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アンタナナリボの医療 ペスト肺感染と犬の狂犬病多発【2026】

アンタナナリボの医療・感染症の手口や予防策、被害時対応を、外務省と在外公館の事例からわかりやすくまとめました。

UPDATED · 2026.04.27 KAIGAI-RISK

マダガスカルは現代の旅行先としては例外的に感染症リスクが高い国です。ペスト(風土病)・マラリア・狂犬病・ポリオ――どれも日本では聞かなくなった名前ですが、この国では日常的に人が死んでいます。そして医療水準は低く、重症化したら首都アンタナナリボからでも南アフリカやパリへの緊急移送が前提。保険なしで来ていい国ではありません。

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医療水準 --- 公立病院は邦人利用不可、私立でも限界

外務省「世界の医療事情 マダガスカル」(令和6年10月1日)の記述は衝撃的です。

公立病院は無料あるいは非常に低額な料金で受診可能です。しかし、医薬品の他、注射器などの器具まで患者側で用意する必要があり、食事は自分で賄わねばなりません。大学病院でさえも老朽化し病室は非衛生的で、医療機器は故障により使用できないことがしばしばあります。サービスも悪く、常に人であふれ、治安の問題さえもあり、邦人が利用できる環境ではありません。

アンタナナリボの私立病院(Polyclinique d’Ilafy、Espace Medical等)なら血液検査・CT・MRI・内視鏡検査は可能ですが、「故障や担当者不在のため検査が出来ないことがよくあります」「一般的にマダガスカル語とフランス語以外は通じません」という状況。日本のような検査精度や看護は期待できない。

重症なら南ア・パリへ緊急移送

外務省の結論はこう。

当地の医療事情を考慮すると、輸血や全身麻酔の必要な外科手術、心筋梗塞に対するカテーテル治療などの侵襲的な治療を受けることは危険を伴います。このため重症の場合、富裕層や在留フランス人はしばしばレユニオン(フランス海外県)、モーリシャスで治療を受けています。邦人は保険会社の判断により、南アフリカ、パリ等へ緊急移送となることが多いです

大使館「安全の手引き」も「緊急移送を利用した場合、高額な費用が必要」「事前にこれをサポートしている海外(旅行)傷害保険に加入しておくことが必要」と繰り返し強調。加えて「当地の病院では手術や入院治療が必要な場合、頭金(ディポジット)の納付を求められ」「日本の保険会社の支払い保証が通じないことがあります」という注意まで。

マダガスカル単独の保険会社支払事例は公開されていませんが、アフリカ地域の参考として、ジンバブエから南アフリカへの医療搬送で約505万円(SBI損保 015)、南アフリカで暴漢に襲われ死亡した事例が約350万円(損保ジャパン off!)が記録されています。マダガスカルからの緊急移送は搬送距離がさらに長いため、この水準以上になる可能性が十分あります。

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ペスト --- 世界有数の流行国、2017年に首都で肺ペスト大流行

外務省より。

マダガスカルは世界有数のペスト流行国であり、通常はヒトからヒトへの感染がほとんど見られない「腺ペスト」が流行の主体です。2017から2018年シーズンは大流行し、首都など都市部でも致死率の高くヒトからヒトへ感染する「肺ペスト」が流行した結果、3000名近くの感染者、200名以上の死亡者を出しました。

流行は毎年雨期を中心に7月末〜4月。沿岸地域を除く中央部が流行地域で、首都アンタナナリボも含まれる。腺ペストはノミ・ネズミが媒介するため、野外でのネズミとの接触を避ける、宿泊先の衛生状態を確認する、高熱が出たら速やかに受診――が基本対策。ペストは抗菌薬で治療可能ですが、特に肺ペストは治療が遅れると致死的。

マラリア --- 首都は稀だが地方は蔓延、熱帯熱マラリア90%超

首都アンタナナリボは高地のためマラリアの発生は稀ですが、地方は別世界。東海岸では通年、北・西海岸では主に雨季にマラリアが蔓延しています。しかもマダガスカルでは「重症化しやすい熱帯熱マラリアが90%以上を占め、初期に適切な治療が行わなければ貧血、腎不全、脳症等によって死亡することがあります」(外務省)。

バオバブ街道(ムルンダヴァ、西海岸)・ノシベ(北部)・東海岸の国立公園に行く場合はマラリア予防薬(メフロキン・マラロン等)が必要。出発4週間前に渡航外来で処方を受けておこう。

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狂犬病 --- 噛んだ犬の80%が陽性

外務省の数字は衝撃的。

マダガスカルでは今なお毎年数十名の狂犬病患者が発生しています。潜伏期を経ていったん発症すれば治療法は無く、ほぼ確実に死亡する危険な病気です。

当地における犬の狂犬病予防接種率は2%程度で、2021年には人を噛んだ後に死亡した犬100頭を解剖し診断した結果、80頭が狂犬病に罹患していたと報告されており、噛まれた場合の狂犬病罹患リスクは高いと思われます。

首都でも野犬や放し飼いの犬は多い。噛まれたらすぐに傷口を流水と石鹸で洗い、アンタナナリボのパスツール研究所で曝露後接種を受ける。パスツール研究所によると「首都アンタナナリボ市だけで年間6000人が曝露後ワクチン接種を受けている」レベルで、それだけ咬傷事故は日常茶飯事ということ。動物好きの人でも犬には近づかないこと。

ポリオ --- 首都の環境検体からも検出

外務省によると「2021年に12例、2022年9月現在11例のワクチン由来1型ポリオ(cVDPV1)が報告」されており、「首都アンタナナリボを含むアナラマンガ地域圏の環境中の検体からもcVDPV1が検出」されています。WHOはマダガスカル渡航前にポリオワクチンの追加接種を推奨。日本の定期接種を受けていれば一定の免疫はありますが、追加接種(IPV)で確実に守れます。

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食中毒・感染性胃腸炎 --- 最も遭遇しやすい

外務省は食中毒・感染性胃腸炎を「マダガスカルで最も遭遇しやすい疾病」と位置づけています。「トイレの後に手洗いを行う習慣は一般的ではなく、特に現地調理人やウェイターの手洗いが不十分であった場合は感染源になる」。腸チフスも珍しくない。水道水は飲用不可(「配管の老朽化などのため褐色に汚濁することがあり、細菌の混入も危惧される」)。ミネラルウォーター・加熱済み食品を徹底し、下痢がひどければ脱水防止で点滴治療を受ける。強い下痢止めは逆効果になる場合も。

出発前にやっておくこと

  • 海外旅行保険に必ず加入。治療救援費用は最低1,000万円、緊急移送カバー必須。「保険会社の支払い保証が通じないことがある」ため、キャッシュレス対応の可否を事前確認
  • 渡航外来を受診(出発4週間前): A型肝炎・B型肝炎・破傷風・腸チフスのワクチン接種、地方移動ならマラリア予防薬、犬との接触が想定されるなら狂犬病の曝露前接種
  • ポリオ追加接種(WHO推奨)
  • 常用薬・常備薬は日本から持参。「市中の薬局には正規薬剤に混じって偽物・粗悪品が流通」している国です
  • eSIMを出発前に設定。停電・断水が続く期間はWi-Fiも不安定。通信は緊急連絡の生命線。比較はeSIM比較ガイド

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緊急時

機関電話番号
在マダガスカル日本国大使館(24時間)032-07-072-11
消防・救急車18 または 118
Soavinandriana 病院(旧軍病院)020-23-397-51
Polyclinique d’Ilafy020-22-425-66
Espace Medical020-22-625-66
パスツール研究所(狂犬病ワクチンセンター)アンタナナリボ市内

救急車は「公的な救急搬送システムは機能していない」ため有料で台数も少ない。交通渋滞で到着に時間がかかるので、軽傷でなければ自分でタクシーを呼んで私立病院に直接行く方が早いのが現実。

アンタナナリボの治安全般マダガスカルの治安もあわせて確認しておこう。保険の備えはアフリカ旅行の保険ガイドへ。

よくある質問

アンタナナリボでマラリアに感染する?

外務省「世界の医療事情」は「首都アンタナナリボは高地にあるためマラリアの発生は稀」と書いていますが、東海岸(通年)・北西海岸(雨季中心)では蔓延。首都から地方に移動する場合はマラリア予防薬が必要です。マダガスカルの熱帯熱マラリアは90%以上を占め、「初期に適切な治療が行わなければ貧血、腎不全、脳症等によって死亡することがあります」。

ペストって現代でもかかるの?

マダガスカルは世界有数のペスト流行国で、毎年雨期(7月末〜4月)を中心に発生。2017-18年シーズンは首都を含む都市部で致死率の高い「肺ペスト」が流行し、約3000人感染・200人以上死亡。通常の腺ペストはノミやネズミが媒介、肺ペストはヒトからヒトへ飛沫感染します。野外でネズミに近づかない、宿泊先の衛生状態を確認する、発熱時は速やかに受診が基本です。

犬に噛まれたらどうすればいい?

外務省によると「2021年には人を噛んだ後に死亡した犬100頭を解剖し診断した結果、80頭が狂犬病に罹患」しており、噛まれた場合の感染リスクは極めて高い。すぐに傷を流水と石鹸で洗い、アンタナナリボのパスツール研究所で曝露後接種を受けてください。発症すればほぼ確実に死亡する病気です。渡航前の事前接種(曝露前接種)も検討を。

マダガスカルの病院で手術はできる?

外務省は「輸血や全身麻酔の必要な外科手術、心筋梗塞に対するカテーテル治療などの侵襲的な治療を受けることは危険を伴います」と明記。重症の場合「邦人は保険会社の判断により、南アフリカ、パリ等へ緊急移送となることが多い」。そのため緊急移送費をカバーできる海外旅行保険が必須です。

出典

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