地中海に面した北アフリカの大国アルジェリア。世界遺産カスバの旧市街、サハラ砂漠のオアシス、ローマ遺跡など見どころは多いものの、ここは「それでも行く人向け」の国です。1990年代から2000年代初頭にかけて10万人を超えるテロ犠牲者が出た歴史があり、2013年1月のイナメナス事件では日本人10名が亡くなりました。今でも国内にはAQIM(イスラム・マグレブ諸国のアル・カーイダ)と JNIM(イスラムとムスリムの支援団)が活動しています。
外務省は地域別にレベル1〜4の四段階で危険情報を出していて、リビア・マリ・ニジェール・モーリタニアとの国境地帯はレベル4(退避勧告)。観光対象になるのは基本的に首都アルジェなど沿岸部のレベル1地域に限られます。さらに外国人がアルジェ県外に移動する際は政府公認ガイドの同行が義務で、自由旅行という概念がほぼ成立しません。
Travel Alert 01
海外の無料WiFiには危険が潜んでいる
あなたのアクセス、丸見えです
危険レベル --- 地域で4段階に分かれる
外務省の危険情報は地域ごとに細かく分かれています。
| 地域 | レベル | 概要 |
|---|---|---|
| 首都アルジェなど沿岸部・大部分 | レベル1 | 十分注意 |
| ブーメルデス、ブイラ、バトナ、メデア、ティジ・ウズ県の一部等 | レベル2 | 不要不急の渡航は止めてください |
| ティジ・ウズ県山間部、テベッサ、タマンラセット、ジャーネット、アドラール南部、リビア・チュニジア国境地帯等 | レベル3 | 渡航中止勧告 |
| リビア・ニジェール・マリ・モーリタニアとの国境地帯およびイリジ県イナメナス地区 | レベル4 | 退避勧告 |
砂漠地帯のジャーネットやタマンラセットといったサハラ観光の定番地はレベル3。観光ツアーで行く人もいますが、外務省は政府認可の旅行業者経由+衛星携帯持参を求めています。
犯罪の全体像 --- 2024年は約39万件、財産・身体・薬物が8割
2024年のアルジェリア全土の刑法犯認知件数は約394,000件(前年比+4%)、検挙率は約81%。罪種別では財産犯・身体犯・薬物犯がそれぞれ2〜3割で、合計8割以上を占めます。
治安当局は、一般犯罪への対策も強化していますが、依然として犯罪被害は多く、特に各種窃盗(侵入盗、自動車盗、車上狙い、ひったくり等)や強盗(侵入強盗、路上強盗)、誘拐、薬物犯罪などの発生が多く報じられています。
薬物犯は近年取扱件数が前年比+9%で増加中。未成年を含む若年層にまで違法薬物が浸透していると外務省は指摘しています。
カスバ地区はすり・強盗・殺人が発生
首都アルジェの観光ハイライトといえば、世界遺産にも登録されているカスバ地区の旧市街。ただし大使館の安全の手引きはこう書いています。
細い路地は迷路のように入り組み、密集した古い住宅は互いに支え合い、まるで地区全体で一つの構造体をなしているかのよう(中略)通りの見通しの悪さや複雑な街の構造は犯罪者にとっては好都合で、過去には、すりやひったくりなどの窃盗、強盗、違法薬物売買、更には殺人が発生しています。
大使館の指示は明快で、警察にエスコートを依頼(事前に観光協会等を通じカスバ警察署へ)した上で、現地を熟知するガイドと一緒に行動すること。夜間の立入りは絶対に避ける。フリーで散策する場所ではないと割り切るべきです。
このほかアルジェ県東部のフセイン・デイ、バラキ、エル・ハラッシュ、バーブ・ズアール、ボルジェル・キーファーン、ウーカリプチュス、ボルジェル・バハリ、アイン・タイヤ、ルイバといった庶民街も「不用意に立ち入らないように」と名指しされています。
詳しくはアルジェの治安で。
Travel Alert 02
海外の決済で3.5%も搾取されている現実
あなたは知っていますか?
テロ・誘拐 --- イナメナス事件以降も警戒継続
2013年1月のイナメナス事件以降、アルジェリア政府はテロ掃討作戦を継続。2025年12月までにテロリスト1,000人以上が殺害・逮捕・投降し、うち700人以上はAQIM関係者とされています。それでも組織は消えていません。
アルジェリア国内では、北東部山岳地帯を中心に活動する「イスラム・マグレブ諸国のアル・カーイダ」(AQIM)や南部国境地帯及び南部隣接国内での活動を主とする「イスラムとムスリムの支援団」(JNIM)が存在しています。
近年もテログループが設置した手製爆弾で市民が被害に遭う事件が起きていて、テロ可能性は依然として社会に存在すると大使館は明言。2025年1月には南部国境地帯でスペイン人観光客が誘拐される事案も発生しました(ほどなく解放)。同年2月にはテロ資金獲得目的でアルジェリア人を狙った誘拐事件も。
長距離移動は陸路を避け、可能な限り空路で。砂漠地帯に渡航する場合は政府公認ガイドの同行が義務付けられています。北アフリカで観光地を狙ったテロを経験しているチュニジア(バルドー博物館で日本人3名死亡)や、薬物・テロ警戒下のエジプト(ピラミッド周辺で爆発事件)も同レベルで見ておこう。
写真撮影 --- 軍・警察関係施設で没収・拘束リスク
アルジェリアでは軍関係施設・警察関係施設の写真撮影は禁止。政府関係施設や商業施設でも撮影禁止のことがあり、南部砂漠地帯では歴史的価値のある美術品(壁画等)の撮影も禁止されています。撮影禁止区域で撮影すると、治安当局にカメラ・記録メディア・写真を没収されることがあります。同じ撮影禁止が厳しいサウジアラビアでは身柄拘束された日本人事例もある。「撮らないが基本」「撮るなら現地ガイドに毎回確認」が安全。
外貨申告 --- 出国時7,500ユーロ超は没収・罰金
ここを知らないと出国時に詰む人がいます。
出国時の外貨所持検査は、厳格に行われており、1,000ユーロ相当以上の外貨を持出す場合にも申告義務があります。ただし、7,500ユーロ相当以上の外貨を持出すことは禁止されています。これに違反したとして、現金を没収されたり、罰金支払を命じられたりする事案が発生していますので注意してください。
入国時に1,000ユーロ相当以上を持ち込む場合は税関の申告用紙にスタンプを押してもらうこと。この控えがないと出国時に「どこから持ち出した金か」を証明できず、没収のリスクが上がります。許可を得ていない業者による外貨換金(不正両替)も摘発対象。詳しくはアルジェの両替・詐欺へ。
Travel Alert 03
無料クレカの"海外旅行保険の限界"は?
補償額をふやすウラ技も
アルジェ県外は政府公認ガイドが義務
アルジェリア政府は外国人がアルジェ県外へ移動する際、治安機関への届出と警察等エスコート、または政府認可旅行業者の同行を義務付けています。旅行業者に依頼せず観光目的で地方空港に到着した場合、警察が空港から出ることを認めません。レベル1の地域でも、アライバルビザ対象地域は政府認可旅行会社のツアーのみ可。
南部砂漠地帯には携帯電話の届かない区域が広がるので、ツアー会社を選ぶ際は衛星携帯電話を持参する会社を選んでおくと安心。「とりあえず現地で考える」式の旅行スタイルは通用しません。
イスラム教国のマナー --- 露出・飲酒・モスク
国民のほとんどがイスラム教徒。アラブ・イスラム文化圏でも比較的西欧の影響が強い国ですが、戒律を守る人は多く、地方ほど顕著です。
- 過度な肌の露出は控える。女性は特に意識する
- アルコールへの嫌悪感が強く、過去に酒類提供店が襲撃された事件あり。2020年2月には首都アルジェで飲酒していた当国人の若者が殺害される事件も発生
- モスクなど宗教施設への観光気分での立入り・写真撮影は不敬と見なされる可能性大
- 金曜日の宗教施設、犠牲祭、ラマダン月は宗教的気分が最も高揚する時期。配慮を増す
ホテルやレストラン以外での飲酒は避ける。イスラム圏全般のマナーは致命的禁忌マップもあわせて。
薬物・銃器・ドローン
- 違法薬物は厳罰対象。空港・国境での密輸取締り強化中
- 銃器所持は外国人含め全面禁止
- ドローン持込み・所持禁止(一般使用目的)
「うっかり持ち込んだ」も通用しないので、出発前に荷物を確認しておこう。
Travel Alert 04
知らずに大損している海外ATMの罠
DCCって知ってますか?
医療費の実態 --- 緊急搬送は欧州送りで桁が変わる
アルジェリアの医療水準は地域差が大きく、首都アルジェには国立病院・私立クリニックがあるものの先進医療は限定的。重症の場合はフランスやスペインなど欧州への医療搬送が一般的で、保険なしだと桁違いの請求になります。
アルジェリア独立の保険会社支払い事例は見当たらないので、北アフリカ・近隣アフリカの参考事例を見ておきます。
| 国・地域 | 内容 | 支払額 |
|---|---|---|
| エジプト(参考) | ホテルで倒れ脳内出血、18日間入院+医療搬送 | 895万円 |
| エジプト(参考) | 帰国便搭乗時に肺炎、12日間入院 | 415万円 |
| ジンバブエ(参考) | 鉄橋で転倒・大腿骨骨折、南アフリカへチャーター機で医療搬送+15日間入院・手術 | 505万円 |
出典: SBI損保「アフリカ・中南米旅行での高額医療費事例」。アルジェリアは搬送先が地中海を越える分、ジンバブエ→南アフリカと同等以上の搬送費が乗ると見ておこう。クレカ付帯保険だけだと利用条件や補償額の上限に引っかかる場合があるので、出発前に確認しておこう。
詳しくはアフリカ旅行の保険ガイドへ。
通信手段 --- 砂漠地帯は圏外、出発前にeSIM
アルジェ市内は携帯通信が使えますが、南部砂漠地帯は圏外区域が広い。砂漠ツアーでは衛星携帯持参のツアー会社を選ぶこと。都市部メインなら出発前にeSIMを用意しておくと現地SIM購入の手間が省けます。eSIM比較ガイドを参考にしてください。
Travel Alert 05
空港であなたを待ちうける5つの罠
準備はできていますか?
緊急時の連絡先
| 機関 | 電話番号 |
|---|---|
| 警察 | 17 または 1548 |
| 救急 | 3016 |
| 消防 | 14 |
| 在アルジェリア日本国大使館 | +213 (0)23 37 55 11 / 37 55 33 / 37 55 44 |
短期渡航でも「たびレジ」に登録しておこう。退避勧告が拡大した際の情報配信や、テロ情勢の更新を受け取れます。