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モルドバの治安 渡航中止勧告地域あり、結核も蔓延【2026】

モルドバの治安や危険エリア、トラブル、医療費を、外務省と在モルドバ日本国大使館の情報からわかりやすくまとめました。

UPDATED · 2026.05.03 KAIGAI-RISK

モルドバはルーマニアとウクライナに挟まれた人口268万人の内陸国。良質なワインと「世界遺産でない静かな東欧」のイメージで日本ではマイナーな旅行先ですが、外務省の危険情報レベルではトランスニストリア地域がレベル3(渡航中止勧告)それ以外(首都キシナウ含む)がレベル2(不要不急の渡航中止)と、ヨーロッパの中では明らかに警戒度の高い国です。隣国ウクライナへの侵攻の直接影響でテロ警戒レベルが引き上げられ、領空が一部閉鎖された経緯もあります。

このページは外務省と在モルドバ日本国大使館の一次情報から、観光・業務でモルドバに渡航する人が出発前に知っておくべき治安・健康・移動の現実を整理しています。

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危険レベル — トランスニストリアと本土の二層構造

外務省の危険情報(継続)はモルドバを次のように区分しています。

  • トランスニストリア地域:レベル3(渡航中止勧告)
  • それ以外(首都キシナウ含む):レベル2(不要不急の渡航は止めてください)

トランスニストリア地域の理由は明確です。

●ウクライナと国境を接するトランスニストリア地域では、従来からロシア軍が駐留し演習等を行っています。2022年2月24日からのロシアによるウクライナ侵略により地域情勢の緊張が高まっており、予断を許さない状況が続いています。このため、同地域への渡航は止めてください。 ●同地域にはモルドバ政府の施政権が及んでおらず、仮に日本人渡航者が同地域で事件・事故等に巻き込まれた場合、モルドバ政府や在モルドバ日本国大使館が十分な救済措置を講じることができない状況にあります。

「モルドバ政府の施政権が及ばない地域」、つまり事件に遭っても日本大使館が動けない地域です。観光地としても語られることがありますが、現状は渡航しない一択。

ウクライナとの陸路移動禁止 — 国境閉鎖

トランスニストリア地域・ウクライナ間の国境は閉鎖されています。ウクライナ方面からモルドバに入る場合は、トランスニストリア地域を迂回するルートで移動する必要があります。

また、トランスニストリア地域・ウクライナ間の国境は閉鎖されています。ウクライナからモルドバへの移動はトランスニストリア地域を迂回するルートで移動するようにしてください。 ウクライナに対しては、現在、危険情報「レベル4:退避してください。渡航は止めてください。(退避勧告)」を発出していますので、いかなる目的であってもモルドバからウクライナへの移動は止めてください。

モルドバ→ウクライナ方向の移動も全面禁止。隣国とはいえ陸路で気軽に行き来できる地理ではありません。

ウクライナ侵攻関連 — テロ警戒レベル引き上げ・領空一部閉鎖

モルドバはウクライナの隣国として、侵攻開始以降に次のような緊急措置が取られています。

  • 2022年2月以降、モルドバ政府によるテロ警戒レベル引き上げ措置(在モルドバ大使館告知)
  • ウクライナとの侵攻関連でモルドバ領空の一部閉鎖(その後段階的に解除)
  • 国境付近でドローンやミサイルの領空通過、モルドバ国内への墜落事案が複数発生

外務省「テロ・誘拐情勢」はこう書いています。

モルドバ政府の実効支配の及んでいないトランスニストリア地域において、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻開始以降、複数の爆発事案がありました。そのほか、同年以降、モルドバ国境付近においてドローンやミサイルの領空通過やモルドバ国内への墜落事案が複数発生しています。

モルドバ国内では爆破予告やデモなどが度々発生していますので、十分注意してください。

国際テロ組織の存在は確認されていないものの、隣国情勢の影響は直接的に及びます。

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一般治安 — 人口268万の小国でも犯罪は日本より多い

外務省の安全対策基礎データはモルドバの治安をこうまとめています。

モルドバの一般治安状況については、他の欧州諸国に比べ概して良好ですが、スリ、ひったくり、置き引き、強盗といった犯罪も発生しており、日本と比べれば決して良くはありませんので、注意が必要です。 一般的に、日本人は裕福だと見られており、犯罪の対象となる可能性が高いと考えられます。

在モルドバ大使館「安全の手引き」(令和5年6月版)の犯罪統計(2018-2022年)によると、

罪種20182022
殺人170136
窃盗10,4117,639
強盗762506
薬物関連犯罪1,351925
フーリガン1,3351,067
合計32,03526,833

統計上は減少傾向ながら、人口268万人で年2.7万件は人口比で日本(人口約1.25億で年55-60万件)より高水準です。

外務省の防犯対策の基本ラインは次の通り。

  • イヤホン・ヘッドホンを付けたままの外出や、スマホ操作しながら歩く行為はしない
  • 暗くなってからの一人歩き、ひと気の少ない通りを避ける
  • 街中で不穏な集団(特に若者)が目に付いたら、すぐにその場から離れる
  • 列車内・遊興場所で人から飲物等を勧められても安易に口にしない(睡眠薬強盗対策)
  • エレベーターは一人で乗るように努め、場合によっては見送る
  • いわゆる「白タク」は利用しない
  • 偽警察官の可能性もあるので、制服を着ているからというだけで安易に信用しない(身分証提示を求める)
  • 強盗被害にあった場合は、身の安全を第一に考え、無理に抵抗しない

具体的な手口と対策はキシナウのスリ・置き引き対策に。

結核は日本の6倍・MDR-TB蔓延国 — モルドバ最大の医療リスク

モルドバの医療事情で外務省が最も明確に警告しているのが結核です。外務省「世界の医療事情」(令和6年10月1日)はこう書いています。

結核の発症率は、人口10万人あたり年間74人と日本の6倍です(2020年)。WHO世界保健機関は、モルドバをMDR-TB多剤耐性結核の蔓延国(high-burden country)30の一つに挙げています。

人口比日本の6倍、しかもWHOから多剤耐性結核(MDR-TB)の高蔓延国として指定されている水準です。長引く咳・微熱・寝汗があれば、帰国前後に医療機関を受診するのが安全です。

加えてHIV感染者数は1.4万人(年間新規感染者800人弱)、狂犬病はキシナウ市内で毎月100名以上が狂犬病専門医の診察を受ける状況。詳しい医療情報と感染症対策はキシナウの感染症・体調不良対策に。

移動 — 白タク禁止・国際免許無効

モルドバの交通事情は外務省・大使館ともに警戒度の高い書き方です。在モルドバ大使館の手引きはこう書いています。

当地では道路事情が悪い上に、運転者のマナーも良くありません。また、自動車優先の意識が強く、自動車保有割合も年々急激に増加していることから、交通事故に遭う可能性も高くなっています。

具体的な懸念点は次の通り。

  • 道路に大小の陥没箇所が多く、方向指示器なしで突然車線変更する車が非常に多い
  • 整備不良車両が多い
  • 法定スピード超過や乱暴な運転をする運転手が多い
  • タイヤ摩耗が激しい車が多く、雨・雪・路面凍結時のスリップ事故が多発
  • 横断歩道でも歩行者を無視して走行する車がいる

日本の国際運転免許証は当地では無効です(運転には現地試験合格が必須、短期旅行者は試験不可)。レンタカー利用は事実上不可能と考えてください。

タクシーは「いわゆる白タクは利用しない」「電話や携帯アプリで呼ぶ無線タクシーを利用」が大使館の指示です。

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国立病院は整備遅れ — 民間病院推奨、救急搬送先は国立

モルドバの医療体制は二重構造です。

国公立の医療機関は、整備が遅れており、在留邦人は、外国資本の民間病院を利用するケースが多いようです。救急車は電話番号112で呼ぶことが出来ますが、搬送先は国立病院となります。

つまり緊急搬送は国立病院になる前提で、海外旅行傷害保険のキャッシュレス対応病院(JCI認証の Medpark International Hospital など)に自力でアクセスする余地が限定的、という構造です。

医務官は駐在せず、在ポーランド日本国大使館医務官が担当。緊急性の低い手術や精密検査は「本邦または近隣の先進国で行うことをお勧めします」と外務省が明記しています。

入国・滞在 — 90日以内なら査証不要、外国人登録は警察証明必要

日本国籍者は90日以内の短期滞在なら査証不要(モルドバ側の一方的措置)。90日を超える場合は内務省移民・難民局で「外国人登録」が必要で、申請には日本の警察証明(申請から交付まで通常2か月)が要るので早めの準備が必須。

ウクライナ侵攻の影響でモルドバ大使館は独立稼働へ

歴史的経緯として、モルドバの邦人窓口は長らく在ウクライナ大使館(ua.emb-japan.go.jp)が兼轄していました。現在は独立した在モルドバ日本国大使館(md.emb-japan.go.jp)がキシナウで稼働しています。在ウクライナ大使館配下時代の旧情報が「過去の安全情報」アーカイブに残置されているので、参照する際は最新版を確認してください。

緊急時連絡先:

  • 在モルドバ日本国大使館(キシナウ・単館体制、総領事館なし)
  • 住所:National Business Center 5F, 73/1 Stefan cel Mare Blvd., MD-2001, Chisinau city
  • 電話:+373-22-23-3380
  • 開館時間:09:00-12:30 / 13:30-17:45(領事窓口 09:00-12:00 / 14:00-16:45)
  • 警察・救急車・消防車:112

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緊急事態への備え — 10日分の備蓄

在モルドバ大使館「安全の手引き」第Ⅲ部は、隣国の侵攻という地政学的状況を踏まえて緊急事態対処マニュアルを具体的に書いています。

危機が迫り、国外退避の必要性が高くなった場合には、可能な限り定期商用便が運航しているうちに国外に待避してください。 現金は家族全員が10日間生活出来る程度を、また航空券購入のため外貨、当座の必要なための現金通貨を最低限、用意しておくこと。 暫くの間自宅待機する場合を想定し予め調味料、缶詰類、インスタント食品、粉ミルク等の保存食及びミネラルウォーターを家族全員で10日間程度生活出来る量を準備しておくこと。

「10日分の食料・水・現金(外貨)」という単位は、隣国の戦時下が継続している中での標準的な備えとして大使館が指示しているもの。短期旅行者は不要としても、駐在員・留学生は出国前から在留届とたびレジに登録して大使館の連絡網に入っておくのが大原則です。

モルドバ単独の保険支払事例は公開なし — 近隣ヨーロッパ借用

モルドバ単独の海外旅行保険支払事例は、損保ジャパン off!・ソニー損保・ジェイアイ傷害火災・SBI損保のいずれも公開されていません。観光ベースの渡航者が少ない国の典型的なパターンです。

参考までに近隣ヨーロッパ(フランス・ドイツ・イタリア)の高額医療事例を借用すると、

  • フランスで腹膜炎入院 — 治療費1,610万円
  • ドイツでホテル浴室転倒 — 治療費639万円
  • イタリアで心筋梗塞 — 治療費1,011万円

(出典:SBI損保 高額医療費事例 / ソニー損保 海外でケガをしたときの実例

モルドバの医療水準(外務省曰く「周辺諸国と比較しても低く、衛生事情もよくありません」)を踏まえると、日本または近隣先進国(ポーランド・ルーマニア・ドイツ)への医療搬送を含めた治療救援費用は、上記事例と同水準以上を見込むのが妥当です。

治療救援費用は無制限または1,000万円以上、緊急移送特約付き、という設計が出発前のマスト。詳しくは ヨーロッパの海外旅行保険 に。

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