トンガは、南太平洋のポリネシアに浮かぶ島々からなる王国です。首都ヌクアロファのあるトンガタプ島と、クジラと泳げるホエールスイミングで知られるババウ諸島を中心に、日本からも旅行者が訪れます。外務省の危険情報は発出されておらず(レベル1未満)、南太平洋の島国の中でも比較的治安は良いとされる平穏な国です。
ただ「危険レベルが出ていない=何も起きない」ではありません。外務省「トンガ 安全対策基礎データ」と在トンガ日本国大使館「安全の手引き(トンガ編)」を読むと、(1) 凶悪犯罪は少ないものの、首都周辺で外国人を狙った侵入強盗・ひったくり・スキミングが現実に起きている、(2) 本当に怖いのは犯罪より海(離岸流・サメ)と自然災害(サイクロン・地震・火山)、(3) 日曜は安息日で交通も止まる独特のルール、(4) 病院は実質バイオラ病院に頼るしかなく重症は国外搬送が前提、という4点が見えてきます。スリ対策と同じくらい、海と医療搬送に備える旅先だと考えてください。
Travel Alert 01
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危険レベルは出ていない、それでも侵入強盗とひったくりはある
トンガに外務省の危険情報は出ていません。南太平洋の島国の中でも比較的治安が良いとされていますが、犯罪がゼロというわけではありません。外務省は首都周辺の状況をはっきり書いています。
首都ヌクアロファ市(Nuku’alofa)および周辺地域を中心に、若年層による暴行、傷害、窃盗、外国人を狙った住居侵入事案が発生しているほか、銃器を用いた凶悪犯罪や違法薬物に関する事件も複数報告されています。
日本人が巻き込まれる被害の多くは、窃盗・置き引き・住居侵入、そして暴行です。実際に起きた事例を見ると、夜の路上やホテル、自宅と、場所が幅広いのがわかります。深夜にヌクアロファ市内の日本人宅で就寝中に外扉を壊されて現金・貴重品を盗まれたり、裏庭の窓をバール状の工具でこじ開けられて腕時計を盗まれたりしています。中国人女性が夜8時頃に背後の男から現金1,500TOPと携帯をひったくられたケースや、アジア人男性が泊まるホテルに強盗が押し入り手首を縛られてiPhoneや現金を奪われたケースもあります。
被害が起きやすい場所もはっきりしています。ヌクアロファ市中心部のコロフォウ、マウファンガ、トフォア、コロモツア、ファシ各地区、幹線道路沿いのラパハ/ムア・ヴァイ二地区、そして外国人が多く住む新興住宅地のアナナ・ウムシ・パフ地区です。これらの地域は街灯のない場所もあり、外務省は夜間、特に女性の一人歩きを避けるよう促しています。対策はシンプルで、宿では出入口と窓の施錠を徹底すること、屋外から見える位置に貴重品を置かないこと。ホテルでもバルコニー側のガラス戸の鍵が未設置・破損のことがあるため、チェックイン時に確認しておきましょう。なお普段は温厚なトンガの人も、喧嘩になると暴力に訴えることがあるため、トラブルの気配を感じたら落ち着いてその場を離れるのが賢明です。
ATMスキミングとホエールスイミング詐欺に注意
トンガで日本人旅行者が特に引っかかりやすいのが、ATMのスキミングと、お目当てのツアーに絡む詐欺です。まずATMでは、ヌクアロファ市内の銀行で磁気情報と暗証番号を盗まれ、後日口座から勝手に出金される被害が報告されています。ATMに不正な読み取り機器が仕込まれていたケースです。利用するときは機器に不審な出っ張りがないか確認し、暗証番号を入力する手元を必ず隠してください。
そしてトンガ旅行の目玉であるホエールスイミングにも、落とし穴があります。
ホエールスイミングのためトンガを訪れた日本人旅行者が、ツアー業者に料金を支払ったものの、ツアーは催行されず、料金も返金されなかった。
このツアー業者は、トンガ政府が定めたホエールウォッチング・ホエールスイミングの規定に基づくライセンスを持っていませんでした。ホエールスイミングは正規のライセンスを持つ業者を通すのが鉄則で、料金を前払いする前に業者の実態を確認しておきましょう。このほか、Facebook上で輸入車やエンジンの販売を装ってデポジットを奪う詐欺も多発しており、1年で8人・被害額約1,500万円にのぼった年もあります。SNS経由の前払い取引には慎重に。
なお、テロや誘拐については外務省「テロ・誘拐情勢」でも発生は確認されておらず、日本人が標的になった被害も報告されていません。
Travel Alert 02
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本当に怖いのは海 --- 離岸流とババウのサメ
トンガでスリより警戒すべきなのは海です。美しいリーフの裏に、命に関わる事故が起きています。まず離岸流。トンガは珊瑚礁や岩礁(リーフ)に囲まれたビーチが点在しており、リーフの内側でも油断はできません。
ビーチで海に入っていた日本人が、足がつく程度の深さの場所にいたにも関わらず、沖に戻ろうとする水の強い流れ(離岸流)によってリーフの外側(外洋)に押し流される事例が発生しています。
足がつく浅さでも、いったん外洋に流されると急激に深くなり、強い潮の流れで自力では戻れなくなります。遊泳やシュノーケリングの前には、必ずその場所の情報を集め、白波の立つ沖合の珊瑚礁付近には近づかないでください。そして、トンガで見逃せないのがサメです。
また、北部のババウ島の沿海では、サメに襲われ死亡する事故が発生していますので、遊泳場所については、事前に十分情報を収集した上で選定してください。
ホエールスイミングで人気のババウ諸島は、まさにサメ被害が報告されている海域です。遊泳場所は事前に情報収集し、現地ツアーやガイドの指示に従うこと。毒を持つ魚もいるため、海中の生き物に素手で触れないようにしましょう。海に入る前に「ここで泳いで大丈夫か」を地元の人やガイドに一言確認するクセをつけてください。
サイクロン・地震・火山 --- 自然災害の備え
トンガは自然災害のリスクが高い国です。まずサイクロン。例年11月から4月がサイクロン・シーズンで、2018年2月のサイクロン・ジータ(最大時カテゴリー4)、2020年4月のサイクロン・ハロルド(同カテゴリー4)では甚大な被害が出ています。この時期に渡航するなら、天候情報のチェックを習慣にしてください。まとまった雨が降ると一部の道路が冠水することもあります。
地震・津波・火山のリスクも大きい国です。トンガは環太平洋造山帯に位置し地震が多発します。記憶に新しいのが、2022年1月のフンガトンガ・フンガハイパイ火山の大噴火で、津波・火山灰・海底ケーブルの断線によって島全体が甚大な被害を受けました。地震で津波の来襲が予測されるときは、直ちに海岸を離れて高台へ避難してください。
日曜は安息日 --- 交通が止まる独特のルール
トンガは国民の信仰が非常に篤いキリスト教国で、旅行者が見落としやすいのが日曜のルールです。
日曜日は、観光客用の宿泊施設とそれに付随したレストラン以外はほとんど営業しておらず、バスなどの公共交通機関(特別に許可されたタクシーを除く)も運行しませんので、タクシーを利用する場合は事前に予約しておく必要があります。
許可されたリゾート以外では釣り・遊泳・スポーツも禁止です。日曜に移動する予定があるなら、タクシーは事前予約が必須だと覚えておきましょう。
ほかにも踏み外しやすいマナーがあります。遊泳地以外での露出度の高い服装は非礼とされ、成人男性が公の場で上半身裸になることは法律で禁止されています。公共の場での飲酒・喫煙も禁止です。軍事施設や王室墓地(マラエクラ)、王宮など王室関連施設は立入禁止で、王宮周辺でたむろしたり騒いだりすることも禁じられています。違法薬物は厳しく取り締まられており、路上やクラブで薬物らしき物を売りつけたうえで、奨励金目当てに警察へ密告する手口もあるため、誘いには絶対に乗らないでください。
Travel Alert 03
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交通 --- タクシーとミニバス、犬にも注意
トンガの公共交通はタクシーかミニバスです。タクシー料金をめぐる詐欺はあまり発生していませんが、外務省は乗車前に料金を確認するよう勧めています。日本を含む観光ビザ免除国は、有効な運転免許証で到着から12か月間レンタカーを運転できますが、速度制限を守った安全運転が前提です。
そして地味に多いのが犬のトラブルです。路上には放し飼いの犬が多く、咬まれたり、自転車で走行中に追われて転倒・負傷する事故が起きています。トンガに狂犬病はないとされますが、咬傷からの破傷風の危険があるため、犬を不用意に刺激しないようにしてください。
病院はバイオラ病院が頼り --- 重症は国外搬送が前提
トンガの旅で「お金」に直結するのが医療事情です。トンガには高度な医療機関が乏しく、頼れる病院は実質的にヌクアロファのバイオラ病院に限られます。重い病気や怪我をすれば、ニュージーランドや日本への国外搬送が現実的な選択肢になります。健康面では、飲用水は生水が不適なため煮沸かミネラルウォーターを使い、夏場はデング熱・チクングニア熱・ジカ熱といった蚊が媒介する感染症に備えて虫除けスプレーを携帯してください。外務省も、未加入で多額の自己負担になったケースが少なくないとして、海外旅行保険への加入を勧めています。
なお、バイオラ病院の電話番号はソースによって異なります。在トンガ日本国大使館の領事情報では (+676) 23200、大使館「安全の手引き」の緊急連絡先では 7400403 と記載されているため、現地では両方を控えておくと安心です。
搬送費の現実 --- オーストラリア・ニュージーランドの参考事例
トンガ単独の保険金支払い事例は損保各社のデータベースに見当たらないため、国外搬送先になり得るオーストラリア・ニュージーランドの事例を「南太平洋の島でこの規模の医療・搬送が必要になったときの費用感」という参考枠で挙げておきます(いずれもトンガ国内で起きた事例ではありません)。
- バイク走行中にカーブを曲がり切れず転倒、頚椎・胸椎骨折で10日間入院・手術、医師付き添いで医療搬送 --- 支払保険金 337万円(ニュージーランド/SBI損保)
- 頭痛を訴え救急搬送、脳内出血で43日間入院、医師・看護師付き添いで医療搬送 --- 支払保険金 1,483万円(ニュージーランド/SBI損保)
- ダイビング中に急浮上して意識を失いヘリコプター搬送、減圧症・肺水腫等で14日間入院 --- 支払保険金 453万円(オーストラリア/SBI損保)
脳内出血で本土搬送まで含めると約1,500万円。トンガで同じことが起きれば、まずバイオラ病院へ、さらにNZや日本へという搬送費がここに上乗せされます。トンガは「離岸流での溺水」「ホエールスイミングやダイビングの海洋事故」と、この参考事例とよく似たリスクをそろえた旅先です。だからこそ、緊急移送(医療搬送)まで含めて補償される海外旅行保険を備えておくのが現実的です。南太平洋・オセアニア旅行の保険の考え方はオセアニアの旅行保険まとめで整理しています。
Travel Alert 04
知らずに大損している海外ATMの罠
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通信手段 --- 現地SIM・eSIMの備え
遊泳場所や天候の確認、被害・体調不良時の連絡には、現地で確実につながる通信手段が欠かせません。離島では電波が弱い場所もあるため、ホテルのフリーWi-Fiだけに頼らず、渡航前にeSIMを用意しておくと安心です。料金はトンガ王国のeSIM最安料金比較で、各社公式サイトの実売価格を旅行日数別に並べています。各社の性格や選び方はeSIM比較を参考にしてください。
緊急時連絡先(保存推奨)
外務省「トンガ 安全対策基礎データ」と在トンガ日本国大使館の情報から。トンガには独立した在外公館があり、領事業務は在トンガ日本国大使館(ヌクアロファ)が担当しています。
- 緊急事態(交換手に状況説明): 911
- 警察署: 922
- 消防署: 999
- 病院: 933
- バイオラ病院: (+676) 23200(領事情報)/ 7400403(安全の手引き)
- 在トンガ日本国大使館(ヌクアロファ): (+676) 22221 / 閉館時緊急電話 (+676) 8731788 / 領事メール ryouji.tonga@nu.mofa.go.jp
3か月以上滞在する場合は在留届を、3か月未満の旅行者はたびレジを提出・登録しておくと、トンガでの災害や事故の際の安否確認に役立ちます。
Travel Alert 05
空港であなたを待ちうける5つの罠
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まとめ --- 楽園で備えるべきは「侵入」「海」「搬送」
トンガは南太平洋の中でも平穏な旅先のひとつですが、犯罪レベルが低いからこそ油断しやすい国でもあります。出発前に押さえておきたいのは次の4点です。
- 凶悪犯罪は少ないが、首都周辺の侵入強盗・ひったくり・ATMスキミング・ホエールスイミング詐欺はある(宿は窓まで施錠、夜間の一人歩きを避ける、正規ライセンスのツアーを選ぶ)
- 本当に怖いのは海(リーフ外への離岸流、ババウ諸島のサメ、毒を持つ魚に素手で触れない)
- サイクロン(11〜4月)・地震・火山の自然災害(天候情報のチェック、津波予測時は高台へ)
- 病院はバイオラ病院が頼り、重症は国外搬送が前提(緊急移送まで含む高額補償の保険を備える、日曜は店も交通も止まる)
クジラと泳ぐババウの海とポリネシアの伝統を安心して楽しむために、宿の施錠と海の見極め、そして緊急搬送まで含む海外旅行保険の備えだけは、出発前に必ず済ませておきましょう。