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イランの治安 全土レベル4退避勧告、撮影で拘束も【2026】

イランの治安や危険エリア、トラブル、医療費を、外務省と在イラン日本国大使館の情報からわかりやすくまとめました。

UPDATED · 2026.05.03 KAIGAI-RISK

イランはペルシア帝国以来3000年の歴史を持つ国。テヘラン・イスファハーン・シーラーズの古都、ペルセポリス遺跡、ペルシア絨毯の本場として、かつては中東のなかでも独自の文化的魅力を持つ目的地でした。

ただし2026年4月時点で、イラン全土はレベル4(退避勧告)。2026年1月16日に外務省は首都テヘラン含む全土をレベル4に引上げ、2月のイスラエル・米国によるイラン攻撃と6月以降の報復応酬で、当地から多くの在留邦人・在留外国人がトルコ・UAE経由で退避しました。在イラン大使館は機能を維持していますが、領事サービスは制限下にあります。

この記事は「現在は渡航してはいけない国」を前提に、それでもやむを得ない事情で滞在中の人・退避ルートを検討している在留邦人・将来の情勢回復を見据える人向けに、イラン特有のリスクと退避フローを整理します。観光目的の渡航は現時点で選択肢に入りません

出発前は必ず外務省 海外安全ホームページで最新の渡航レベルを確認してください。

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現在の渡航レベル(2026年4月時点)

外務省は2026年1月16日、イラン全土をレベル4(退避勧告)に引き上げました。

首都テヘランを含む、これまで危険情報がレベル3(渡航中止勧告)であった地域の危険レベルを4(退避勧告)に引き上げます。これにより、イラン全土の危険情報がレベル4(退避勧告)となります。やむを得ず滞在する場合には、複数の情報源から最新の情報を入手するなど特別な注意を払うとともに、十分な安全対策を講じてください。

レベル4は外務省の最高警戒レベルで、「直ちに退避してください」が原則の指示です。

直近の主要イベント

  • 2026/2/28 イスラエル・米国によるイランへの攻撃。同日バーレーン国内米軍基地・カタール アル・ウデイド米軍基地などにイラン革命ガードが報復攻撃
  • 2025/6/13 イスラエルによるイランへの攻撃開始、6/14以降双方の攻撃応酬。イラン国内で1000人以上の死者・5000人以上の負傷者
  • 2025/6/24 米国による停戦合意発表
  • 2024/10/26 イスラエルによるイランへの軍事行動
  • 2024/10/2 イランによるイスラエル攻撃
  • 2024/4/14 イランによるイスラエル攻撃

報復攻撃の応酬パターンが確立されており、いつ次の軍事衝突が起きてもおかしくない情勢です。

退避フロー — テヘラン→トルコ/UAE経由

在留邦人で退避を検討する場合、空路と陸路の両方が選択肢です。

空路退避

  • テヘラン・ホメイニ国際空港(IKA)が主要ハブ
  • トルコ航空・カタール航空・エミレーツ航空などが運航(ただし軍事衝突時は運休・空域閉鎖)
  • イスタンブール経由が最も便数多い、トルコで乗継ぎ
  • ドバイ経由はUAEで乗継ぎ可能だが米軍基地リスクあり
  • 軍事衝突発生時は空港閉鎖の可能性大、衝突徴候があれば即予約

陸路退避

  • トルコ国境(北西部、バザルガン国境ゲート)が最も安全な選択肢
  • アルメニア国境(ノルドゥズ)も使用可能
  • アゼルバイジャン国境(アスタラ)は政治情勢で閉鎖する場合あり
  • イラク・アフガニスタン・パキスタン国境はレベル4(退避勧告)で接近自体が危険
  • 陸路は安全保障状況で予告なく閉鎖、最新情報を大使館に確認必須

大使館連絡先

  • 在イラン日本国大使館:テヘラン所在
  • 領事メール・大使館SMSが第一報の主手段
  • たびレジ・在留届の登録が必須(緊急連絡網の対象になる)

経済制裁による生活インフラの異常事態

イラン渡航で日本人が最も理解していないのが、経済制裁下の生活インフラの異常さです。観光ガイドブックには書かれていない重要事項。

米ドル決済・国際クレジットカード使用不可

  • VISA・Mastercard・JCB・Amexなど国際クレジットカードは一切使えない
  • ATMで日本のカード使用不可
  • 海外送金(Western Union等)も基本的に使えない
  • ホテル・レストラン・ショップすべて現金決済のみ

大量の現金持参が必須、闇両替市場が常態化

  • 米ドル現金またはユーロ現金を大量に持参
  • 公定レートと闇市場レートに数倍の差(公定レートが著しく低い)
  • 両替はサラフィー(公認両替商)で、闇市場レートに近いレートで両替可能
  • ホテルや空港の両替は公定レートで著しく不利
  • 闇両替自体は外国人観光客でも事実上黙認されているが、トラブル時の保護なし

通信制限

  • インスタグラム・フェイスブック・X(旧ツイッター)・テレグラム・WhatsAppなど主要SNSが国内ブロック
  • VPNは技術的に必須だが、当局の取締り強化期間あり
  • インターネット遮断(情勢悪化時)が頻発
  • 海外からの電話・メールが遅延・遮断される場合あり

医薬品の不足

  • 経済制裁の影響で輸入医薬品が慢性的に不足
  • 持病薬は全期間分を必ず持参、現地調達は不可能と思うこと
  • 一般的な抗生物質・痛み止めも品薄になることあり

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現地犯罪 — 偽警察官強盗・バイクひったくり・スリ

在イラン大使館の安全の手引きはこう書いています。

報道に照らすと刃物使用による殺人、傷害及び路上強盗、オートバイ利用による引ったくり、スリ、強制性交等に関する報道が多く、こうした犯罪が日常的に発生しているものとみられます。日本人の主な被害として、現金・スマートフォンなど携帯端末を狙った強盗やひったくり、スリ、空き巣等窃盗が発生しています。

偽警察官強盗

主な事例として、路上でのバイク等によるひったくり、公共交通機関内でのスリ、いわゆるニセ警察官による強盗事件等があります。ニセ警察官による被害については、自らを警察官であると詐称し、正当な所持品検査と見せかけてバッグ等を強奪する手口で、外国人がターゲットとなる可能性があります。

街中で「警察だ、所持品検査をする」と称する人物に近づかれた場合、制服と警察手帳を確認、近くの警察署まで同行を求めること。路上での所持品検査に応じてバッグを開けると、現金・パスポートを抜かれます。

バイクひったくり

オートバイによる引ったくりは日常的。

  • バッグは道路と反対側に持つ、または肩から斜め掛け
  • コートの中に入れて隠すように持つ
  • 後方から接近してくるオートバイには注意を払う
  • 旅券・現金は分散して身に付けて携行(カバンには入れない)

タクシー強盗・性犯罪

イランでは、テレフォンタクシー(アジャンス)、正規タクシー(黄色や緑色のタクシー)や白タクがありますが、いわゆるタクシー(白タク含む)の運転手が強盗、強制性交等を行うケースも多数報告されています。したがって、特に女性は人通りの少ない夜間のタクシーの利用を控えるようにしてください。昼夜を問わず、決して一人で白タクや知らない人の車には乗らないようにしてください。

テレフォンタクシー(アジャンス)または配車アプリ「スナップ(Snapp)」を使うのが基本。ただしスナップ利用者へのひったくり事案・スナップ運転手による犯罪も最近報告されています(2025年第3四半期報告)。

直近の邦人被害事例

第3四半期中における邦人被害は、12月15日、タクシーで帰宅中に何者かが右後方よりバイクで接近し、窓の開放部より腕を入れ、所持していたスマートフォンを窃取し逃走する事案が発生しました。

タクシー乗車中も窓を開けない、スマホを車内で操作しないのが基本動作です。

イスラム法 — ヒジャブ義務化・道徳警察

イランは厳格なイスラム共和制で、外国人女性も含めてヒジャブ(スカーフ)着用が法律で義務化されています。

特に女性は、イスラム教徒でない場合でも髪の毛や身体の線を隠すべくスカーフ、ロングコート等の着用が義務付けられています。また、素足を出さないことにも注意が必要です。イランの法律ではこれら義務違反者は罰則が規定されているので、服装等については十分注意し、思いがけないトラブルに巻き込まれないよう心がけることが大切です。

マフサ・アミニ事件と抗議活動

2022年9月、ヒジャブ指導を受けたマフサ・アミニ氏が死亡した事件をきっかけに、全国規模の抗議活動が発生。複数の死傷者・拘束者が出ました。

令和7年5月に、国家安全保障最高評議会が「ヘジャブ法案」の施行停止を決定したほか、現時点ではヘジャブ未着用者に対する積極的な取締りは行われていない模様ですが、元来よりイスラム刑法にヘジャブ未着用に関する罰則規定があることから、引き続き公共の場におけるヘジャブ着用に関しては時・場所・場合に応じた注意が必要です。

「取締りが緩んだ時期」と「強化された時期」が政治情勢で変動するため、外国人女性は常にヒジャブ着用+肌の露出最小限で動くのが安全です。

写真撮影 — 拘束事案多発

軍事施設・政府関連施設・治安関連施設の撮影は厳禁。

イランでは軍関係施設、政府関連施設、その他治安上重要な施設や公共機関施設等における写真撮影及びビデオ撮影が禁じられており、当局も厳しい取締りを実施しています。過去にはこれら施設において写真撮影等を行ったとして、邦人が一時治安当局に拘束される事案も発生しています。

撮影してはいけない場所

  • 空港・駅・鉄道・港湾・橋
  • 軍事施設・革命ガード関連施設
  • 国境地帯
  • 旧アメリカ大使館(現在は革命ガードの施設)
  • 政府関係施設
  • 各国大使館・大使公邸
  • 抗議活動・デモ現場
  • 治安部隊(警察・革命ガード)

①滞在・訪問先の情報を事前に調べる、②訪問先にいるイラン人に確認する、③観光客が多く訪れ、撮影等問題なく行われている地域以外は立ち入らない、④旅券を常時携行する、⑤ドローンの持ち込み及びドローンを利用した撮影は厳に避ける

ドローンは没収・拘束対象。「観光のつもりで風景を撮ったら背景に基地が写っていた」だけでも数時間〜数日の拘束事案があります。

二重国籍者・外国人の出国停止リスク

イラン政府は二重国籍を認めていません。日本国籍とイラン国籍を持つ人物(日系イラン人含む)が、入国後に出国停止・拘束される事案が継続的に発生しています。

直近の拘束・処刑事例(2025年第3四半期報告より)

  • 10月:フランス国民2人にスパイ容疑で重い禁錮刑
  • 10月:イスラエルのためにスパイ行為を行ったとされる1人を処刑
  • 11月:麻薬密売で有罪となった3人の死刑執行
  • 12月:韓国籍2人を密輸関連容疑で拘束
  • 12月:イスラエルの諜報活動関与とされる男性1人を処刑

外国人ジャーナリスト・研究者・ビジネスマンのスパイ容疑での拘束も常態化しています。ジャーナリスト・研究者ビザでの渡航は極めてリスクが高いと認識してください。

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麻薬 — 密輸は死刑、所持・使用も極刑

毎年、イラン国内で大量の麻薬が押収されるなど、薬物情勢は深刻であり、麻薬中毒者のほか、若者が麻薬購入資金を稼ぐために強盗や窃盗等の犯罪を起こすケースも多いと言われています。

イラン国内の深刻な薬物情勢を背景に、当局は麻薬関連犯罪を厳しく取り締まっており、これら犯罪に対しては極刑をもって対処しています。

直近報道(2025年第3四半期):

  • 11月11日:ウルミエで大規模麻薬密売ネットワーク関与の3人の死刑執行
  • 11月:レイ郡で570kgのマリファナ押収
  • 8カ月で全土で290トン超の麻薬を押収

「友人からの預かり物」「乗継ぎだけのつもり」も対象。CBDオイル・大麻成分入り食品など、日本では合法のものでも持込み禁止。詳しくは薬物法マップ

テロ・誘拐リスク

国境地帯(パキスタン・イラク・アフガニスタン国境)

レベル4(退避勧告)地域。武装組織との戦闘・拉致・誘拐リスクが極めて高い。

  • シスタン・バルチスタン州:バルーチ系反政府組織ジェイシュ・アルアドル(JAA)の活動地域
  • 西アゼルバイジャン州・クルディスタン州:PJAK(クルド自由生活党)のテロ・襲撃
  • フーゼスタン州:アル・アフワーズによるテロ
  • 過去の邦人誘拐事例:2007年10月、ケルマーン州バム市で邦人旅行者が麻薬密輸武装組織に誘拐(2008年6月解放)

テヘラン市内のテロ事件

  • 2025年1月18日 テヘラン最高裁判所付近で最高裁判事2名が銃撃され死亡
  • 2024年1月3日 ケルマーン州ケルマーン市殉教者墓地付近で2名のテロリストが自爆、84名死亡(ISIL犯行声明)
  • 2023年1月27日 在イラン・アゼルバイジャン大使館への銃撃で大使館関係者3名死傷
  • 2022年5月22日 テヘラン市東部で革命ガード大佐が銃撃され死亡
  • 2022年10月26日 ファールス州シーラーズ市シャー・チェラーグ廟で銃撃事件、13名死亡(ISIL犯行声明)
  • 2017年6月7日 テヘラン国会事務所・ホメイニ廟で武装グループ襲撃、18名死亡

自然災害 — 地震リスク

テヘランはアルボルズ山脈の南側山麓部に位置し、活断層が多数分布。

過去の記録によれば、テヘランは約150年の再来周期で大地震に見舞われており、近い将来、テヘランで大地震が発生する可能性があります。必要最低限の緊急備蓄品を各家庭で準備しておくことをお勧めします。

在留邦人は緊急備蓄品(食料・水・常備薬・現金・旅券)を常に準備し、地震発生時の避難経路を確認しておくこと。

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交通事情 — 死亡事故率は日本の8〜9倍

イランの報道によると、全国で毎年約2万人が交通事故で命を落としています(日本の交通事故死亡者数の約8〜9倍)。

  • 一方通行を逆行する車多数
  • ウィンカーを出さない/出しても逆方向に曲がる
  • 急激な車線変更・割込み
  • 整備不良車(無灯火・ブレーキ不良)多数
  • 高速道路を歩行者が横断
  • オートバイが歩道を走る

外国人がレンタカーで運転するのは現実的でなく、信頼できる運転手付きの車両を雇うか配車アプリ(スナップ)利用が基本です。

医療 — テヘランは中東水準だが薬不足

テヘランは中東でも比較的高水準の医療を提供する病院が多数あります(Pars Hospital、Tehran Heart Center、Milad Hospital等)。ただし:

  • 経済制裁の影響で輸入医薬品が慢性的に不足
  • 外貨建て前払いが原則(米ドル・ユーロ現金)
  • 海外旅行保険のキャッシュレスサービスが使える病院は皆無
  • 国外搬送が必要な重症は、トルコ・UAE経由のみ

「保険があるから大丈夫」は通用しません。中東地域共通の保険選び方は中東旅行の保険ガイドを参照してください。

緊急時の連絡先

連絡先電話番号
警察110
救急115
消防125
在イラン日本国大使館+98-21-2266-7191
外務省 領事局海外邦人安全課+81-3-5501-8160

レベル4継続中は領事メール・大使館SMS・たびレジ通知を必ず受信できる状態にしておくこと。緊急時は大使館の指示に従って退避してください。

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出典