「通過する街」と割り切る人が多い。空港着→ホテル直行→翌日グラナダかレオンへ移動、という動線が現地の定番です。
Travel Alert 03
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自然災害 --- 地震・ハリケーン・火山
ニカラグアは中米でも自然災害の多い国。安全の手引きはこう書きます。
ニカラグアは過去に地震やハリケーンによる甚大な被害に見舞われていることから、天災への備えも必要です
手引きにも「2020年の2度のハリケーン」が触れられている通り、ハリケーン被害は実際に発生しています。観光と火山の距離も近く、噴火警報・地震情報のチェックは渡航直前に必須。ハリケーンシーズン(雨季)は道路冠水・フライト遅延が起きやすい時期なので、現地大使館の発信を確認しておきましょう。
政情不安 --- 2018年社会騒乱とその後
ニカラグアはオルテガ政権下で、政治的緊張が継続している国です。手引きから引きます。
2018年4月に発生した社会騒乱後、観光業、飲食業など一部産業で経済的苦境が続く中、2020年の2度のハリケーン、新型コロナウイルス感染症の影響による失業者の増加などの要因が重なり、犯罪認知件数は増加の一途をたどりました
2018年の反政府デモは大規模な弾圧を受け、観光・経済に長期的な影響を残しました。反政府デモ・抗議行動が起きた場所には近づかない、SNSでの政府批判は控える、これは滞在期間が短い旅行者でも頭に入れておくべき線です。
麻薬関連 --- 北部高山地帯と運び屋に注意
ニカラグアの麻薬リスクは2つの方向から来ます。1つは北部高山地帯(北アトランティコ自治地域)の麻薬関連犯罪。
北部高山地帯(北アトランティコ自治地域)には、麻薬関連の犯罪が報じられています…突発的に犯罪に巻き込まれる恐れもありますので十分注意してください
もう1つは「運び屋にされる」リスク。
麻薬関連の犯罪で日本人が逮捕される事案は、特にアジア、中南米地域で多く見られ、例えば、見知らぬ人から荷物を預けられ、麻薬の運び屋にされて、空港等で逮捕されるケースもあります
他人の荷物を預からない、空港で「友人の荷物だから一緒に運んで」と言われても断る、これが鉄則です。麻薬使用目的での所持は禁固1〜3年、国際運搬は禁固5〜15年と書かれています。
Travel Alert 04
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医療事情 --- 公立は混雑、私立病院が選択肢
外務省「世界の医療事情」によれば、ニカラグアの公立病院は混雑が常態化していて、外国人滞在者の主な選択肢は私立病院になります。マナグアでは、
- Hospital Metropolitano Vivian Pellas(メトロポリターノ・ヴィヴィアンペラス病院)
- Hospital Bautista(バウティスタ病院)
の2つが大使館の手引きで「緊急連絡先」として明記されています。雨季は蚊媒介感染症のリスクが高い時期なので、出発前に厚労省 FORTHで渡航地の感染症情報を確認してください。現地での治療は私立病院でも入院費用がそれなりに発生します。
高額医療事例 --- 中南米地域の参考額
ニカラグア単独の保険会社支払事例は確認できなかったため、中南米地域の参考額として近隣国の事例を借ります。
- ペルーで脳梗塞→医療搬送で1,144万円(SBI損保)
- 損保ジャパンoff!の南北アメリカ事例集にも、現地での重症入院・搬送事例が複数
中米の地方都市から日本帰国までの搬送は、保険なしでは現実的に支払えない金額になりがちです。同じ中米圏ならコスタリカやパナマの医療事情も似た構造で、米国(マイアミ)への医療搬送が現実解になりやすい。
詳しい比較は中南米の海外旅行保険で。
Travel Alert 05
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ニカラグアに行く前に頭に入れておくこと
最後に、これだけは押さえておきたいリスト。
- 国全体レベル1だが、強盗認知件数は人口比で日本の約100倍
- オートバイ二人組強盗が看板手口、凶器使用が一般化、抵抗しないが鉄則
- 流しタクシーは乗合、同乗者に襲われるリスクあり。配車アプリ・正規タクシー一択
- マナグア市内は事例集中地、夜間徒歩外出は控える
- 地震・ハリケーン・火山活動の備えが必要、雨季6〜11月のフライト遅延前提
- 政情不安が継続、デモ・抗議行動には近づかない
- 他人の荷物を預からない、空港での運び屋誘導に注意
- 医療搬送は米国かメキシコ、海外旅行保険必須
「中米で安全な国」は表面の数字。強盗100倍の数字を頭に入れて、移動と荷物の持ち方を変えるだけで、ニカラグアの滞在は大きく安全になります。