Kaigai Risk
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キシナウの医療 結核日本の6倍・野犬狂犬病・ダニ脳炎【2026】

キシナウの医療・感染症の手口や予防策、被害時対応を、外務省と在外公館の事例からわかりやすくまとめました。

UPDATED · 2026.05.03 KAIGAI-RISK

モルドバ・キシナウの医療事情は3つのレイヤーで考える必要があります。結核(人口10万人あたり日本の6倍・多剤耐性結核蔓延国)野犬と狂犬病(毎月100名以上が診察)春〜夏のマダニ感染症——いずれも公衆衛生として明確に存在するリスクで、これに加えて救急車の搬送先は国立病院という医療体制の前提があります。

モルドバ全土でレベル2(不要不急の渡航中止)キシナウ全体の治安情報もあわせて確認してください。

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結核は日本の6倍 — MDR-TB蔓延国に指定

外務省「世界の医療事情」(令和6年10月1日)はモルドバの結核状況をこう書いています。

結核の発症率は、人口10万人あたり年間74人と日本の6倍です(2020年)。WHO世界保健機関は、モルドバをMDR-TB多剤耐性結核の蔓延国(high-burden country)30の一つに挙げています。

人口比日本の6倍、しかも多剤耐性結核(MDR-TB)の高蔓延国30か国にWHOから指定されている水準です。多剤耐性結核は通常の結核薬が効かないタイプで、治療が長期化・高額化します。

対策。

  • 人混みや咳をする人を避ける
  • マスクを携行(公共交通機関・観光地の混雑時)
  • 長引く咳、微熱、寝汗などの症状があれば、帰国前後に必ず医療機関を受診
  • 出発前に結核ワクチン(BCG)の接種歴を確認

HIV — 感染者1.4万人、年間新規800人

HIVについては、年間8百人弱の新規感染者があり、2020年の統計では、15歳以上のHIV感染者数は1万4千人です。

人口比で見ると日本(推計約2.2万人・人口1.25億)の数倍水準。不特定多数との性交渉のリスクは外務省が明記している通り。

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野犬と狂犬病 — 毎月100名以上が診察

キシナウ市内の特有リスクとして野犬と狂犬病があります。

モルドバでは、キツネなど野生動物の間で感染が維持されており、過去19年間に3名が狂犬病で亡くなっています。キシナウ市内でも野犬は多く、毎月百名以上が狂犬病専門医の診察を受けています。

外務省「安全対策基礎データ」も野犬被害をこう記録しています。

野犬による咬傷の事例が多く発生しています。野犬には近寄らず、特に夜は突然襲ってくることがありますので注意してください。

対応マニュアル。

  • 野犬には絶対に近づかない — 特に夜間
  • 咬まれた場合:流水で30分以上洗浄(石鹸があれば併用)
  • 即時に医療機関を受診し暴露後ワクチンの判断を受ける(24時間以内が望ましい)
  • 出発前に狂犬病ワクチン(暴露前接種)を済ませておくと、暴露後の追加接種回数が減る

マダニ媒介感染症 — ライム病・ダニ媒介性脳炎

外務省はキシナウ市内でも複数の感染事例があると書いています。

春から夏にかけて、マダニ(căpușă、英 Tick)に注意して下さい。モルドバでダニが媒介する感染症として、まずライム病(boala Lyme)が挙げられます。2018年には全国で2百人ほどの感染者が出ており、キシナウ市内でも複数の感染事例があります。 ライム病より頻度は少ないですが、ダニ媒介性脳炎も感染リスクがあります。これはウイルス性の脳髄膜炎で、重篤な後遺症が残ったり死に至ることもあったりする危険な感染症です。

予防。

  • 公園・草地・森林に立ち寄る際は長袖長ズボン、ズボンの裾を靴下の中に入れる
  • 虫除け(DEET 30〜50%)を3〜5時間おきに塗布
  • 帰宅後に全身を確認(ダニの咬着箇所がないか)
  • マダニが咬着していたら自分で取り除こうとせず病院を受診
  • アウトドアが多い人はダニ媒介性脳炎ワクチン接種推奨(ライム病ワクチンはなし

食中毒・飲料水

外務省は食品・飲料水のリスクも書いています。

気温の高い時期を中心に食中毒が散発します。原因は、サルモネラ菌、カンピロバクター、腸管出血性大腸菌EHEC等です。手作りの瓶詰や自家製ソーセージによるボツリヌス中毒も通年見られます。一流ホテルであっても、ビュッフェの作りおきの料理や水道水で作られた氷が入った飲料水などで食中毒が起きることがあるので、見た目だけで衛生面を判断しないように注意して下さい。

水源の汚染は深刻です。浄水場は改善が進んでいますが、地域や建物によっては、水道管の老朽化による鉄さび、鉛や銅の混入リスクを否定できません。水道水をそのまま飲むのは避けて下さい。

実践。

  • 水道水を直接飲まない — ペットボトルのミネラルウォーターを使う
  • ホテルビュッフェの作り置き料理に注意
  • 水道水で作られた氷入りの飲料に注意(カクテルのアイス、ジュース類)
  • 手作りの瓶詰・自家製ソーセージはボツリヌス中毒のリスク

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救急車の搬送先は国立病院 — Medparkは自力アクセス

キシナウの医療体制の最重要ポイントは次の構造です。

国公立の医療機関は、整備が遅れており、在留邦人は、外国資本の民間病院を利用するケースが多いようです。救急車は電話番号112で呼ぶことが出来ますが、搬送先は国立病院となります。

つまり緊急時に救急車を呼ぶと国立病院に搬送されることが前提。海外旅行傷害保険のキャッシュレス対応病院(多くは民間のMedpark等)に行きたい場合は、自力でアクセスするか、安定してからの転送になります。

緊急性が高い場合は「救急車を呼ぶ判断」を優先し、安定後に民間病院への転送を相談する流れが安全です。

主要医療機関 — Medparkを軸に

キシナウの主要民間病院。

  • Medpark International Hospital(Doga street 24, Chisinau, +373-22-400-040)— JCI Gold Seal認証の私立総合病院、海外旅行傷害保険キャッシュレス対応可
  • Moldovan-German Diagnostic Center(Bd. Negruzzi 4/2, +373-22-840-000)— 検査・診断重点の私立外来診療所
  • Caracas-Dental(Gheorghe Asachi street 65, +373-68-344-333)— 外国人利用者の多い私立歯科クリニック

医務官は駐在せず、在ポーランド日本国大使館医務官が担当

推奨ワクチン — 入国前の備え

外務省は次のワクチンを推奨しています。

経口感染症では食中毒・A型肝炎・感染性胃腸炎、呼吸器感染症では新型コロナウイルス感染症、インフルエンザ、気管支炎が主です。このほかに肝炎(B型・C型)、HIV、性感染症、結核等が報告されています。入国される方は、肝炎(A型・B型)、狂犬病、破傷風の予防接種を受けることをお勧めします。

加えて長期滞在・アウトドア活動が多い場合はダニ媒介性脳炎ワクチンの接種推奨(キシナウ市内でも複数の感染事例)。

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緊急性の低い手術・精密検査は本邦か近隣先進国で

外務省は重要な指針を明記しています。

モルドバの医療水準は周辺諸国と比較しても低く、衛生事情もよくありません。英語の通じる欧米系のクリニックは少なく、緊急時には、公立の救急病院または私立病院を受診することとなりますが、この際にはロシア語またはルーマニア語での会話が必要となります。緊急性の低い手術や精密検査については、本邦または近隣の先進国で行うことをお勧めします。

つまり精密検査が必要なケースはモルドバ国内では完結しない前提で動く必要があります。

モルドバ単独の高額医療事例なし — 近隣ヨーロッパ借用

モルドバ単独の海外旅行保険支払事例は、損保ジャパン off!・ソニー損保・ジェイアイ傷害火災・SBI損保いずれも公開されていません。観光ベース渡航者が少ないためです。

参考までに、近隣ヨーロッパの高額医療事例はこの水準。

  • フランスで腹膜炎入院 — 治療費1,610万円
  • ドイツでホテル浴室転倒 — 治療費639万円
  • イタリアで心筋梗塞 — 治療費1,011万円

(出典:SBI損保 高額医療費事例 / ソニー損保 海外でケガをしたときの実例

モルドバで重症化した場合、ルーマニア・ポーランド・ドイツなど近隣先進国への医療搬送を含めた治療救援費用は、上記事例と同水準以上を見込むのが妥当です。チャーター便での日本搬送は数百万円〜1,000万円超の事例が他国で報告されています。

治療救援費用は無制限または1,000万円以上、緊急移送特約付き、という設計が出発前のマスト。詳しくは ヨーロッパの海外旅行保険 に。

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出発前チェックリスト

  • 推奨ワクチン(A型肝炎・B型肝炎・狂犬病・破傷風)を出発前に接種
  • 長袖長ズボン+虫除け(DEET 30〜50%)で春〜夏のマダニ対策
  • 常備薬を多めに持参(モルドバの薬局では処方箋が必要なものが多い)
  • ペットボトルの水を購入習慣に、水道水を飲まない
  • 海外旅行保険で治療救援費用1,000万円以上+日本搬送カバー
  • 在モルドバ大使館の連絡先(+373-22-23-3380)と Medpark(+373-22-400-040)をスマホメモに
  • 救急番号 112 を覚える

よくある質問

モルドバの結核リスクはどれくらい?

結核の発症率は人口10万人あたり年間74人で日本の6倍。WHOはモルドバをMDR-TB多剤耐性結核の蔓延国(high-burden country)30の一つに指定しています。長引く咳・微熱・寝汗があれば帰国前後に医療機関を受診してください。

キシナウで野犬に咬まれたらどうする?

モルドバではキツネなど野生動物の間で狂犬病感染が継続しており、過去19年間に3名が亡くなっています。キシナウ市内の野犬は多く毎月100名以上が狂犬病専門医の診察を受けています。咬まれたら即流水で30分以上洗浄、すぐに医療機関で暴露後ワクチンの判断を受けてください。

救急車を呼ぶと民間病院に行ける?

いいえ。救急車(112)の搬送先は国立病院です。海外旅行傷害保険のキャッシュレス対応病院(Medpark等の民間病院)に行くには自力でアクセスする必要があります。緊急性が高い場合は救急車を呼ぶ判断を優先し、安定後に民間病院に転送する流れが現実的です。

モルドバのマダニ媒介感染症は?

春から夏にかけてマダニ(căpușă)に注意。モルドバでダニが媒介するライム病は2018年に全国で200人ほど感染、キシナウ市内でも複数の感染事例があります。ダニ媒介性脳炎はライム病より頻度は少ないものの重篤な後遺症や死亡例があります。長袖長ズボン、虫除け(DEET 30〜50%)、帰宅後の全身チェックが基本対策です。

医療水準が低い国で重症化したらどうなる?

外務省は「モルドバの医療水準は周辺諸国と比較しても低く、衛生事情もよくありません」「緊急性の低い手術や精密検査については本邦または近隣の先進国で行うことをお勧めします」と明記。重症ケースは日本またはルーマニア・ポーランド・ドイツなど近隣先進国への医療搬送が現実的選択肢で、チャーター便は数百万円〜1,000万円超の事例があります。

出典

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