サンサルバドルの強盗は「銃か刃物を持った相手と路上で対峙する」現実が、今でも残っています。例外措置体制で殺人は2015年の年間4,000件超から2025年の82件まで激減しましたが、強盗288件・窃盗2,299件は健在(2025年・大使館統計)。観光客が直面するリスクの実態を、外務省・大使館の事例で見ていきます。
Travel Alert 01
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強盗時の鉄則 --- 抵抗しない、これが第一原則
エルサルバドル滞在で最も重要な鉄則は「抵抗しない」。在エルサルバドル日本国大使館の安全の手引きから:
オ 強盗等の犯罪に遭遇しても絶対に抵抗しない。
そして大使館の補足:
犯人は、犯行時に銃器や刃物を使用しているため、強盗に遭遇した際は、自らの安全を第一に考え、犯人への抵抗や刺激するようなことは避けてください。
日本の感覚で「とっさに振り払う」「大声を出す」のは致傷リスクを直接上げる行動です。エルサルバドルの強盗は素手ではなく、ほぼ凶器を持っている前提で動く必要があります。
「捨て金20ドル」戦略 --- 大使館推奨の備え
大使館が公式に推奨する備えがこれ:
カ 強盗遭遇時に備えて、捨て金(現金20ドル程度)や、普段使いとは別の携帯電話を準備しておき万が一の強盗遭遇時はそれらを差し出すことで被害を最小限にとどめることが可能です。
外務省の防犯対策にも明示:
強盗対策として、ポケットに20ドル程度の現金、使わない携帯電話を持っておき、金品を要求された際は、それらを目配せ等で場所を伝え相手に差し出すことも有効です。
隣のホンジュラスでも同じ「抵抗しない+捨て金」ドクトリンが大使館から出ていて、中米共通の生存術です。つまり「奪われていい財布」を別に持っておくのが基本装備。具体的には、
- 捨て金用の薄い財布: 20ドル札1枚+小銭・期限切れカード数枚
- 古いスマホ: 普段使いと別の安いスマホ(中古機・SIMなしでも可)
- 本物の貴重品: ボディバッグの内側・腹巻ポーチ・靴下の中など別所に
ポケットに「奪われてもいい一式」を入れておけば、遭遇時に目配せで場所を伝えてサッと差し出せる。これで命とパスポートと本物の現金は守れます。出発前に揃えておく一手間で、最悪のケースの被害が桁違いに変わります。
刃物・けん銃の使用率 --- 日本人の被害例
外務省データに記録されている日本人の被害例は、刃物・けん銃の使用率の高さを物語ります。
徒歩で移動中、数人の強盗犯に刃物で襲撃され、パスポートや財布が入ったバッグを強奪された。その際、刃物で腹部を刺され負傷した。
※実際の被害報告をもとに再構成した事例です(出典:外務省 海外安全ホームページ「エルサルバドル 安全対策基礎データ」)
腹部刺傷はそのまま生死に関わる怪我。サンサルバドルから日本までの医療搬送は10時間超かかります。次の事例:
自転車旅行者が、10人以上の武装集団にけん銃等で襲撃され、パスポートを含む所持品(総額40万円以上)を強奪された。その際、けん銃で殴られる等したほか、靴も強奪された。
※実際の被害報告をもとに再構成した事例です(出典:外務省 海外安全ホームページ「エルサルバドル 安全対策基礎データ」)
10人以上の武装集団による襲撃が現実に起きています。靴まで奪われる徹底ぶりで、被害総額は40万円超。自転車旅行など車両のない移動形態は、逃走手段がないこと自体が大きなリスクになります。
3件目:
出勤途中に強盗に遭い、所持品全てを強奪された。
※実際の被害報告をもとに再構成した事例です(出典:外務省 海外安全ホームページ「エルサルバドル 安全対策基礎データ」)
出勤途中という日常動線が狙われる。徒歩通勤・徒歩移動が標的になりやすいことを示しています。
Travel Alert 02
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車両強盗 --- 信号待ち・渋滞中の乗り込み
エルサルバドル特有の手口がこれ。レンタカーや配車サービスを使うときに知っておくべき大使館の警告:
車両強盗は、運転手から車を強奪する行為となります。過去には、信号待ちや渋滞で車が停止した隙を狙って、車両に乗り込んで来たケースもあるため、乗車中は、ドアロックを励行し、走行中であっても周囲の状況次第では窓を開けるのは控えてください。
信号待ちで助手席や後部座席に乗り込まれる手口です。対策は、
- 常時ドアロック: エンジン始動と同時に全ドアロック
- 窓は閉める: 走行中の窓開けは周囲確認してから
- 信号待ちで車間を詰める: 前の車に近接して停車(割り込まれにくい配置)
- 荷物は外から見えない位置に: 助手席・後部座席に置かない、トランクへ
- 信号待ちでスマホを出さない: 注意散漫+強奪標的
サンサルバドル中心部から空港に向かう道路や、夜間の幹線道路は特にリスクが上がります。
走行中パンク偽装 --- 路肩停車を狙う手口
もう1つエルサルバドル特有の手口。
走行中の車両をパンクさせ、運転者が路肩に車を止めたのを見計らい、犯人が運転者に近づき金品を窃取するという事件も発生していることから、車両走行中に異変を感じたとしても、周囲の安全が確認できるまで車両を停止させないことも必要です。
犯人が車両に細工をして強制的にパンクさせる、運転者が路肩に止めた瞬間に「親切な人」を装って近づき強盗、というシナリオです。対策は、
- 異変を感じても即停車しない: ガソリンスタンド・大型商業施設・警察署など人と監視のある場所まで走り続ける
- タイヤ修理は無人路肩でしない: パンクを確信しても、まず安全な場所に移動
- 「親切な人」の声かけに応じない: 路肩停車中の車に近づく見知らぬ人物は警戒対象
レンタカー会社の24時間サポート番号は出発前にスマホとは別の紙にも控える(スマホごと奪われた場合の保険)。
銀行追跡型のバイク強盗 --- 中米全体の頻出手口
外務省データに残る、銀行から出た直後を狙うバイク強盗:
銀行で現金を引き出し、帰宅する途中に、2台のバイクに分乗した4人組の男にけん銃で脅され、現金、腕時計等を奪われた。
※実際の被害報告をもとに再構成した事例です(出典:外務省 海外安全ホームページ「エルサルバドル 安全対策基礎データ」)
ATM・銀行に滞在中の観察 → 出てきたタイミングでバイク追跡 → 信号待ちで包囲 → けん銃突きつけという流れです。ATM側の対策は詐欺・ぼったくりに詳述しましたが、強盗側から見た要点だけ繰り返すと、
- 路上ATMを使わない: ホテル内・大型商業施設内のみ
- 引き出し直後は徒歩移動しない: 配車アプリかタクシーでドアtoドア
- 腕時計・アクセサリーを着けない: 「金を持っている」と判断される材料を見せない
- 1回の引き出し額は最小限: 200ドル以下を目安
Travel Alert 03
無料クレカの"海外旅行保険の限界"は?
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ホテル内強盗・侵入 --- 一定基準のホテルでも
外務省データの宿泊施設関連の被害例:
一定基準を有するホテルにもかかわらず、寝袋、現金、航空券を盗まれた。
※実際の被害報告をもとに再構成した事例です(出典:外務省 海外安全ホームページ「エルサルバドル 安全対策基礎データ」)
「一定基準を有するホテル」でも盗まれる現実。スリ・ひったくりでも同じ事例を取り上げましたが、宿のグレードは犯罪を完全には防ぎません。対策は、
- ドアチェーン+追加のドアストッパー: 持参用の小型ドアストッパーが効く
- 客室金庫の暗証番号は誕生日にしない
- 「ハウスキーピング」を装った侵入に注意: チェック時間外のドアノックには応じない
- チェックアウト時に部屋の全箇所をスマホ撮影: 後日請求やトラブル防止
セントロ地区(旧市街)の安宿はそもそも避ける、これは大使館も明示しています。宿泊はエスカロン・サンベニートが基本選択肢。
殺人は激減、強盗は健在 --- 数字で見る現状
例外措置体制(2022年3月発効)以降の推移を、大使館統計で確認しておきます。
| 種別 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 | 2025 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 殺人 | 1,322 | 1,140 | 496 | 156 | 114 | 82 |
| 強盗(車両強盗含む) | 2,940 | 3,960 | 2,339 | 1,354 | 664 | 288 |
| 窃盗(車両盗難含む) | 5,784 | 7,402 | 7,298 | 7,313 | 5,801 | 2,299 |
殺人は16分の1、強盗は10分の1まで減少。一方で強盗288件・窃盗2,299件は依然として観光客が遭遇しうる規模です。「もう安全になった」と油断するのではなく、「組織的なギャング抗争は減った、しかし個別の強盗は残っている」と理解するのが正確な現状認識です。
大使館は今後の見通しについても明示しています:
例外措置体制については、逮捕状なしでの容疑者の逮捕・拘束が可能であるため、不当な拘束や誤認拘束に関して、国内外から問題提起がなされており、今後、マラス側からの反発、や再活性化等を通じた治安悪化の可能性も否定できない状況となっております。
マラスの再活性化リスクは残っている。これも頭の片隅に置いて備えるべきです。
手口早見表
| 手口 | 発生場所 | 対策 |
|---|---|---|
| 路上の徒歩強盗(刃物) | セントロ地区・路地・スラム周辺 | 徒歩単独移動を避ける・夜間移動禁止 |
| 武装集団による襲撃(けん銃) | 自転車旅行・徒歩長距離 | 車両移動が原則 |
| 信号待ち車両強盗 | 幹線道路・交差点 | 常時ドアロック・窓閉め |
| 走行中パンク偽装 | 走行中の車両 | 異変でも安全な場所まで走り続ける |
| 銀行・ATM追跡(バイク) | 銀行・ATM周辺 | ホテル内ATM+直後は車両移動 |
| ホテル内侵入・盗難 | 宿泊施設全般 | ドアチェーン+客室金庫+撮影記録 |
Travel Alert 04
知らずに大損している海外ATMの罠
DCCって知ってますか?
出発前に決めておくこと
サンサルバドルでの強盗対策は、「遭遇したら抵抗しない」を心理的に決め切ること+「奪われてもいい一式を別に持つ」の2点に尽きます。
- 捨て金20ドル+古いスマホ: ポケットに常備、すぐ取り出せる位置に
- 本物の貴重品はボディバッグ内側: 腹巻ポーチや靴下の中など別所
- 徒歩単独行動を避ける: 観光は昼間・複数人・短時間
- 夜間移動はホテル経由配車のみ: 流しタクシー・配車アプリの夜間利用は控える
- 車両は常時ドアロック: 信号待ちで窓開けない・スマホ出さない
- ATMはホテル内・商業施設内: 引き出し後は車両移動
- 腕時計・アクセサリーを外す: 観察犯のターゲティング材料を減らす
- 宿泊はエスカロン・サンベニート: 旧市街・バスターミナル周辺の安宿は避ける
被害に遭った場合の対応
万が一強盗に遭ったら、まず抵抗しない。これが最優先です。
- 言われた通りに金品を差し出す: 捨て金20ドル+古いスマホで対応できればベスト
- 安全な場所に移動: 加害者が立ち去った後、ホテル・大型商業施設・大使館へ
- 怪我があれば救急 132: Fosalud救急、刺傷・打撲は即受診
- 警察 911、被害届提出 122: ポリスレポート取得(保険請求に必須)
- クレジットカード会社に連絡: 国際電話または直営アプリでカード停止
- パスポート盗難: 警察証明書を取得後、在エルサルバドル日本国大使館(領事班直通 (503) 2528-1125、領事班携帯 (503) 7885-6763)で再発行手続き
- 海外旅行保険会社に連絡: 24時間サポートデスクから医療搬送・治療手配
緊急電話番号:
- 警察 911 / 被害届提出 122 / 交通警察 2529-0000
- 消防 913
- 救急(Fosalud)132
スマホごと奪われたケースを想定して、緊急番号は紙のメモにも控える。ホテルのフロント電話を借りて連絡できる準備も大事です。
Travel Alert 05
空港であなたを待ちうける5つの罠
準備はできていますか?
凶器強盗のリスクと医療搬送 --- 中南米地域の参考額
エルサルバドルの強盗は刃物・銃使用が一般化しているため、腹部刺傷・打撲・銃創で重傷になる可能性があります。中南米地域の保険会社事例でペルーで脳梗塞→医療搬送1,144万円(SBI損保)。エルサルバドル単独での支払事例は公表されていませんが、サンサルバドルから米国・メキシコへの医療搬送が現実解で、傷害でも同レベルの搬送費用が想定されます。緊急移送サービス付きの海外旅行保険は実質必須です。詳しい比較は中南米の海外旅行保険で。
よくある質問
エルサルバドルの強盗に遭ったら抵抗していい?
抵抗しないでください。大使館が「強盗等の犯罪に遭遇しても絶対に抵抗しない」「犯人は、犯行時に銃器や刃物を使用しているため、強盗に遭遇した際は、自らの安全を第一に考え、犯人への抵抗や刺激するようなことは避けてください」と明示しています。日本人の被害例で刃物による腹部刺傷・けん銃殴打が記録されており、抵抗は致傷リスクを大きく上げます。
殺人は激減したのに強盗はまだ多いの?
そのとおりです。2025年の殺人事件は82件まで減少(10万人あたり1.3人)した一方、強盗は288件・窃盗は2,299件発生。例外措置体制でマラスの縄張り抗争は激減しましたが、個別の強盗・窃盗・車両強盗は健在です。観光客が遭遇するのは殺人ではなくこの強盗カテゴリ、と理解しておくのが正確な現状認識です。
「捨て金20ドル」って何?
大使館が公式に推奨する強盗対策。普段使いの財布とは別に、ポケットに20ドル程度の現金と使わない携帯電話を持ち、金品を要求された際に目配せ等で場所を伝えて差し出すことで被害を最小限にとどめる手法です。「全部奪われたら帰国できない」状態を防ぐ実用的な備え。スマホは古い予備機を別途用意する人が多いです。