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エルサルバドルの治安 殺人激減でも強盗と窃盗が横行【2026】

エルサルバドルの治安や危険エリア、トラブル、医療費を、外務省と在エルサルバドル日本国大使館の情報からわかりやすくまとめました。

UPDATED · 2026.05.03 KAIGAI-RISK

エルサルバドルは「世界で最も殺人事件が多かった国」から「中米で最も治安が良い国」へと、わずか10年で景色を塗り替えた国です。在エルサルバドル日本国大使館の安全の手引き(2026年4月改訂)によれば、2015年に人口10万人あたり105人だった殺人率が、2025年は1.3人まで激減。これは日本(約0.2人)に近い水準です。ただ、ここで「もう安全だ」と早とちりすると痛い目に遭います。強盗は2025年だけで288件、窃盗は2,299件、ほとんどが銃器・刃物使用。例外措置体制でマラス(MS-13、M18R、M18S)を一時的に押さえ込んでいるだけで、再活性化リスクは公的に認められています。安心して旅するための前提を整理しておきます。

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危険レベル --- 国全体レベル1、首都圏6区はレベル2

外務省はエルサルバドル全土をレベル1(十分注意)、3県6区はレベル2(不要不急の渡航中止)に指定しています。

危険レベル2(不要不急の渡航は止めてください):サンサルバドル県メヒカノス、アポパ、シウダ・デルガード/ラ・リベルタ県コロン、ケサルテペケ/ラ・パス県サカテコルカ

これらの地区は首都サンサルバドルの周辺都市で、観光客が普通に行く場所ではありません。ただし長距離バスやタクシーで通過するルート上に来る可能性があるので、地名は頭に入れておくと身を守れます。空港〜首都〜国境(グアテマラ・ホンジュラス側)の動線を組むときに、レベル2地区を経由しないルートを選ぶ意識が重要です。

治安の劇的改善 --- 2015年の世界ワーストから2025年の1.3人へ

エルサルバドルがどれくらい変わったか、数字で見るとはっきりわかります。

殺人強盗窃盗
20201,3222,9405,784
20211,1403,9607,402
20224962,3397,298
20231561,3547,313
20241146645,801
2025822882,299

外務省と大使館がこの変化を支えた政策をこう書いています。

2019年6月に就任したブケレ大統領は治安対策に重点を置き、犯罪地域コントロール計画(PCT)等の各種治安改善に関する施策を行う他、2022年3月に発効された例外措置体制(憲法で保障される権利の一時的制限措置)により犯罪集団マラス等ギャングの取り締まりが強化され、近年は殺人事件発生数が大幅に減少しました

例外措置体制とは、逮捕状なしでマラス容疑者を拘束できる時限措置。2022年3月発効から数年間延長され、数万人規模のマラス構成員を拘束しました。誘拐事件は2023年以降ゼロ件、これは中南米地域で見れば異例の数字です。

ただし「再活性化リスク」は公式に認められている

数字が劇的に下がった一方で、大使館の手引きはこう書いています。

この措置については不当な拘束、誤認拘束に関し、国内外からの問題提起がなされており、今後も、マラス側からの反発、また、まだ拘束されていない構成員が少なからずいるため、当局が少しでも取り締まりの手を緩めた場合に、マラスの再活性化等による治安の悪化が懸念されております

つまり今の安全は人為的・政治的な状態で、政権が変われば一気に揺り戻す可能性がある。「いつ行っても今と同じ治安が続く」前提で計画を立てないこと。マラスの組織名(MS13、18レボルシオナリオス、18スレーニョス、ミラダ・ロカ、マオ・マオ、マラ・マキナ)が消えたわけではなく、刑務所の中にいるだけです。

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それでも犯罪は日本より多い --- 銃器・刃物前提の強盗

殺人は減りましたが、強盗・窃盗の数字を日本と比べると桁が違います。日本の強盗認知件数は年間約1,000件前後(人口1.2億人)。エルサルバドルは強盗288件+窃盗2,299件(人口600万人)。人口比だと日本の20倍以上の強盗発生率です。しかも、

犯人は、犯行時に銃器や刃物を使用しているため、強盗に遭遇した際は、自らの安全を第一に考え、犯人への抵抗や刺激するようなことは避けてください

刃物で腹部を刺された日本人、けん銃で殴られた自転車旅行者、首に掛けたカメラを強奪された観光客の事例が外務省データに具体的に列挙されています。「治安改善=銃が消えた」ではない点を頭に入れてください。

主な犯罪・トラブル概要 --- 路線バスは大使館明示の禁止対象

外務省と大使館が共通で警告している手口は次の通り。

  • 路線バスの強盗・スリ: 大使館は「路線バスの利用はしない」を安全のための三原則の1つに置いている。観光客は使わない
  • 車上荒らし: 路上駐車中の車両被害が最多。荷物を車内に残さない
  • 車両強盗: 信号待ち・渋滞中に乗り込まれる。ドアロック必須、窓開放控える
  • 走行中パンク偽装: 釘などで意図的にパンクさせ、停車した瞬間に襲う手口あり
  • 観光地スリ: セントロ地区(旧市街)で首掛けカメラ・ショルダーバッグの強奪
  • ATM追跡強盗: 銀行で現金引き出した直後にバイク2人組が追跡(バイク4人組けん銃強盗事例あり)
  • 「案内する」詐欺: 声をかけて人気のない場所に連れ込み所持品強奪

詳しくはサンサルバドルの治安サンサルバドルのスリ・ひったくりサンサルバドルの詐欺・ぼったくりサンサルバドルの凶器強盗・侵入強盗で。

捨て金20ドル戦略 --- 大使館が公式に推奨する備え

エルサルバドルで他の国にない特徴的な防犯ノウハウがあります。捨て金(おとり財布)戦略を大使館が公式に推奨している点。

強盗遭遇時に備えて、捨て金(現金20ドル程度)や、普段使いとは別の携帯電話を準備しておき万が一の強盗遭遇時はそれらを差し出すことで被害を最小限にとどめることが可能です

  • 使わない安スマホを1台持ち、ロック解除した状態でカバンに入れておく
  • 20ドル相当の現金(5ドル札×4枚など小額紙幣で)をすぐ取り出せるポケットに
  • 強盗に遭ったら抵抗せず、目配せしてポケットから取り出して差し出す

これで本物のスマホ・パスポート・大金が温存できる、というのが現地の標準戦術です。米ドルは100ドル札・50ドル札を商店が嫌う(偽札懸念とおつり不足のため)ので、20ドル以下の少額紙幣に両替しておくのが普通の旅行でも便利。エルサルバドルは2001年から米ドルが法定通貨です。

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マナー・法律 --- 麻薬の運び屋・銃所持・写真撮影

知らずに踏むと刑事罰になるラインがいくつかあります。

違法薬物の運び屋にされる

エルサルバドルは麻薬密輸の中継地点として知られていて、

エルサルバドルは、コロンビアなどの生産地から米国、カリブ諸国、ヨーロッパなどへの違法薬物の密輸の中継地点の一つとなっており、厳しい取り締まり体制が敷かれています

自分で気付かないうちに、麻薬犯罪に巻き込まれることがありますので、男女を問わず、現地で知り合った旅行者と一緒に旅行をする際にも、その旅行者の荷物を一時的にでも預かることはしない

有罪なら所持・使用で1〜10年、売買で10〜20年の禁固刑。バックパッカーが安宿で出会った旅人の荷物を空港で預かる、これだけでアウトです。

銃器違法所持で最高15年

21歳以上のエルサルバドル国籍者およびエルサルバドルに在住する外国人は、法律に則した形で申請すれば銃器の所持が許可されますが、違法に所持した場合、罰金および最高15年の禁固刑が科されます

旅行者が銃を持つことはまずありませんが、知人から「ちょっと預かっておいて」と頼まれても受け取らない。

写真撮影禁止エリア

軍事施設や軍人、警察施設などの撮影は禁止されています

ブケレ政権下で警察・軍の街頭展開は多めなので、街中で警察官や軍人にカメラを向けない方が無難です。

医療事情 --- 都市部の私立病院は使える、ただし高額

A2-safety「滞在時の留意事項」より:

日本や欧米諸国に比べると必ずしも医療技術は高いとは言えず、症状等によっては外国への緊急移送が必要となる可能性があります。また、入院・手術などが必要となった場合は、非常に高額の医療費が発生しますので緊急移送サービスを含む十分な補償内容の海外旅行保険への加入を推奨します

サンサルバドルの主要私立病院はディアグノスティコ・エスカロン病院、ディアグノスティコ・医療地区病院、セントロ・メディコ・エスカロン病院(C2-handbook 別添1)。蚊媒介感染症(デング熱、チクングニア熱、ジカウイルス、マラリア)は雨季(5〜10月)にリスク高。狂犬病・破傷風・A型肝炎の注意も大使館が明示しています。水道水は飲まない、ミネラルウォーター必須。

高額医療事例 --- 中南米地域の参考額(借用)

エルサルバドル単独の保険会社支払事例は確認できなかったため、中南米地域の参考として近隣国の事例を借ります。ペルーで脳梗塞→医療搬送1,144万円(SBI損保)。中南米の地方都市から日本帰国までの搬送は、保険なしでは支払えない金額になります。エルサルバドルの場合、重症は近隣のメキシコ・米国への搬送になりやすい構造で、桁感は同じと考えてください。

中米地域の医療リスクを比較するならコスタリカパナマグアテマラの医療事情も参考に。緊急移送サービス付きの海外旅行保険は実質必須です。

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通信手段 --- 配車アプリ前提、SIMは現地調達 or eSIM

ブケレ政権下のキャッシュレス・デジタル化(ビットコイン法定通貨化2021年など)で、配車アプリ(Uber/Yango等)は普通に使えます。ただし大使館は「アプリ配車車両は整備不良が多い」と指摘しているので、運行会社・運転手の評価を見て選ぶのが安全側。空港から市内も配車アプリが現実解です(流しタクシーは料金トラブル多発)。

通信は到着直後から使える eSIM が便利。配車アプリの利用には常時通信が必要なので、空港着いて即つながる状態を作っておきましょう。選び方は海外eSIM比較ガイド、宿のWi-Fi経由の情報漏えい対策は海外VPN比較に。

緊急時連絡先 --- 在エルサルバドル日本国大使館(サンサルバドル)

連絡先番号・URL
在エルサルバドル日本国大使館(代表)(503) 2528-1111
領事班直通(503) 2528-1125
領事班携帯(503) 7885-6763
警察911
被害届提出122
消防913
救急(Fosalud)132
緊急FM放送88.00MHZ(市内のみ)

大使館は日本人緊急避難ルートも公式に示しています。

ルート1:サンクリストバル国境を経てグアテマラ/ルート2:ラアチャドゥーラ国境を経てグアテマラ/ルート3:アマティージョ国境を経てホンジュラス

万が一の政情変化で空港閉鎖された場合に備えて、陸路でグアテマラホンジュラスに抜けるルートが公的に整備されている、という点は他の中米国に比べて手厚い情報です。

海外旅行保険の備え

エルサルバドルは「殺人率は世界水準まで下がったが、強盗の凶器使用は健在」「医療水準は限定的で重症は米国搬送」「マラス再活性化リスクが残る」の3つを並行で抱える国です。強盗で刃物・銃で負傷したケース蚊媒介感染症から重症化したケースバイク事故で外傷を負ったケースを想定すると、治療救援費用は1,000万円超を見ておきたい。中南米全体で見ると、ペルー・ブラジル・コロンビアの事例(1,000万円〜1,600万円台)が現実の桁です。詳しい比較は中南米旅行の保険ガイドで。

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エルサルバドルに行く前に頭に入れておくこと

最後に、これだけは押さえておきたいリスト。

  • 2025年の殺人率10万人あたり1.3人まで激減、誘拐2023年以降ゼロ
  • ただし強盗288件・窃盗2,299件は健在、銃器・刃物使用が前提
  • マラスの再活性化リスクが公的に認められている、政権交代で揺り戻しの可能性
  • 路線バスは大使館明示の禁止対象、配車アプリかタクシーで移動
  • 捨て金20ドル+古いスマホを持ち歩く(強盗時に差し出す用)
  • 米ドル100ドル札・50ドル札は嫌われる、20ドル以下に両替
  • 薬物所持・売買は1-20年の禁固刑、知人の荷物を預からない
  • 緊急避難ルート3本(グアテマラ・ホンジュラス陸路)が公式整備済み

「治安が良くなった国」のニュースだけ見て油断するのではなく、「政治的に押さえ込まれている状態」を踏まえた防犯が必要な国です。データを頭に入れて、最低限の備えをしてから出かけてください。

主要都市の治安情報

出典