クック諸島は、南太平洋(ポリネシア)に浮かぶ15の島々からなる、ニュージーランドと自由連合を組む国です。首都アバルアのあるラロトンガ島と、ラグーンの美しいアイツタキ島を中心に、ハネムーンやリゾート目的の旅行者が訪れます。外務省の危険情報・感染症危険情報はどちらも発出されておらず(レベル0)、犯罪という意味では世界でもかなり平穏な部類です。
ただ「危険レベルが出ていない=何も備えなくていい」ではありません。外務省「クック諸島 安全対策基礎データ」と、クック諸島を兼轄する在ニュージーランド日本国大使館の情報を読むと、(1) 凶悪犯罪はほぼ皆無な一方でホテル客室への侵入・浜辺の置引きはある、(2) 本当に怖いのは犯罪より海と自然(環礁の水路・放し飼いの犬・トレッキング遭難)、(3) レンタカー・レンタルバイクの事故リスク、(4) 病院はラロトンガ病院のみで重症は国外搬送が前提、という4点が浮かび上がります。スリを警戒するより、海と医療搬送に備える旅先だと考えてください。
Travel Alert 01
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危険レベルは発出なし、それでも置引きと客室侵入はある
外務省はクック諸島に危険情報も感染症危険情報も出していません。凶悪な犯罪はほとんど発生しておらず、首都アバルアのあるラロトンガ島でも同様です。ただ、犯罪がゼロというわけではありません。
クック諸島においては、首都アバルアのあるラロトンガ島を含め凶悪な犯罪はほとんど発生していませんが、窃盗、置引き、住居侵入事案等の犯罪が報告されています。特に、観光客を狙ったホテル客室への侵入・窃盗や浜辺での置引きが多く見られます。
ポイントは、被害が起きる場所がはっきりしていることです。ほぼ全てのホテルが海沿いにあり開放的な作りのため、部屋を空けるときや夜間就寝中の施錠が甘いと客室侵入を許します。また、海水浴に夢中になって人気のない浜辺に貴重品を置きっぱなしにすると置引きに遭います。外務省も対策をシンプルに挙げています。
現金、貴金属、パソコン、携帯電話等は、ホテルの金庫等に保管することをおすすめします。(中略)外出等で部屋を空ける場合および夜間就寝中は、出入口とすべての窓の施錠を心掛けてください。
要するに、貴重品はホテルの金庫へ、窓まで含めて施錠、浜辺に荷物を放置しない。この3つを守れば、クック諸島の「犯罪」リスクの大半はカバーできます。なお、テロ・誘拐については外務省「テロ・誘拐情勢」でも発生事例は確認されておらず、日本人が標的になった被害も報告されていません。
本当に怖いのは海 --- 環礁の水路で流される死亡事故
クック諸島でスリより警戒すべきなのは海です。美しいラグーンの裏に、命に関わる事故が起きています。外務省は具体的に危険な場所を名指ししています。
ラロトンガ島の南側にある環礁と外海をつなぐ水路5か所は流れが速く、観光客が遊泳中に流されて行方不明となる事故が発生しています。これらの場所を含め、遊泳禁止の立て札がある場所で泳ぐことは危険ですので、絶対にやめてください。
環礁内の穏やかな水面につられて泳いでいると、外海につながる水路で急な流れに引き込まれます。しかも、遊泳禁止区域でなくても油断はできません。
一般的な海水浴場であっても、遊泳中に観光客が亡くなる事件も発生していますので、遊泳の際は、十分に注意が必要です。
さらに足元にも危険があります。環礁内は水深が浅い場所でも、毒を持つオニダルマオコゼが生息しているため、外務省は素足で歩かないよう促しています。マリンシューズを履く、これだけで刺傷は大きく避けられます。海に入る前に「遊泳禁止の立て札はないか」「水路に近づいていないか」を確認するクセをつけてください。
Travel Alert 02
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放し飼いの犬とThe Needleのトレッキング遭難
陸の自然リスクもクック諸島ならではです。まず、島では犬が放し飼いにされています。
クック諸島では犬が放し飼いにされており、ジョギングしている人を追いかける、バイクを追いかけて衝突事故を起こす等、様々なトラブルが発生しています。散歩中や車・バイクの運転中は、犬に十分注意し、不用意に刺激しないようにしてください。
ジョギングやサイクリング中に犬に追われる、バイクに犬が突っ込んで転倒する、といった事故が現実に起きています。むやみに刺激しないことが基本です。そして山では、ラロトンガ島で人気のトレッキングコースに遭難リスクがあります。
ラロトンガ島においてトレッキングで有名なThe Needleでは、観光客が行方不明となり、捜索・救助される事件が発生しています。
The Needle(ザ・ニードル)に挑むなら、事前の情報収集と準備、現地の注意事項の順守が欠かせません。離島の山で行方不明になると、捜索・救助には時間がかかります。単独・軽装での入山は避けましょう。
レンタカー・レンタルバイクが一番の事故源
クック諸島で旅行者が最も巻き込まれやすい「事故」は、移動手段に絡みます。車は右ハンドル左側通行で日本に近いものの、道路環境が日本とはまったく違います。
道路の舗装状況は一部区間では良好とはいえません。レンタカーを利用する際は、道路上の凹凸のみならず、公道に放し飼いの鶏や豚、犬が飛び出してくることがあるので、前方への注意が必要です。
舗装の悪さに加えて、鶏・豚・犬が公道に飛び出してくるのがクック諸島の道路の現実です。さらに、町外れは街灯が乏しく、夜間の運転・歩行は視界が悪くなります。外務省は夜道を歩くときに点灯した懐中電灯を持つよう勧めているほどです。バイクについては、特有の落とし穴があります。
バイクの運転免許証を所持していなくても、簡単な走行テストでクック諸島の免許が取得できることから、運転に不慣れな観光客がバイクを運転している場合もあるため、車の運転中や歩行中も注意が必要です。
つまり、走行テストだけで免許が取れてしまうため、運転に不慣れな観光客のバイクが道路に混在します。自分が乗る側でも、歩く側・運転する側でも、これを前提に身構えておく必要があります。なお飲酒運転には200NZドル以上、無免許には40NZドルの罰金が科されます。レンタルバイクで気軽に島を巡る前に、自分の運転技量と道路状況を冷静に見極めてください。
マナー --- 教会とマライ、敬虔なキリスト教社会
クック諸島は国民の大多数が敬虔なキリスト教徒で、伝統も色濃く残ります。観光で踏み外しやすいのが、服装と聖地の扱いです。
国民の大多数を敬虔なキリスト教徒が占めていることから、肌の露出度が高い水着等で、教会やマライを訪問することや町中を歩くことは適当ではありません。
ビーチ用の水着のまま町を歩いたり教会に入ったりするのは避け、町中では羽織るものを一枚持ちましょう。マライとは島内に100か所程度ある石を環状や四方形に並べた伝統的な集会場所で、部外者が神聖な石に触れることは避けるべきとされています。また、教会内部を撮影するときは関係者の許可を得てください。麻薬類については厳格に取り締まられ、場合によっては懲役刑が科されます。
Travel Alert 03
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病院はラロトンガ病院のみ --- 重症は国外搬送が前提
クック諸島の旅で最も「お金」に直結するのが医療事情です。島には高度な医療がありません。
クック諸島では、ラロトンガ病院で、一般的検査・治療や手術が可能ですが、高度な医療は行えず、大きな病気や怪我をした場合、ニュージーランド、日本等へ緊急搬送する必要が生じます。
頼れる病院は基本的にラロトンガ病院だけで、ここで対応できない重症はニュージーランドや日本への緊急搬送になります。しかも問題はラロトンガ島だけではありません。
ラロトンガ島以外の島で医療が必要となった場合、ほとんどの島には医師がおらず、ラロトンガ島までの定期就航便もないため、ラロトンガ島への緊急搬送が必要になる場合もあります。
アイツタキ島など他の島で具合が悪くなると、まずラロトンガ島へ運ばれ、そこで手に負えなければさらに国外へ、という二段階の搬送になりかねません。健康面では、近年デング熱の発症が報告されているため蚊対策(虫除け・長袖)を、魚毒による食中毒やスズメバチのアレルギー反応にも注意を。飲用水は水道水が濁ることがあるため市販のミネラルウォーターが無難です。外務省自身が、保険についてはっきり言い切っています。
緊急搬送には多額の費用がかかりますので、たとえ短期間の滞在であっても、クック諸島を訪れる場合は、日本出発前に緊急移送を含む十分な補償内容の海外旅行保険に加入することを強くおすすめします。
搬送費の現実 --- ニュージーランド・オーストラリアの参考事例
クック諸島単独の保険金支払い事例は損保各社のデータベースに見当たらないため、国外搬送先になり得るニュージーランド・オーストラリアの事例を「南太平洋の島でこの規模の医療・搬送が必要になったときの費用感」という参考枠で挙げておきます(いずれもクック諸島国内で起きた事例ではありません)。
- バイク走行中にカーブを曲がり切れず転倒、頚椎・胸椎骨折で10日間入院・手術、医師付き添いで医療搬送 --- 支払保険金 337万円(ニュージーランド/SBI損保)
- 頭痛を訴え救急搬送、脳内出血で43日間入院、医師・看護師付き添いで医療搬送 --- 支払保険金 1,483万円(ニュージーランド/SBI損保)
- ダイビング中に急浮上して意識を失いヘリコプター搬送、減圧症・肺水腫等で14日間入院 --- 支払保険金 453万円(オーストラリア/SBI損保)
バイク事故で330万円超、脳内出血で本土搬送まで含めると約1,500万円。クック諸島で同じことが起きれば、まずラロトンガ島へ、さらにNZや日本へという搬送費がここに上乗せされます。クック諸島は「不慣れな観光客のレンタルバイク」「環礁での溺水」「ダイビング事故」と、この参考事例とよく似たリスクをそろえた旅先です。だからこそ外務省が短期でも保険を強く勧めるわけで、緊急移送(医療搬送)まで含めて補償される海外旅行保険を備えておくのが現実的です。南太平洋・オセアニア旅行の保険の考え方はオセアニアの旅行保険まとめで整理しています。
自然災害 --- サイクロンは11月〜4月
クック諸島では毎年11月から4月にかけてがサイクロンのシーズンで、年に数回、大型サイクロンが直撃または通過することがあります。避難が必要になったら、ホテルや現地当局の誘導に従って速やかに動いてください。地震で津波の来襲が予測されるときは、直ちに海岸を離れて高台へ。島内各所には白地に波のマークの津波避難経路が表示されています。この時期に渡航するなら、天候情報のチェックを習慣にしましょう。
Travel Alert 04
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通信手段 --- 現地SIM・eSIMの備え
遊泳禁止区域や天候の確認、被害・体調不良時の連絡には、現地で確実につながる通信手段が欠かせません。離島では電波が弱い場所もあるため、ホテルのフリーWi-Fiだけに頼らず、渡航前にeSIMを用意しておくと安心です。選び方はeSIM比較を参考にしてください。
緊急時連絡先(保存推奨)
外務省「クック諸島 安全対策基礎データ」と在ニュージーランド日本国大使館の情報から。クック諸島に日本の在外公館はなく、領事業務は在ニュージーランド日本国大使館(ウェリントン)が兼轄しています。
- 緊急通報センター(救急車・消防共通): 999
- 在ニュージーランド日本国大使館(クック諸島を兼轄): (国番号64)-4-473-1540 / NZ国内からは (04) 473-1540 / 領事メール consular@wl.mofa.go.jp
- 在オークランド日本国総領事館: (国番号64)-9-303-4106 / NZ国内からは (09) 303-4106
3か月以上滞在する場合は在留届を、3か月未満の旅行者はたびレジを提出・登録しておくと、クック諸島での災害や事故の際の安否確認に使えます。安否確認は在ニュージーランド日本国大使館が行います。
Travel Alert 05
空港であなたを待ちうける5つの罠
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まとめ --- 楽園で備えるべきは「海」と「搬送」
クック諸島は犯罪という意味では平穏な、数少ない旅先のひとつです。出発前に押さえておきたいのは、犯罪より次の4点です。
- 犯罪は少ないが客室侵入・浜辺の置引きはある(貴重品はホテルの金庫へ、窓まで施錠、浜辺に荷物を放置しない)
- 本当に怖いのは海と自然(環礁の水路5か所での溺水、遊泳禁止区域、オニダルマオコゼに素足厳禁、The Needleの遭難)
- レンタカー・レンタルバイクの事故(放し飼いの鶏・豚・犬の飛び出し、街灯不足、走行テストだけで取れるバイク免許の不慣れ運転)
- 病院はラロトンガ病院のみ、重症は国外搬送が前提(緊急移送まで含む高額補償の保険を備える、デング熱対策も)
ラグーンの海とポリネシアの伝統を安心して楽しむために、海の危険の見極めと、緊急搬送まで含む海外旅行保険の備えだけは、出発前に必ず済ませておきましょう。