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ロストバゲージ対処ガイド|モントリオール条約1,519SDR(約31万円)・PIR提出・21日ルール・寄託手荷物遅延特約の使い方

最終更新: 2026-05-07

海外旅行で「あ、これ本気でヤバい」の瞬間筆頭が、空港のベルトコンベアで自分のスーツケースだけ出てこないやつです。時差と寝不足で頭が回らないなか、ベルトが止まり、他の乗客がいなくなって、自分だけ立ち尽くす。実はこの直後の30分で何をやるかで、その後の補償額と「今夜着る服があるかどうか」が決まります

このページは、国際条約・航空会社の約款・業界統計・保険特約を突き合わせて、「空港で何をやる」→「何日以内に何を通知する」→「どこまで補償される」を実務の順番に並べたガイドです。2024年12月28日に国際条約の賠償限度額が上がったので、数字はその最新値で書き直してあります。荷物が無事に出てきても便そのものが消えていた場合は飛行機の遅延・欠航で何が返ってくるか、自分でキャンセルした場合の払戻可否は航空会社11社のキャンセル・払戻マップを参照してください。

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どのくらい起きるのか — 1,000人に6.3個、乗継で41%

業界団体IATA(国際航空運送協会)の2024年統計では、1,000人の乗客につき6.3個の割合で預け荷物がどこかに行く計算で、全世界で年間3,340万個・損失額は年50億ドル。さらに、ミスハンドルの41%は乗継便で発生しています。直行便なら体感は1,000人に6人くらい、乗継ありならもう一段上がると覚えておいてください。

安心材料として知っておきたいのは、加盟航空会社は預け荷物を4つのポイントで必ずスキャンする決まりがあること。チェックインのとき、飛行機に積み込むとき、乗継空港で荷物を下ろすとき、目的地で乗客に渡すときの4回。つまり「最後にどの空港でスキャンされたか」は航空会社のシステムで分かるようになっています。カウンターでその情報を出してもらえば、大まかな行方が追えます。

空港で最初にやること — ベルトから出る前に「PIR」を作る

ここが一番大事なので太字で。到着ロビー側の出口を通過する前に、航空会社のカウンター(Baggage Service OfficeやLost & Foundと書かれている)で「PIR(Property Irregularity Report、手荷物事故報告書)」を作ってもらってください。PIRに記載される番号が、以降の荷物追跡・航空会社への賠償請求・保険金請求のすべての起点になります。出口を抜けてしまうと手続きが一気に面倒になります。

カウンターで必要なもの:

  • 預け荷物のタグの控え(チェックイン時にスーツケースにつけられたバーコードシール。航空券ホルダーに貼られているはず)
  • 搭乗券・e-ticketの控え(スマホのスクショでOK)
  • パスポート(身元確認)
  • 滞在先の住所と電話番号(ホテル予約画面を見せるのが一番早い)

カウンターで必ず取っておく情報:

  • PIR番号(「KIXJL12345」のような英数字10桁前後の照会番号)
  • 追跡用のWebサイトのURL(PIR番号を入れるとステータスが確認できる)
  • 緊急連絡先の電話番号(滞在先に届いたときに知らせてくれる先)
  • 当面の立て替えの扱い(下着・着替え・洗面用具を自分で買う分、航空会社がどこまで払ってくれるか。航空会社によっては当日支給のアメニティキットを出してくれるところもある)

たとえば「成田→ドーハ→パリ」の旅程で「ドーハで最後にスキャンされた」と分かれば、「ドーハ発の便に載り損ねた=翌日の同じ便で送られてくる可能性が高い」と当たりを付けられます。空港を出る前にまとめて片付けるのが一番ラクです(到着日にやることチェックリスト にも同じ段取りを書いています)。

スマホのデータ通信をこの段階で確保しておく

PIR番号をもらっても、ホテルに着いてから追跡サイトが開けないと意味がない。空港到着ロビーに出る前にデータ通信が使えるようにしておくのがセットです。eSIMなら到着時点でアクティベート済みにできるので、カウンターで渡されたPIR番号をその場でスマホに入力して、追跡ページが開くか動作確認までやっておくと後が楽です。

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どこまで補償されるか — 国際線は約31万円が上限

航空会社の賠償責任は国際線ならモントリオール条約という国際ルールに従います。2024年12月に改定・2024年12月28日発効の最新値では:

項目1人あたりの上限
預け荷物(延着・破損・紛失すべて合算)約31万円(1,519 SDR。1 SDR≒201円)
旅客の死亡・傷害約3,053万円
旅客の遅延約127万円

預け荷物(受託手荷物)については、航空会社が「うちの過失じゃない」と言っても関係なく、この金額まで責任を負います。機内に持ち込んだ荷物は「航空会社の過失が証明できた場合のみ」という違いがあるので、預け入れと機内持ち込みで扱いが変わる点は覚えておいてください。

通知期限は「破損7日」「延着・紛失21日」

賠償をもらうには、期限内に航空会社へ書面で連絡する必要があります。JALやKLMの約款で共通ルールです。

状況期限起算日
破損(荷物は戻ったけど中身が壊れてた)7日以内に書面で異議受け取った日から
延着(遅れて届いた)21日以内に書面で異議受け取った日から
紛失(戻ってこない)21日以内に書面で異議本来受け取れるはずだった日から

裁判を起こす場合の時効は2年。到着日または到着予定日から起算します。

空港でPIRを作った段階で「通知」は事実上成立していますが、破損のケースで「家に帰ってからスーツケースを開けたら中身が壊れていた」パターンが一番危ない。受け取りから7日以内に連絡しないと賠償がゼロになり得ます。受け取り時にその場で空港のカウンターに申告するのがベスト、家で気づいたら即日メールが現実的なライン。

アメリカ国内線だけは別枠で最大$4,700

アメリカ国内線のみで完結する区間(たとえばロサンゼルス→ラスベガス)は、アメリカ運輸省の規則で1人あたり$4,700(約70万円)まで下限が保証されています(2024年10月改正)。これはモントリオール条約の国際線ルールとは別枠です。

「成田→ロサンゼルス→ラスベガス」のような国際線+アメリカ国内線の混在旅程で、ラスベガス到着時点で荷物が行方不明だった場合、$4,700枠が絡んでくる可能性があります。運用解釈は事業者次第なので、国際線の上限とアメリカ国内線の下限の両方を主張して交渉するのが実務的です。

21日を超えたら「紛失」扱いに切り替わる

何日経っても戻ってこない場合、21日を超えた段階で正式に「紛失(lost)」扱いになります。これが実務の大きな切り替え点で、ここから本格的な賠償請求フェーズに入ります。

紛失確定後に航空会社へ出す書類は:

  • スーツケース本体と中身の申告額(品目・購入時期・ざっくりの購入金額)
  • レシート・領収書がある物は全部添付
  • レシートがない物は自己申告(あやふやなら「不明」と書けばいい)

査定はレシートがある物ほど金額が通りやすいので、「自分のスーツケースに何を入れていたか」の棚卸しを事故当日のうちにやって、一覧でメモに残しておくのが後々効きます。メモアプリに「黒いパタゴニアのダウン、3年前に新宿ヨドバシで買った、2万円くらい」のような粒度で十分です。

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保険の「寄託手荷物遅延」特約は当日の現金として効く

航空会社からの賠償は「最終的な損害」に対する補償で、手続きから支払いまで数週間〜数ヶ月かかります。その間の「今日の下着・歯ブラシ・着替え代」は自分で立て替えるしかない。これを埋めるのが海外旅行保険の寄託手荷物遅延という特約です。

発動条件は「飛行機到着後6時間以内に荷物が届かないこと」。ソニー損保の定額型なら、追加出費の金額の大小に関係なく、1回の事故につき一律1万円が支払われます。

請求書類はたった2つ:

  • 航空会社が発行する遅延証明書(PIRの書類に記載されている)
  • 現地で買った日用品のレシート(コンビニ・ドラッグストアのレシートでOK)

つまり「PIRを作って、コンビニやドラッグストアで下着や歯ブラシを買って、レシートを捨てない」の3ステップで1万円が戻ってきます。レシートを捨てるとゼロになるので、そこだけ気をつけてください。

各社の特約料金は比較サイト「i保険」の比較表で見られます。10日間渡航時の追加料金はこのくらい:

会社タイプ10日間の追加料金備考
ソニー損保定額1万円200円寄託手荷物遅延は基本補償に最初から含まれる
SBI損保定額1万円260円
au損保定額1万円260円
たびほ定額1万円260円
損保ジャパン off!実損2万円50〜70円
ジェイアイ実損型250円
たびほプライム実損2万円260円実損払型

ソニー損保は寄託手荷物遅延が基本補償に最初から入っているので、別にオプションを付ける必要がないのがラク。他社は特約として追加する形で、10日間で260円前後。定額1万円で足りるか実損2万円が必要かは「どこで買い物するか」で決まります。ヨーロッパの日曜で薬局が閉まっていて高級百貨店で買うしかない、みたいなケースなら実損型、アジアのコンビニ圏なら定額1万円で十分です。

旅行ごとに保険を契約しない場合、クレジットカードの利用付帯保険で先回りしておく選択肢もあります。セゾンゴールド・アメリカン・エキスプレス・カード(初年度年会費無料・2年目以降11,000円)は寄託手荷物遅延10万円・寄託手荷物紛失10万円が利用付帯で付くので、保険会社の特約を毎回追加しなくても、ロストバゲージ発生時の追加出費を直接的にカバーできます。

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なお飛行機そのものの6時間以上遅延・欠航に備える「航空機遅延費用特約」は別枠(同じく定額1万円/実損2万円型)で、これはロストバゲージとは別のトラブル。両方の特約を同時に付けておく設計が一般的で、選び方は 航空機遅延費用特約 6社比較 にまとめています。遅延・欠航そのものの法的補償は 飛行機の遅延・欠航で何が返ってくるか が入口です。

パターン別の動き方

(a) 到着当日に出てこない

  1. ベルトコンベアから離れる前に航空会社カウンターでPIR発行
  2. 預け荷物タグの控え・搭乗券をスマホで撮影
  3. PIR番号で追跡サイトをブックマーク
  4. コンビニ・ドラッグストアで下着・歯ブラシ・着替えを購入、レシート保存
  5. 夜、ホテルで追跡サイトを確認。「最後にスキャンされた空港」から到着予測
  6. 翌日以降、同じ便で送られてきたら空港の到着ロビーで受け取るかホテル配達

(b) 戻ってきたが中身が破損していた

  1. 受け取りから7日以内に航空会社に書面で異議(メールか所定フォーム)
  2. スーツケース・中身の破損写真を複数アングルで撮る
  3. 購入時のレシート(あるもの)を添付
  4. 修理見積もりまたは同等品の購入見積もりを付ける
  5. 約31万円の上限枠の中で請求

理想は受け取り時にその場で空港カウンターに申告すること。帰宅後に気づいたら即日メールが現実的なラインです。JALの約款には「受け取り時に異議を述べなければ良好な状態で引き渡されたと推定される」と書かれているので、時間が経つほど争いにくくなります。

(c) 21日経っても戻らない

  1. 「延着」から「紛失」扱いに切り替わるタイミング
  2. スーツケース本体+中身の申告書を作成(品目・購入時期・金額)
  3. レシートがある物は全部添付、無いものは自己申告
  4. 約31万円の上限枠で賠償請求を書面で提出
  5. 海外旅行保険の携行品損害特約に入っていれば、重複しない範囲で追加請求
  6. 裁判を考える場合、到着予定日から2年が時効

(d) 乗継便でロストした場合

IATA統計ではミスハンドル全体の41%が乗継便で発生。一番多いパターンです。

  1. 最終到着空港でPIRを作る(乗継空港ではなく)
  2. 窓口は最後に運航した航空会社
  3. コードシェア便(複数社の名前で運航する便)の場合、実際に飛ばした会社と、チケットを売った会社のどちらに請求してもOK(KLM約款に明記)
  4. 「最後にスキャンされた空港」が乗継空港なら、次の同便で送られてくる可能性が高い
  5. 追跡サイトで毎日ステータス確認

コードシェアの場合、カウンターで「うちはコードシェアだから向こうに言って」と押し返されそうになっても、「どちらに請求しても良い」のが約款上のルールなので押し戻せます。

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まとめ — 出発前にやっておく3つ

ロストバゲージは確率的に起きます。1,000人に6.3個=旅行10回ごとに何かあるかもね、くらいの頻度。起きたときに金銭と精神力で削られないよう、出発前に3つだけ仕込んでおいてください。

  1. スーツケースのタグの控えをスマホ撮影(バーコード面をスキャン、クラウドに1枚置く)
  2. 中身の棚卸しメモ(高額品は購入時期と金額をざっくり。レシートが家にある物はスキャンしてクラウドに)
  3. 寄託手荷物遅延特約付きの海外旅行保険(10日間で260円前後、出てこなかったら現金1万円)

あと、荷物が出てこなかったときにパニックにならないのが一番大事。PIR番号を取る・下着を買う・レシートを捨てない、この3つを機械的にやれば、金銭面では「約31万円の条約枠+1万円の保険」でかなりカバーできます。

補償の土台をクレジットカードの利用付帯で組んでおくと、旅行ごとの保険手続きが軽くなります。エポスカード(年会費無料)で傷害治療200万円・疾病治療270万円の基盤を作り、セゾンゴールドAMEXで寄託手荷物遅延10万円・紛失10万円・出発遅延・乗継遅延の穴を埋めると、ロストバゲージとフライトトラブル両方の追加出費を回収できる構造になります。

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よくある質問

空港で荷物が出てこなかったら、まず何をすればいいですか?

バゲージクレームエリアから出る前に、航空会社のバゲージカウンター(Baggage Service Office / Lost & Found)でPIR(Property Irregularity Report、手荷物事故報告書)を作ってもらうのが鉄則です。ここで発行されるPIR番号と手荷物合符(タグ)の控えが、後日の追跡・賠償請求・保険金請求の全ての起点になります。出てしまってから「やっぱり」は面倒。IATAのResolution 753で4ポイント追跡が義務化されていて、航空会社側は「どこで最後にスキャンされたか」を把握しているので、カウンターでその情報を出してもらってください。

いくらまで補償されますか?

国際線はモントリオール条約の責任限度額が上限で、2024年12月28日発効の改定により**旅客1人あたり1,519 SDR(約31万円)**になりました(国土交通省、1 SDR≒201円)。旧値は1,288 SDR(約26万円)なので、古い案内を見ている場合は数字が更新されているか確認してください。これは「紛失・破損・遅延すべて合算」の上限で、受託手荷物は過失の有無を問わず航空会社が責任を負います(KLM約款)。米国内線のみの区間はDOT 14 CFR §254.4により$4,700/人が別枠の下限(2024/10/24改正)。

海外旅行保険と航空会社の賠償、両方もらえますか?

役割が違うので実務的には併用になります。航空会社の賠償は「紛失・破損・遅延の最終的な損害」に対する上限1,519 SDRの補償で、申請から支払までに数週間〜数か月かかります。一方で保険の「寄託手荷物遅延(定額払型)」は、航空機到着後6時間以内に荷物が届かず、現地で下着・日用品などを買った追加出費に対して**1回の事故につき1万円を定額**で払う即時性の高い補償(ソニー損保)。条約枠は「最終的な損害(紛失・破損分)」に充て、保険の定額1万円は「その場の着替え代」に充てる、という分担で考えると整理しやすいです。

国内線と国際線で何が違いますか?

適用される法律・条約が別物です。国際線(日本発着を含む)はモントリオール条約で1,519 SDR/人が上限。米国の国内線はDOT 14 CFR §254.4で$4,700/人の下限。日本の国内線は各社約款ベースで、JAL国際線約款もモントリオール条約準拠です。同じ旅程でも「成田→ロス→ラスベガス」のように国際線と米国内線が混在する場合、ロストした区間がどちらかで補償枠が変わり得ます(§254.4は米国内区間が同じ航空券に含まれる場合も国内線扱い)。乗継で失われる確率も高く、IATAの統計ではミスハンドルの41%が乗継で発生しています。

旅行先で買った下着や着替えの代金は返ってきますか?

「実損分」は航空会社の賠償枠(1,519 SDRの範囲内)で請求、さらに保険の特約を付けていればそこからも支払われます。ソニー損保の寄託手荷物遅延(定額払型)は、到着後6時間以内に荷物が届かず日用品購入などの追加出費が発生した場合に**金額の大小を問わず1万円を定額**で支払う仕組み。請求に必要な書類は「航空会社が発行する証明書(遅延証明書等)」と「追加出費により購入した商品の領収書・レシート」。つまりレシートは必ず取っておいてください。捨てると請求できません。

出典・参考